富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

自民党は絶えず控えめに、と森元首相(立派!)

fookpaktsuen2013-06-16

農暦五月初九。まだ雨空。午前十一時に中環の天星碼頭。有機野菜市にZ嬢と。市大会堂で鄭直煥師(故人)の写真展(蘋果日報)眺める。1950〜60年代の香港の貴重な民衆生活と郊外風景の写真。師の娘さん(鄭惠敏女史)が父の遺品のフィルム修整しアルバム出版し、その大型版プリント公開。ルター派キリスト教団体の職員で職業訓練でカメラ撮影を貧困層の青年に教え始め自らの写真を世界各地で販売した利益で観塘の職業訓練センターで写真撮影コース成立される。Z嬢と分かれ皇后大道中の羅富記で雲呑麺食しジム。トレッドミルで5kmほど走る。実に三月廿一日以来のランニングでほゞ二ヶ月ぶり。走つたお祝ひにFCCでBlack Thornのシードルとハイボール飲む。周末にかうして昼酒でFT周末版とThe Economist読み終ることの幸せ。晩はホウレン草のグラタンなど食し自宅では珍しく白でLes Ruettes Sancerre 10年飲む。ちなみに昨晩、ジャズクラブで飲んだのはいかにも豪州のShirazでEpsilon Winesの10年。葡萄酒も今月五日以来なり。
▼クリスチアン=ラバル教授曰く「十八世紀以降、教育とは基本的に国民の共同体で生きる人を育てることだった。公教育、国民教育だ。それが近年、新経済自由主義的なグローバル化が進むにつれ変容している。育てようとしているのは共同体のメンバーではなく市場で競走に勝てるための経済的な人的資源だ」。……今日、何か読んでゐて手帖にメモしたのだが何からの書き抜きか失念。
▼「証言・政治改革20年」と題して朝日新聞の河野、村山と続いた連載で今日は森さん。「派閥の教育機能、失われた」と題。細川の殿様のご乱心で野党に転じた自民党、大量離党も実しやかに噂されるなか永田町は総白痴化、一番悪いのは民間政治臨調とマスコミ、と森さん。選挙制度を変へたらだうなるか冷静に考へず消極的議員=守旧派と称して煽る/\。小選挙区制導入は失敗、中選挙区に戻した方がいゝ。但し政党助成金は成功なのは「国会議員は民意を受けているから元首相であろうと新人議員であろうと同等」で「歳費は同額で退職金もなければ年ごとに上がっていくわけでもない」から。だが「世の中には長幼の序ありシステムあり、それを自民党でつくっていたのが派閥」で「その機能が小選挙区制でなくなって」「派閥に入らなければ自由で楽しくてしょうがない」のが現状。参院選圧勝で二十年ぶりに衆参単独過半数回復で政治再生できるか?といふ問ひに森さんは

何が何でも自民党というほど私は思い上がってないんです。今は民主党を含めてどの政党もダメだから、その反作用で自民党支持が多いが、世論が自民党は生意気だ、横暴だとなったらダメ。絶えず控えめにいくことが最も大事です。

と。さすが自民党の良心。
▼久しぶりに「これぞ朝日」といふ頼もしい主張が今日の「政治断簡」で松下秀雄論説委員の「安倍さん、「左翼」って何ですか?」。

安倍晋三首相のフェイスブックをみて驚いた。東京都議選告示前の9日、渋谷で行った街頭演説について、首相はこう書いていた。「聴衆の中に左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一生懸命演説妨害してました」。さらに、その「左翼の人達」を「恥ずかしい大人の代表」と断じている。一国の首相としては、ずいぶん激しい言葉だ。何があったのか。ネットで映像を探してみる。ハチ公前を埋め尽くす聴衆の傍らで、TPP反対、自民はうそつき、などと抗議する人たち。首相は車の上から「選挙妨害」「恥ずかしい行為」と難じている。抗議の声の主は「TPPを断固拒否する国民行動」。呼びかけた都内の会社員、小吹伸一さん(44)に聞いてみた。市民に訴えようと以前から告知していた演説会で、当日、そこに首相が来るとは思ってもいなかったという。あなたがたは左翼ですか?「左翼じゃありません。参加者はサラリーマンや主婦、非正規雇用の人、職人、レゲエのDJといった雑多な人たちです」ゆきすぎたグローバル化反対、といった主張は保守に通じるところもあるようにみえます。「『日本を守ろう』と唱えているのだから、その意味では保守的かな。ぼくたちが共通して思っているのは、弱肉強食の競争社会にすべきではないということです」安倍首相をどう思います?「偽物の保守だと思う。中国や韓国にはタカ派のポーズをとっても、米国には自分から譲る。日本を守る人の行動じゃない」聞いていると、どっちが保守かわからなくなる。「行動」の映像には、日の丸を手に愛国の意味を説く参加者も映っている。いまの時代、左右を分けて論じることに、どれほどの意味があるだろう。朝日新聞を左翼と呼ぶ人もいるが、私は共産主義者でも社会主義者でもない。国やふるさとを愛するのも、人に無理強いするのでなければ、すてきなことだと思う。歴史を直視しようと唱える人は自民党にもいる。左右の境界はぼやけている。私が注目するのは「愛国」の実態だ。それは自国への愛情か、隣国や隣人への憎悪か。どちらに傾くかで、社会の健全さがわかる気がするからだ。フェイスブックの話に戻ろう。首相の激しい言葉のあと、何百もの市民の投稿が続く。隣国や在日韓国・朝鮮人、「左翼」への憎悪の表現がなんと多いことか。負の感情を生みやすい「生きづらさ」を緩める。対立をあおらない。社会を癒やし、亀裂を埋めるのが政治の役割ではないのか。

あきらかに社会が狂ってゐるのだから上述の森さんの世論が自民党に辛くあたること、そして新聞も松下君くらゐはっきり物を言ふべき。