富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

達禾斯人深切反省

fookpaktsuen2013-05-07

農暦三月廿八日。早晩に銅鑼湾。千葉A氏夫妻来港で安半に招かれ会食。酒は真鶴。一通りしっかり酒肴、牛肉までいたゞき豚汁ととろゝご飯で〆、のところでトロのブツを数切れ、ぽん、とご飯茶碗に放られて、そんな食べられませんがな、と言ひつゝトロをズケにして白飯で頬張る幸せ。夕張のメロン。食後にバーSに一飲。写真はiPad miniにピップエレキバン
▼香港港湾賃上げストは港湾老工と和黃=李嘉誠財閥との間に談判専門会社仲介で9.8%のベースアップ、4000ドルだかの復業一時金支給で一先ず40日に渉るスト終幕。信報の林行止專欄「碼頭罷工告一段落 達禾斯人深切反省」読む。状況は慘然から昂然、今日は蕭然と林行止の言。中環の李嘉誠財閥層部たる長江中心入り口占拠の労工排除を和黃が司法判断仰いだが高裁は長江中心出入りに必要なエリア除き公共場所での抗議占拠は違法ならず!と裁定。とりあへずは和黃が労工側の要求吞んだ形だが何も解決されておらぬ感あり。かつて世界一の貨物量誇つた香港港は今では世界三位。珠江デルタ製造品の輸出港として栄えたのも昔のこと、深圳鹽田に大規模な貨物港出来て停泊料や工賃廉価にてロジスティックの優秀さ除けば香港に利もなし。林行止曰くジニ係数見れば香港の貧富格差OECDの平均水準の二倍。李嘉誠に和黃任される霍建寧らの威勢をば林行止は「達禾斯人」に例へる。達禾斯人=Davos ManはS.P.ハミルトン『文明の衝突』に語られしダボス会議に鳩まる常連。彼らは企業の経済利益だけ考へ、その所属する国家への忠誠といふ感覚は低くボーダレス市場で国家は彼らにとつては世界市場に向かふためのツールでしかなく彼らの工場が人件費低き国に移り本国の失業率上昇しようが我関せず、新興国に四人の就業あらば本国で一人失業といふ事態も彼ら世界に目を向ける=祖国なき商人が労働者と真に対座して談義せぬことが問題なのだ!と林行止師の憤り。御意。サッチャーレーガン登場から三十年、経済自由化は金融業の管制をば解きオフショア経営の合法化、労働力は国家の規制から海外に放たれる。グローバリゼーションの意味は「世界は自由市場」で排外主義や保護主義は否定されフリードマンが2005年に出版した“The World Is Flat: A Brief History of the Twenty-First Century”(邦訳『フラット化する世界』)はまさにダボス人たちの世界。しかしベルリンの壁崩壊から続いた望月の世は2001年の911で見事に爆破され2008年のリーマショックの追ひ討ち。西欧の主要国家は移民制限、経済保守化となり国家は再び石油や地下資源など扱ふ企業、船舶、航空など基盤産業の再国有化(renationalized)。これもまた良しとすべきか、と林行止師。少なくとも資本主義世界で公有と私有の混在は少なくとも新自由主義的なグローバリゼーションよか未だマシ、と。ダボスに鳩なる企業家たちが世界席巻の時代はすでに過去のもの、本国の労働者に目を向け彼らと和諧出来る着地点見つけることが新しきダボス人たちの使命、として前日の紐育時報に掲載されたNancy Folbreの“Small vs. Big, Local vs. Global”(こちら)を紹介。

Small looks beautiful for business these days. Big companies rake in higher profits but win far less affection from most Americans. The business community is increasingly divided, largely because economic trends are driving a growing wedge between the interests of small locally owned companies and large global corporations.

林行止曰く「大企業掠取(rake)巨額利潤卻無法贏得民心」,愛惜羽毛的資本家應引以為誡。……と。ちなみに翌日の信報記事に拠れば、李嘉誠財閥の港湾会社 HITの四月の貨物コンテナ扱ひ量は前年比20%減でHK$100mの損失の由。ちなみに日本の菓子小売りで急成長の759阿信屋は港湾貨物運輸再開で38個の菓子到着だとか。