富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

新加坡が我より偉く見ゆる日よ

fookpaktsuen2013-01-28

農暦十二月十七日。夜明けに十六夜明けの月を愛でる。

十六夜の明けて寒さに月見かな

文藝春秋一月号で沢木耕太郎先生の「キャパの十字架」読む。雑誌の記事だが309枚で臥床にて何度か途中まで読んで睡魔に襲はれ断念。今日やつとちゃんと読む。スペイン内戦の「崩れ落ちる兵士」はキャパの代表作の一つ。人民政府軍の若い兵士が弾丸に倒れる瞬間。ここれまでも「崩れ落ちる兵士」が実はポーズを取つてゐたのだとする地元の大学教授の説などもあり、だが当時を識る地元の老教師の一言は「ポーズをとつてゐたなら残念だ」としつゝ、それでもそのやらせ説を否定したいのは「やはり、あの写真は、スペイン戦争を象徴するものだからです。それが、演じられたものだったというのは残念です」と。御意。それを沢木先生はキャパが今その戦場で撮つたものではない。だがヤラセでもない。キャパと一緒にいたゲルダがキャパの徠卡に対してローライフレックスで、二人の微妙な位置関係のなかを兵士が走る抜ける
なかでのアクシデントで何枚かの写真が偶然に撮られた、といふ状況を執拗なまでに現場で、紐育の写真史料で徹底的に分析、推理、解明。この方の「深夜特急」は香港、澳門なんて噴飯もの、と感じてしまふのが正直なところ。1970年当時はあれでマジだったのかもしれないが。でも小田実の「何でも見てやろう」でも小澤征爾『ぼくの音楽武者修行』でも沢木先生のこれでも若者が外国に出ていこうとしただけ、今の時代に比べたらまだマシか。
▼北京の大気汚染は最悪。
シンガポール補選で与党連敗、野党議席が最多更新(朝日新聞)。

新加坡が我より偉く見ゆる日よ国債買ひ来て安倍といたしむ

安倍内閣の支持率絶賛上昇中。生活保護の切り下げも自衛隊の海外出動も集団的自衛権行使も憲法改正*1東京オリンピック招致もみな賛成が多数派。政党支持率自民党の次が維新、その次がみんな。日本国民の政治的選好は極右とネオリベとその両方といふ3つの選択肢に収斂……政治が反動化してゐるといふより「世論が極端に酷薄になつてゐる」と金澤H君。経済的な弱者や政治的な少数者をこれほど執拗に攻撃し排除しようといふ国はOECD加盟国では他にないんぢゃないか。欧米も韓国も台湾も、トルコだってインドだって相対的な左派と右派の対立が基軸。似てるのはロシアくらゐ? 米国でがいかにキチガイじみた極右政策があり熱狂する有権者が40数%ゐるとしても同じくらゐかそれ以上の国民が反対。欧州なら米国の共和党右派的なポジションは極右・ネオナチとして政治的市民権をもてない(フランスのルペンが限界)。日本はリベラル、左派の為体。米国の民主党フランス社会党、韓国の民主統合党、「それらが「左派」「リベラル」としての内実を備えてゐるかどうかはそれほど重要ぢゃなく「有権者のなかの左派やリベラルがさうした政党を通じて政治に代表を送り込んだり意見を吸ひ上げさせる回路をとりあへず持ってゐる、といふことが大事」とH君。御意。自民党の亜流でしかない民主党にそれも期待できず。自民と維新の2大政党制といふ暗黒時代がすでに始まつてゐるの鴨。日本のリベラルの良心を最近は市民政治でなく天皇陛下に頼ってしまふのだから。共和制なんて更に実現も無理。戦後70年かけて「民主主義を自ら運営する能力も意志もない国民を育てゝしまつた」わけで「日本特殊論」はいけない点もあるが「こんな特殊な社会はない」。本当に国がダメになつたら、どうなるのかしら。市民革命も未来永劫ないし、寧ろダメになつてダメになつても生き残れるくらゐ、中国人や印度人見習つて……なーんて考へると究極の新自由主義、平蔵になっちまふ。小松左京の『日本沈没』の続編に

2006年、日本人はパプアニューギニアカザフスタンなど世界各地に入植し、現地社会との摩擦を経験しながらも、着実にコミュニティをつくり上げていた。国土は持たなくとも日本国は存在しており、中田首相を中心とした政府は自国のアイデンティティを世界に示すため、ふたつのプロジェクトを密かに進行させていた。ひとつは日本列島が沈んだ地域に人口100万人規模の巨大な人工島を建設するメガフロート計画。もうひとつは日本人の技術を結集して挑む未来予測システム、地球シミュレーターだった。(amazonより引用)

なんて1970年の日本がベースなら、世界各地で生き残れる職能集団もゐたかもしれないが今では無理か。この中田首相って誰?横浜市長か、英寿姐さんか? カウス師匠では?とH君。カウス師匠でもカウス首相でもあまり代はりもない。ときどき強権で誰か脅すだけ、だと思ふと役柄的には何も変はらないか。

*1:憲法改正は議員89%賛成に対して有権者50%(朝日新聞)議員はたんに自分が在職中に何か達成感残したいのでせうね。議員定数削減にだけは反対(笑)。