富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

江蘇省崑劇院「紅楼夢」「桃花扇」

fookpaktsuen2013-07-13

農暦六月初六。昨朝、未明から明け方にかけ風がだいぶ涼しいと思つたが今朝も冷風心地よく昨晩九時から朝六時までよく眠る。午後に尖沙咀文化中心。江蘇省崑劇院の公演。今回は文化中心のスタジオシアターで小劇場らしく舞台装置も卓と椅子のみ。背景も大道具も一切なし。マイクも使はず役者の地声で崑曲たっぷり。昼は若手による「紅楼夢」。夜は「桃花扇」。昼夜「通しで」とつい書いてしまふが昼、夜の両方を一日で見るのを「通し」と呼ぶのは誤用ではないか、といぜん浄瑠璃本研究の神津君がおっしゃってゐたのは見取(折子戯)の演目を全部観ても何も「通らない」から。紅楼夢も序から終盤まで見れば「通し」だがとても半日では終はらず昼の3時間は折子選段で「別父」「胡判」「識鎖」「弄権」と「讀曲」。「別父」「識鎖」と「讀曲」で林黛玉演じた單雯(1989〜、右の写真)がまぁ美しいこと。父親が同じく崑劇の武生・單曉明(1961〜)の由。「別父」「胡判」で賈雨村役はそれぞれ陳睿、楊陽いずれも雨村の明末の没落寸前の名家主のニンあり殊に後者は牡丹亭で柳夢梅が是非見てみたいところ。「胡判」は真面目な主人公にトリックスターが入れ知恵する典型的な生(末)丑對子戲だが、そのトリックスターである門子役の錢偉が好演。崑劇の将来が楽しみな役者揃ひ。紅楼夢といへば主人公の賈寶玉だが「識鎖」の張爭耀も、崑劇の若手では筆頭格の施夏明(讀曲)も、なんだか演出の所為か衣装飾の奇抜さからしら、そも/\アタシが元々この賈寶玉に何も魅力感じない所為もあるが、ピンと来ず。昼の部跳ねて銀座梅林でトンカツ飰す。酒が入ると夜の部で間違ひなく白河夜船、で酒断ち。幕前のスタバの珈琲のおかげで一睡もせず「桃花扇」*1は「通し」。こちらは主人公の文人・侯方域を昆曲名伶・石小梅(1949〜、左の写真)が演じ名妓李香君は龔隱雷。方域の師たる老文人・蘇昆生にヴェテランの趙堅。石小梅がまぁ崑曲謳はせたら絶品。終演でやんやの喝采のなか侯方域通しで演じ切つた小梅は現実に戻れぬほどの集中力も見事、だがアタシはこの女性役者の男役が苦手。宝塚のやうに女芝居で男装なら自然なのだが侯方域裏切ることになる明朝高官の楊龍友(顧駿が上手い)と並ぶと、どうしても女性に見えてしまつて。
▼香港から120km離れた広東省鶴山市で核燃料加工基地建設に反対の数千人規模の市民デモ。大亞湾の原発に始まり香港囲ひ込みのやうに原発関連施設。香港にとつてはCY梁よりこの原発包囲網のほうが怖い。驚いたのは中共の対応の過敏さ。翌日(十三日)には市庁舎取り囲むデモ市民の前に副市長(左の写真の白シャツ右側が副市長)現れ笑顔で鶴山市核燃料加工廠の建設取消をば発表。日本政府にも見倣つてもらひたいほどの即応ぶり。だがそんな簡単に取消できるの?と猜ふところもあり。

「江門市領導第二天急急下令擱置核燃料項目的立項,表面上是順從民意,但實際上與習近平上台後強調不以GDP論英雄,以及當局不給予被視為中共第六代領導人的廣東省委書記胡春華添煩添亂,以保自己的烏紗有關。但這也未嘗不是件好事。」有廣東省官場人士表示,經此一役,核燃料項目在廣東捲土重來的機會甚微。據悉,自日本311大地震後,北京對核電的發展放緩腳步。(略)有廣東官員指,內地民衆聞核色變,加上公民意識不斷増強,廣東作為毗鄰香港、澳門地區,當局在處理核項目時,未來將會謹慎行事。在新領導不以GDP論英雄的背景下,不會盲目追求新的大型基建項目,如化工、核能等。據悉,中核項目在鶴山夭折後,可能會在江蘇、福建和天津等沿海省市甄選廠址。


蘋果日報習近平がいはゆる土建政治GDP高めれば成長といふ路線をとらず民生重視、中共第6世代の有望なる広東省委書記(胡春華)の今後に影響せぬやうに広東省全土にこの反核運動広がらぬやうに沈静化、また港澳で嫌核世論高まりの懸念もあり……と。たゞ広東省は避け今後、江蘇、復権、天津など沿海州に核開発の重点が移るのでは?と。
朝日新聞「日本の現在地」(上、こちら)より抜粋。

  • 小泉首相北朝鮮訪問の)あの日を境に一変し「被害者がかわいそう」から「北朝鮮を制裁しろ」まで一気でしたね。ずっと加害者だと言われ続けてきた、その鬱屈から解き放たれ、あえて言うと、偏狭なナショナリズムができあがってしまったと思います。(略)接触してくるのは右寄りの方たちばかりでしたから改憲派の集会に引っ張り出され訳もわからず「憲法9条拉致問題解決の足かせになっている」という趣旨の発言をしたこともあります。調子に乗っちゃったんです。(略)調子に乗っていた当時の自分を振り返ると、恥ずかしい。だけど日本社会は今も、あの時の自分と同じように謙虚さを失い、調子に乗ったままなのではないかと思います。- 蓮池透
  • この国は、経済以前に人間的に破綻しているから始末が悪いんだよ。だからと言って、希望とか明るい社会とか、安易に求めない方がいい。ましてや「政治が私たちを幸せにしてくれる」なんて期待するのはやめておいた方がいい。(略)オレは、みんなもっと迷って悩んで痛みを感じた方がいいと思っている。迷うべきことや悩むべきことがこんなにもある世の中だし、本当の痛みや苦しみを自覚しない限り、打つべき手も思いつかないはずなんだ。- 五味太郎(絵本作家)
  • 2年前の都知事選でかみしめたの。原発事故があって、私のまわりだけでなく、多くの都民は原発いらないって思ってたはずよ。でも、原発推進の石原さんの圧勝でしょ。脱原発とか言っても、やっぱりみんな石原さんみたいなの好きなんじゃんって思ったのよ。(略)私が恐れるのは、マチズモ的権力者のルサンチマンが作り出す「物語」なの。「俺の人生、否定されてる物語がある」って思ってるレベルなら許せるけど「中国や韓国の横暴に対し、力を合わせて正義の戦いを」みたいな、一部の権力者にとって気持ちいい物語に国ごと巻き込んでいいのかってことよ。(略)今の日本てさ、何でメチャクチャなこと言う自分が格好いいみたいなナルシストや、強権的で抑圧的な自称愛国者が強いリーダーみたいにもてはやされてんの?ホント、バカじゃない?- 中村うさぎ
  • 医者がなぜ、政治かって。妻の親戚は漁業者が多く、みんな鈴木善幸さんの支持者でした。善幸さんって優しいんです。こういう人なら応援しようと。それが政治に関わるきっかけでした。政治は生活に根ざしたものであるべきです。それって保守の政治です。いくら選挙がうまく、言葉が巧みでも、生活が体に染みついていない政治家はダメ。保守も色々ですが、優しい保守。リベラルで弱者にも目配りする保守がいい。- 熊坂義裕(元・宮古市長、社会的包摂サポートセンター代表理事


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*1:明朝末年,文人侯方域與秦淮名妓李香君互生情愫。閹黨餘孽阮大鋮因未能拉攏侯方域而懷恨在心,借飢兵東下取糧一事,陷害侯方域,使侯、李勞燕分飛。李闖攻陷京師,清兵趁機入關,國事動蕩不安。侯方域投奔史可法,襄贊軍機。他阻止馬士英、阮大鋮之流擁立福王為帝事敗,馬、阮更逼香君改嫁。香君毅然毀容守樓,血濺詩扇,並當眾罵筵,浩氣凜然。侯方域聞訊,匆匆趕赴南京,豈料香君已被選入宮,侯方域則被擒下獄。清兵渡河,揚州失陷,史可法殉國。逃出大牢的侯方域,面對國破家亡的現實,政治抱負徹底破滅,遂歸隱棲霞。而李香君則苦苦尋覓著她心目中的那位雄心勃勃的侯郎。人格的迴異終使這對戀人無緣重聚。桃花扇底送南朝,也葬送了侯、李的愛情。