富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

異なる倫理とのバトル

fookpaktsuen2013-06-11

農暦五月初四。朝四時すぎ近隣でガス爆発でも起きたのかしら、とおもふやうな巨大な音の雷。アタシの人生で今まで一番大きな雷。これで目覚めてしまひ眠れず。米国加州で数時間前に開催されし蘋果電脳の発表会(WWDC)の映像眺める。iPhoneの新しいOS、iOS7はデザインがサムソンのGalaxyの如し。愛着あるAppleの軟らかさに欠ける観あり。今日は声が出るやうになつたが悪寒あり昼前に発熱。午後遅く中環。養和病院の診療所。C医師に胃治療での診断書に署名もらひ四日も服薬しても快方に向かはず、と告げると質ちの悪い流感だこと、と注射され抗生物質(アモキシシリン)処方される。一旦帰宅。晩に用事あり銅鑼湾に出向き帰宅してカレーライス飰す。
▼英国の数多ある新聞のなかでは倫敦の都新聞たるThe Guardianが好きでiPadのNewsstandで有料にしてゐる好事家の一人だが、その新聞がこゝ数日話題の米国政府がテロ対策と称して市民のネット通信内容盗得といふニュース(アタシは米国政府がそれをしてゐる、と聞いても驚くより「やっぱり、さうですか」だが)その情報源となつた青年の素性及びインタビュー掲載(こちら)。その青年が香港に潜伏中!とわかり記事元の衛紙=The Guardianと華盛頓郵報は別格として香港のメディアは「すわ一大事」と、今朝の紙面は躍る、躍る。そのなかで一番賑やかなのが中共系大公報なのが可笑しいところ。ハワイにゐたこの元CIA青年がなぜ香港を選んだのか、香港の「報道の自由」か、まさか米国をば宗主国とする日韓、台湾、それにNATO圏の西欧や豪州も選択肢から外れ、で中共香港か。このリークが本当に青年の良心の呵責なのか、ブッシュ時代に始まつたネット盗得だが馬楽政権になつても尚お盛んといふことで反馬楽勢力が背後にゐるのか……いや、中共がネット制限、検閲を米国等自由主義諸国から非難され、その仕返しに「お前らもやってるだろう」で習近平訪米に合はせたリークか、中共説を摂ると「中国で唯一報道の自由ある香港」が舞台といふのも納得、とか。陶傑先生の「米国例外」*1(翌十二日の蘋果日報)も合はせて読むと興味深い。この若者の良心の呵責とか勇気とかよりもCIAが国家安全のために敵方の情報得る手段選ばぬのは当然のことで、それに驚くならCIAに奉職などせず幼稚園の先生にでもなれば良かつた、CIAに入つて仕事初めて何をしてゐるのか驚くのは屠殺場で働く菜食主義者のやうなもの、「報道の自由」で香港選んだのもヘンな話で冰島に庇護求めたといふが本当に米国の干渉受けず自分のプライバシー守りたいのなら北朝鮮は如何か、と。陶傑節相変はらずさすが。
▼朝日の連載も加藤周一吉田秀和の両横綱逝き健三郎の定義集は何だかさっぱり判らなかつたが今、池澤夏樹の「終わりと始まり」が一番面白い。直近では「異なる倫理とのバトル」と題してホモサピエンス(以下「人」とする)と法人*2の関係を背反的に述べてゐる。人が他の動物と異なる点は「環境を自分で整えることで、この手法によって我々は地上で大躍進を遂げ、すべての生物の上に君臨している」と池澤先生。御意。さう、私たちは環境を変へてまで生存しようとする。法人も同じで自分に有利なやうに環境を変えるが人との違ひは「倫理が異なる」こと。個人は国家に属すが法人は自在に国境を越えるやうになり製造業でいへば生産コストの安いところに転居するから国家は企業に逃げられたくないのでインフラ整備をし、雇用規則を緩め(非正規採用など)安く電力供給をする。そのコストを最終的に負担するのは個人。(勿論、自らの就業に繋がるとはいへ)企業が利潤を得る仕組みはさうして出来上がる。人も個人としての価値観と法人に属す者として判断が異なる場合もある。人と法人、個人と企業人で人格が異なる。

今の世界では個人の力に比べて法人の力があまりに強くなった。我々が太陽のエネルギーや酸素や水で生きているように、法人は資本で生きている。自然にはリミットがあってそれが個人の生きかたを規制してくれるが、資本はもともとが幻想だから天井がない。早い話が日本銀行が紙幣を刷ればいいだけのことだ。その分だけ法人たちは力を得て強くなり、個人の栄養分を吸い上げる。片利共生はやがて寄生に変わる。つまりこれは人間ではないものを相手にするバトルなのだ。東電で働く個人のみなさん、経済産業省で働く個人のみなさん、共闘しましょう。

池澤夏樹は呼びかける。これを読むと一つ“Occupy Wall St”や「佔領中環」、通産省前での座り込みが何故、生まれるのか、なぜあの方法をとらなければならないのか、がわからないでもない。

*1:美國中情局叛諜史諾登在香港公然洩密叛國,指控美國入侵公民的私穩,並聲稱香港的「言論自由」,行為可笑。首先,中情局就是為了美國和文明世界的安全向全世界收集情報的組織,這位年輕人不可能當日在應徵工作的時候,以為自己應徵的是幼稚園教唱遊的男教師。加入了中情局,又不滿中情局入侵私隱,正如當初應徵屠房,進去之後,才宣佈自己是素食者,見到屠牛宰羊的場面,會昏倒。中情局如果近年招聘氾濫,連史諾登這種天生的弱者,也要招攬入局,付年薪二十萬美元,這就不是這個幼稚園學生僱員的問題──是誰當年面試史諾登,誰決定聘用?中情局應該徹查他的主管。美國中情局打進網絡和電郵,天公地道,不構成「侵犯人權」,因為美國例外。美國為什麼例外?因為美國是全球公認的世界警察。美國不止是西方文明國家的老大,美國的科技和軍事超強,還守護人類的地球:從宇宙飛來的隕石到外星人的侵略,你平時可以詛咒美國,當人類在宇宙中受到重大的威脅,人類命運在生死邊緣,連卡斯特羅和金什麼的,也要閉嘴,祈求美國的拯救。正如今日許多親中愛國人士大罵香港的九十後:香港毗鄰中國,如果對中國諸多不滿意,你可以移民。一樣的邏輯:你已經降生在這個星球,美國就是地球的警察,警察絕不完美,但這支警隊,是民選的,她擁有全世界的數據。為了領導。如果不滿意,敬請移民月球。美國領了特別的執照,因為美國例外,沒有得不服氣──當中國成都唱紅崇毛的公安頭目王立軍走投無路的時候,走進美國的領事館乞庇;「六四」鎮壓的北京前市長陳希同死前想知道多一些準確的新聞,在病床上,他要聽「美國之音」。還有無數貪官轉移去美國的子女和資產──美國不掌控全世界的通訊,美國何來權威來保護中國貪官和中國人子女的安全?史諾登叛國,應該投奔的,不是香港,也不是冰島,而是北韓北韓最尊重人權,最保障私隱,早點上路吧。蘋果日報(12日)陶傑「美國例外」

*2:そも/\企業等をなぜ法人といふか、といふことから復習が必要だが(大学の一般教養的に)法人ついにて広辞苑(第五版)は「人ないし財産からなる組織体に法人格(権利能力)が与えられたもの」と定義して⇔自然人、とするが、これぢゃ下手な説明で「自然人ではなく、法律上、権利義務の主体たる資格を与えられた組織体」とする新潮国語辞典の方がわかり易いが、えうするに「法律的に組織体に権利義務を付与するために組織を便宜上、法的に人の如く扱ふから法人といふ」とでも説明するといゝ。