富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

日本を「取り戻す」

fookpaktsuen2013-07-14

農暦六月初七。昼前に中環。Z嬢はスターフェリーの有機野菜市。アタシはOliver's Super MarketでPimm's購ふ。今日から18Xといふバスの運行開始。筲箕灣方面から来て北角から湾岸高速に入り湾仔で一度停まつていきなり西營盤。復路は中環で一つ止まり(湾仔飛ばして)東區へ。これが出来れば西營盤の鄙びた食肆からの帰宅が便利。西營盤からケネディタウンはバス会社にとつてはドル箱路線だがMTRの延長も近々あり、かうした東區からの直行路線など充実図るってところかしら。北角。大眾粥麺で柱侯牛腩飯飰してから渣華道街市。インドネシア人家政婦たちが街市周辺に休日で鳩まるがラマダンゆゑ何時ものやうに食事もせず、じっと徒然なるまゝに、といふ感じ。なかにはラマダンも関係なし、で大いに食す人もちらほら。ヰンブルドンは終はつたが夏はやはりピムス。ジンジャーワイン加へるもをかし。夕方、枝豆茹でたら麦酒冷やしてゐないことに気づき豪州はVasse Felixのシャルドネ飲んだが、麦酒のやうな勢ひで飲んだものだから酔ひがまはり食事も焼いた野菜などばかりなのに同じVasse FelixでHeytesburyの07年も抜栓してしまひCabernet Sauvignonが77% 、それに13%のPetit Verdotと10%のMalbecといふかなりパワフルな赤。これですつかり出来上がつてしまふ。早寝。夜中に文藝春秋八月号読む。同号では池上彰先生が各党党首にインタビュー。突っ込みも弱く大したことないが慎太郎が池上先生相手にかなり率直に本音語りが興味深いところ。慎太郎さん的には何だか、もう戦ひは終はつてゐる感じ。
佐々木毅先生(東大名誉教授)の「日本を「取り戻す」とは」がお見事(都新聞「時代を読む」)。自民党が三年余の野党時代に「それまでの自民党と一戦を画す保守の「純化」路線を追求してきた」こと。日本の政治は過去への志向が根強く未来志向が弱い点で際立つてゐる、と佐々木先生は見る。この未来志向の弱さこそ「政治は逃げている」といふ印象を有権者に与へ政治から有権者を「逃がす」。自民党がこのところ「取り戻す」といふ言葉を多用するが、これも過去への志向。

今度の選挙公約は「取り戻す」ものを「日本の誇り」という極めて抽象的な内容に絞り、過去をめぐる厄介な議論をいったん封印し(略)その上で、過去ではなく「新しい日本を創り上げていく」という形で未来志向をむしろ表に出した。

これは「当然、既得権益を守る従来型の利益政治とは決別しなければならないはず」で「まさに自民党は今あmでの自民党であってはならない」もの。これが保守「純化」路線の一例で佐々木先生は「この「取り戻す」路線が未来志向を失い、既得権益や過去志向に埋没するような事態になれば、アベノミクスは足下から崩壊するであろう」と見る。自民党大勝の場合、経済優先か改憲優先か、経済のなかでも既得権益派と規制改革派といつた党のガバナンスにかゝはる問題もあり、野党弱体化で外からのブレーキも期待されず、「どこまで未来志向を貫けるか、「日本を取り戻す」作戦はいよいよ本番間近」と。なるほど。かうして見ると自民党って、殊にこの数年で純化した自民党は、保守ではなく昭和維新からの非常に「岸」的な意味で国家社会主義的な前衛政党なのだ、と思ふ。

文藝春秋 2013年 08月号 [雑誌]

文藝春秋 2013年 08月号 [雑誌]