富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2013-04-25

農暦三月十六日。朝から滞在先のホテルで週末の独演会の仕込み。昨晩、中共にてネタなし、と綴つたが思考停止モードだからさう思つただけで何かと小ネタもあり。

  1. 香港から大陸に戻る旅行者の荷物の大きさ。この量の客が七、八人で旅行するから艦隊のやう。香港から出入境での税関はX線での荷物検査厳しくなり中国側も個々の荷物検査あり。これぢゃ水貨客もたまったものぢゃない。
  2. さすが山寨(偽物)王国といふことでApple製品製造元の富士康ある地元にもちゃんとunofficialのアップルストアあり。
  3. 深圳(羅湖)站の本屋で雑誌コーナーの一番前に並ぶのは『知日』。2011年に創刊の日本紹介雑誌で神戸在住の毛丹青氏が主筆。政治的に動く反日と、それに相反するかうした日本への関心……複雑。
  4. ホテルの部屋の大型液晶モニタにつながるコンソール。パソコンから何でもござれ、でこゝまで繋がる。ネット接続はかなり制約されて反面、ハード面でのこの拡充。これも相反的。

昼すぎ自由香港に戻る。霞ヶ関T嬢よりレスリーのポスター送つてあげたお返しにいたゞいた新歌舞伎座のビスケットと手ぬぐい。このクッキー美味しすぎ。それに地味なやうでハイカラ、と思つたら資生堂パーラーとのコラボ。もう一つ郵便物で10年以上前にスヌーピーに惹かれて購入の保険=MetLife社からオクトパスカードに貼るシールを送ってきた。これは可愛い。晩に雑煮を飰す。
東京新聞(24日、朝刊)一面トップで「安倍流経済 復興足かせ」といふ見出しに何か、と思へば政府の公共事業費積み増しで被災地以外の土木工事増へ作業員もそちらに流れ被災地再建に関はる事業に遅れ「予想される」と。確かに理論上さういふ可能性高くなるが敢へて「そうした指摘が現実になりつつある」「原因となりかねない」、復興や防災で手抜き工事増のリスク高まること懸念といふ大学の災害復興学(なんて学問があるのだ)の先生のコメントで、これを記事にしてしまふのだから大したもの。
▼ハルキムラカミの新作小説、東京新聞の「大波小波」の書評期待してゐたら、やはり面白い(24日夕刊)。

初期のひりひりするような現実感はここにはない。解けるものと解けないものとがはじめからきちんと整理され、簡略化されている。「限定された目的は人生を簡潔にする」という作品内のアフォリズムそのままだ。お祭り騒ぎという「目的」によって、謎が「簡潔」になる。ハルキが商品としての謎ではなく、人生の謎に向かう日は来ないのだろうか。

それにしても書き手(色即是空)もこれには苦労しただらう。
▼アンソン陳方安生が香港の民主的政治改革と普選実現に向けシンクタンク?「香港2020」立上げ。元官僚や大学教授、弁護士など半ば引退した保守リベラルで岩波『世界』的。そのなかで目立つのは李鵬飛センセイ。久々に尊顔拝したが立法局、行政局議員、返還後も立法會議員となり全人代の香港代表にもなり英国側から中国側にうまく返還の時流に乗つた、と思はれたが2003年の基本法23条立法あたりから距離も置くやうになる。昔、SCMPの風刺漫画で変色蛙が李鵬飛だつたが。それにしてもアンソン陳もこゝで彼女が政治研究団体立ち上げても近い将来の(少なくても彼女の目が黒いうちの)完全普選実施はほゞ無理なわけで彼女がこの立場で香港の自由の女神(山姥?)となつても中国が彼女嫌ふだけ。本来、変換期の政府トップ任された彼女に中国側から期待されたのは、その新しい「英国でも中国でもない立場」での香港の行政官トップとしての力量であり政治的困難は予想されるのだから、そのなかで何ができるか……実際には董建華の下で本当にそれに苦労し行政府が董建華導入の問責制で見事に瓦解され「もうダメ」で、その覚悟が今日までの動きにつながるのだが、それにしても彼女なら寧ろ先日のマーチン李柱銘提唱の行政長官選挙代替案のやうな、さういふ折衷案を出せる立場。今の彼女にそれを求めても本人の路線も違ふし中国側が余りにリベラル権現と化した彼女をとても受け入れられぬのだが。