富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

歴史について(小林秀雄)

fookpaktsuen2013-05-02

農暦三月廿三日。五月で朝の気温が摂氏16.6度。1917年以来の寒さの由。実家より小包届く。現代教養文庫の絶版、香山滋傑作選(全3巻)等。だういふ使ひ心地なのか全く想像できず、これは買つてみるしかないだらう、と思つたTOTOの携帯ウォシュレット、成る程かういふものなのか、と納得。さて本当に使ふかしら。帰りがけに一緒になつた鹿児島O氏と太古坊のButterfield Clubに麦酒飲み帰宅。夕食のとき小林秀雄河上徹太郎の対談をCDで聴く。新潮社『考える人』2013年春号、小林秀雄(1902〜83)生誕111年・没後30年記念で「小林秀雄 最後の日々」と題して1979年に行われた徹太郎との対談CDが付録に付いてゐたのだが対談は一言でいへば福田屋で酔っぱらつてぐちゃ/\。小林秀雄にとつて人生最後の対談で「歴史について」と題し「文學界」創刊500号記念として1979年11月号に掲載された由。これについて『考える人』編集長の河野通和氏がメールマガジンに書いてゐるが

第一に、話し言葉をそのまま文字化することへの小林自身の厳しい戒めがありました。そもそも、対談記事というのは、対談の席で実際に語られたものがその通りに活字に起こされているわけではありません。編集者が速記をもとに構成を整え、内容を取捨して整理稿を用意し、この整理稿に対談の当事者が筆を加えて完成させます。この小林・河上対談も同様の手順をふんで、いま私たちが読むことのできる形に仕上がりました。したがって、私たち編集者の職業倫理としては、「作品以前」の生の音源を公開するということ自体、ある意味で「掟破り」だと言われても仕方ありません。
加えて、こうした際の小林の加筆は苛烈をきわめたものでした。常に編集者の整理稿は跡をとどめぬほどに筆が加えられました。現に、今回の特別付録CDと対談記事を読み比べ(聞き比べ)ていただくとすぐに分かることですが、これらはまったく別種のものだと言ってもいいほどに書き改められています。文筆家としての矜持にかけて、執筆原稿と同様に、小林が対談記事に真剣に臨んだ結果です。

といふわけで、まぁこれが「昭和の知性」なのかしら、と驚くほどなのは「あ、ゐる/\居酒屋で、かういふ酔っぱらひのジイサンたち」と思ふからだが、それでも話が進むにつれ酒に酔ひ呂律が回らず、そのうちぐちゃ/\で徹太郎が意識朦朧と引き揚げてしまひ座敷に残つた秀雄のぼやきが、またこれが志ん生師匠の落語でも聞いてゐるやうに心地よくもあり。それんしても上述の編集長の記述で早稲田のパチンコ店に刊行されたばかりの本居宣長』が景品として並べられ、この『本居』の刊行日には待ちかねた愛読者が直接新潮社に並びニュースとなつたとか(キョービのハルキムラカミの新作並みか)この年の暮れには『本居信長』がお歳暮としても重用された!(まさか……)いずれにせよ、そんな時代。それでも今になつて小林秀雄の話など拝聴すると、やはりこの方が評論家出来たのは昭和といふ時代だつたから、で平成の世ではとても無理がある、と思ふ。文学青年が文学や人生を語れるいゝ時代であつた。
▼人民日報一面に「香港各界赈济芦山地震灾区」といふ記事あり。今回の四川地震では香港でかうした援助金募金の動きがアタシからは一向に見えないが何処が拠出か、と思へば李嘉誠、霍英東らの名を冠にする基金、呉光正、香港中国企業協会、香港中華総商会、ジョッキークラブ、東華三院、MTR等々。なるほど。
▼歯に衣を着せず橋下などにモノ申し続ける映画監督の想田和弘氏「民主主義「崖」への後進」の発言が都新聞(夕刊)にあり。ほんとに自民党憲法

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保証する。
二 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない。

なんて、つまり「一切の」表現の自由なんて認められてゐないわけでアタシの日剰だつて公益に反してゐるかしら。
▼日銀金融緩和について「金融緩和で需要が増えて物価が上がることはありえません。無理にやろうとすれば円安によって輸入品が値上がりするのはありうるでしょう。だけど物価が上がるだけでは賃金は増えないから国民は困る。そんなインフレなら起きない方がいいじゃんって話です。」「マクロ的には賃金総額は死んでもあがりません。1990年代はバブル期の反動で下がり続け、これからは給与の高い団塊世代が退職し終わり若い人が入ってくる。単価は断然低いわけですから賃金支払い総額で言えば減る。全体で消費が景気を牽引することはないでしょう」と小幡績氏(慶應大学ビジネススクール准教授)。

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考える人 2013年 05月号 [雑誌]

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こんな商品の並べ方すると小林秀雄が「君、知ってるかい、僕の「歴史について」の君との対談が載った雑誌だよ、事もあろうか何だか人の尻を洗う道具と広告で一緒に並んでいるんだ、まったくけしからんことだよ、えっ、そうだろう、君もそう思うだろう」とかカッカ/\と早口で怒りそうだが……。
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