富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

重慶マンションは貧民窟か?

fookpaktsuen2013-03-16

農暦初五。午前中は尖沙咀で所用済ませ晝にZ嬢とJimmy's Kitchenに飰す。給仕長に「まぁ久しぶりで」と歓待されたのも一年ぶりゆゑ。ぽつ/\と馴染みの上客、紳士ばかりで給仕長は卓を巡り歓談の土曜午後。チキンキエフと牛肉飯をシェアして葡萄酒はシャルドネ一杯とメルロー半瓶だけだつたがすつかり酔ふ。按摩。夕方、商務印書館。ミラマ商場地下にこんな広い商務印書館あるとは全く知らず。中文大学の人類学系のGordon Mathews教授の“Ghetto at the Centre of the World - Chungking Mansiins, Hong Kong” の中文版『世界中心的貧民窟:重慶大厦』出版記念の座談会拝聴。書店に地代高き香港でこんなレクチャールームがあるといふのも誠品書店の影響なのかしら。現場から顔板にこれを載せると早速チョートク先生から「ゲットーなんだ……」と正鵠射た一言。その後のQ&Aでもそれが「ゲットーという言葉が適切か?」と聴衆から質されMathews教授曰く出版社(中文大学出版)からインパクト狙ひでゲットーとタイトルの提案あり著者として迷つたが、いくつかの辞書で確かめた結果、ゲットーにはネガティブな意味のほかエスニックマイノリティーの集合場所という意味があり採用、と。更に「すると、中文訳の「貧民窟」は適切でないのでは?と」熱い議論が続く*1。なか/\面白い座談会はたつぷり二時間。近くの銀鈴酒店に寄りDubonnetある?と尋ねると女将はさーっとフランスの食前酒の名前並べたが「Dubonnetはないねぇ、ごめんね」と。佐敦のカルト酒屋・昌記も覗いたが見当たらず。折角ここまで来たのでAustin Aveの方に移つた昔馴染みのバーWに寄りビール一杯独酌から帰宅。蕎麦茹でて飰す。連日、朝五時には起きてゐる生活で夜はすつかり意識朦朧。
▼晋三が「TTPはアジア太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みだ」と低丁屁(TTP)交渉参加表明。日経は「内向き断ち成長を手に」と薔薇色の未来で(経済部次長瀬能某)農業や国保など壊滅といふ「国内でのTTP反対論は「何を守るか」といった内向きの議論に終始した」もので「参加できないままだと得意種目が突然、五輪から外れるような痛恨事に日本は経済の大競争で見舞われかねない」ので前向きに、と。交渉文書も国民に明かされないことも日経的には「米国などとの事前協議が終わればテキストと呼ぶ交渉文書は夏前にも入手できる見通し」と表現されるから。同じ内容を東京新聞は晋三の「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実」と後発の不利を認めたことに言及し米など聖域として関税撤廃例外にできる保証がなく国民生活への影響不透明なまま日本は低丁屁交渉に臨む不明朗な「社会転換の入り口」と。御意。
▼港大政治学系の学者・戴耀廷が推進する「佔領中環」行動について。香港での普選実施、民意発揚に市民に中環を占領せよ、と。行動より、むしろその主体的思惟の強調。今日の蘋果日報で李怡先生の蘋論「對佔領中環爭取真普選的七點思考」(こちら)も「香港市民不要在中共強權面前妄自菲薄,你們的廣泛參與,各泛民政黨的摒除成見的推動,是有可能創出奇蹟的。」と積極的。これについては信報(十五日)に周八駿が「「一國兩制」基石遭動搖」と「佔領中環」について否定的論評あり。これは2010年の公民党&社民連による「五區總辭,變相公投」以来の過激な政治運動に当たるが(市民デモは過激な政治運動に非ず)香港政局の休息な悪化に対して胡錦濤主席による去年の七一講話と中共十八大での「中央對香港實行的各項方針政策,根本宗旨是維護國家主權、安全、發展利益,保持香港長期繁榮穩定」といふテーゼに対して「佔領中環」行動の計画と実施は「既挑戰國家主權、危害國家安全和發展利益,又根本損害香港繁榮穩定,是對「一國兩制」基石的動搖。(略)香港長期繁榮穩定遭受根本破壞,試問:「一國兩制」還有何存在基礎?」と指摘。アタシはすつかり保守的な人間なのでこの論調にすつかり同意。

*1:これについて英語版“Ghetto”読んだ新潟M記者より「重慶大厦のティピカルな住民として挙げているアフリカ系、インド系、ネパーリとか、やはり本国が貧しいからこそ香港にチャンスを求めにきているわけですから、意訳としては「貧民窟」の方がゲットーよりも適切かもしれません」と指摘あり。