富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦十一月廿九日。テロリストが占拠するホテルのロビーから命辛々脱出したが細菌兵器にやられC医師のクリニックでワクチン注射受け一安心のはずが知己のガイジンに高さ百五十階くらゐの建設途中の超高層ホテルで工事用エレベーターに乗せられ最上階まで連行され命綱もないまゝ屋上から空中に貼り出したクレーンの先のやうなところ歩かされ……なんて夢で朝の四時半頃に目覚める。寝たのが半夜三更だつていふのに。午後、湾仔の公立病院。血糖値と血圧の定期診断。糖尿の担当医に「かゝりつけの町医者に勧めらグルコファージなんて薬、呑んでんでげすよ、先生」と伝へると、自分が処方してゐる薬があるのに、と少しムッとしたかもしれぬが「ここの薬よか高価だから」と、その薬で処方箋書いてくれる。血糖値測る簡易機器のセンサー、 穿刺針など購ふ。ジャスコ通りかゝると岩手県物産展の開幕式。知事とか来てゐるのでせうがジャスコの中に小岩井牧場再現しちゃうとか、わんこ蕎麦でイベントやるとか、なにかもっと面白みがあればいゝのに。晩にNHK亀田音楽専門学校見る。「泣ける歌」でコードにおけるクリシェの解説続く。確かに面白い。坂本龍一のスコラのポップス版のやうだが、ふと思ふにかうしたポップス音楽の分析といへば朝日新聞で連載された宮川泰先生の「サウンド解剖学」があつた……と確かめたら1979〜81年のこと。
▼十二月十八日の田中真紀子文科相の最後の記者会見読む。自公政権になると文科行政に対してどんな変更が加へられるか?といふ質問に真紀子大臣は
近隣諸国事項、それから、教科書の7社ある中からの選定の仕方とか、いろいろとかなり右寄りな指摘が来たり、議論もそういうふうにいくと思う。殊に自民党がこれだけ多数を取っているし、復活した方たち、それから、新たに二代目として、三代目か、当選した新しい方たちを見ていても、結構、親御さんの代で右寄りな発言をしていた方のお子さんが多いと思う。お孫さんとか。かなり文科行政についても右寄りなふうにいくことが大変懸念される。
と述べ「右寄りな教育行政について大臣自身としてはどのようにみているか?」といふ記者の質問でなか/\いゝこと、かつての自民党ハト派的見識なのだらうが、を語つてゐる。

私は、今のような、上質で、できるだけニュートラルで、バランスが良くて、事実だけを指導して、あとはそれぞれの方たちが判断する、そして他国ともあまり刺激をしないで外交努力で近隣諸国とも共存共栄できるような形に持っていくのが最も民主的な方法だと思うけれども、かなり、そうではなくて強圧的というか、強圧にならないことを望んでいるが、極端な方向に行く可能性があると思う。他方、今回の中国の尖閣等、あるいはロシア、それから韓国の竹島に対する対応とか、そういう近隣諸国の状態に対して、主に若い世代、戦争を知らない世代は、街の声など聞いていても「もっと強い日本であってほしい」と。どういう意味で強いかというと、精神力であるとか、あるいは、外交力とか発進力ということよりも、やはり武力の面でも安全保障の面でもしっかりした方がよりいいのではないかという考えの世代が結構増えているように思うので、そういう世論のバックアップもあるのではないかと思う。

と危惧を語る真紀子大臣。どぜう首相に対しては

ご自分たちの考え方に非常に自信があって、あまり許容範囲が大きくないというか、キャパシティーが小さいというか、独り善がりというか、そういう(松下)政経塾の人たち特有のものがあるな、と。

とさすが(笑)。松下政経塾の連中をばこれほど軽妙に言ひ表したのは見事。実は解散が決まつたアトの閣議で「自爆テロ解散」といふ言葉が浮かんでゐたといふ。たゞ大臣としては不謹慎か、と思つて言はなかつたが「やはり当たつてゐた」。

東京都は都知事筆頭に倫敦に乗り込みオリンピック誘致。一行三十余名の由。都知事猪瀬某が「世界で最も最先端の都市、東京で」とか宣つてゐたが、せめて最先端の都市の一つならまだしも。たゞ面白くはあるがガラパゴス島の首都であつて、ちなみに倫敦は34%、紐育は36%の市民が外国生まれ。東京もそれくらゐにならぬと本当の面白さは出ない。個人的には岩井俊二監督で三上博史主演の映画「スワロウテイル」の円都と呼ばれた仮想の東京が好き。「"円"が世界で一番強かった時代。一攫千金を求めて日本にやってきた外国人達は、街を"円都(イェン・タウン)"と呼び、日本人達は住み着いた違法労働者達を"円盗(イェン・タウン)"と呼んで卑しんだ。そんな円都に住む、円盗たちの物語である」(ヰキ)とあるが、もう15年以上前この映画見た際に「もう日本のバブルが終はつて円が世界で一番強い時代なんてあり得ないだろ」と思つてゐたが、ふと気づけば円が世界で一番強い時代がじつは、つい数ヶ月まで現実にあつたのだ、たゞ世界的に円が買はれただけで誰も外国人は一攫千金求め東京にやつて来なかつたのだが。
▼徐峥監督のこの映画『人再囧途之泰囧』が見たい。このノリで中共ネタの政治風刺コメディ映画撮つたら面白いのだろうが……。