富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

戦争は散らかりますから

fookpaktsuen2012-12-30

農暦十一月十八日。摂氏九度。極寒。年末の日曜に公邸で独りお仕事。今年中に仕上げる約束の仕立物が終はらぬ。晩に北角清風街の某K厨房。劉健威兄、William鄧達智兄など贔屓にする食肆にて予約もかなり混みなか/\飰す機会なかったが郷里から青年I君来港中にて寒空に独りかつて住んだ香港を彷徨ってゐるといふから温かいものでも食べてもらはうとZ嬢と食事に誘ふ。昔ながらの粤菜だがコクのある油で料理はどれも味付けが意外とワンパターンで飽きたのも事実。それにしてもどーして昨今、香港の料理屋で紹興酒が異常に高値なのかしら。つまらない花彫酒で350ドル、ですとかぬけ/\と。今晩もハウスワインで白と赤。かなり混雑してゐたが午後十時にもなると残る客は数卓であたしらは赤葡萄酒に酔ひ款語笑話尽きず、でゐたが営業時間は晩十一時までなのに十時半前に「もう帰ってください」で店内のテレビは無声だったのをボリューム上げるし開いたグラスから片付けるし給仕らは私服に着替えるし席を立っても「多謝」の謝辞もなし……呆れるばかり。大したもの食べてをらぬがワインが二本でHK$500込みで三人でHK$1,500と値段は見事。なんだか一度きりで「もう来ません」の予感。かつての益新、鏞記が繁盛してゐても、どれだけ客を大切にしたか、が懐かしい。
▼気持ち悪くなるので読まないやうにしてゐる読売新聞を、つい読んでしまふ。社説「教育政策 高校無償化の見直しは妥当だ」で朝鮮学校の高校無償化反対、いじめ対策で道徳教育強化、大津の事件で機能不全露呈の教育委員会のあり方も政府内で議論を……と読んでやはり気持ち悪くなる。こんな新聞が最も売れてゐるのだから、やはりわが国の民度は低い。
▼連日、都新聞の記事から、になるが昨日の中村佳子女史(JT生命誌研究館館長)の「いま、戦争について考える」が秀逸。永六輔が綴ってゐる新内の岡本文弥師匠の「戦争は嫌でございます。親孝行ができませんし、なにしろ散らかりますから」を先ず、紹介。そして渡辺一夫(故人、仏文学)の

平和は苦しく戦乱は楽であることを心得て、苦しい平和を選ぶべきでしょう。冷静とか反省とかが行動の準則とならねばならぬわけです。そして、冷静と反省とは、非行動と同一ではありませぬ。最も人間的な行動の動因となるべきものです。

といふ言葉を引き、渡辺の説く、よく平和ボケといわれるがとんでもない、ボケていて保てるほど平和は容易なものではない、寛容を語る。時間をかける、我慢するなど今の社会が苦手とすることを求め、これも戦争を避けるための大事な点、と。御意。そして最後にアインシュタインフロイトの戦争についての書簡を紹介してゐる。①戦争根絶のための国際機構はつくれそうにない。②人の心には戦争をひきおこす性質があり、それを除くことはできそうにもない。……とこれを読むと絶望的にならざるを得ないが書簡の最後に「文化の発展が人の心を変え、すべての人が平和愛好的になる可能性に希望が残されている」と。中村佳子さま、素敵。さうなのね。政治も文化。少なくても菅丞相の脱原発には文化があったけど野田、晋三の政治には文化が微塵もない。
▼晋三が改革すするめる日銀の総裁に平蔵といふ噂あり。