富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

自民党のいふ「公益及び公の秩序」

fookpaktsuen2012-12-25

農暦十一月十三日。聖誕節も異教徒の身でかゝはわりもなし。連日の気温の高低にしっかりとGastroenteritisに罹り晝前にC医師の診療所で薬の処方受ける。本当に「本日休診」なきC医師。商務印書館で来年版の香港街道地方指南購ふ。かつては新年版出ると書店、キオスクに平積みで師走の季節の風物詩だったが世帯に一冊の世界でも地図の精緻さと情報量では恐らく世界一の地図帳も地図つきのスマートフォン普及で今では書店で「どこに置いてあるの?」の扱ひ。あたしも実際に頁捲る機会かなり減ったが、やはり大切な指南で毎年、酉の市の熊手の如くきちんと購ふこと二十余戴。過去十数年、新界の宅地開発で年々、頁数増えてゐたがさすがに一段落、地産獣らも自然破壊の開発はかなり厳しくなりぬ。午後は陋宅書室にて読書。聖誕節の連休でいつも読む新聞が蘋果日報だけなのは溜めてしまった新聞読むのは好き機会。国際文化会館の会報(2011年11月号)でアルンダティ=ロイ女史の「民主主義のあとに生き残るものは?」読む。これはロイ女史の同会館が昨年311の震災の直後で已に東京入りしてゐたロイ女史講演も中止になり、その原稿をまとめたもの。先週末に南方周報と間違へて買った南方都市報。これも周末の付録「都市周刊」面白い。大陸の媒体を「面白くない」と信じてゐては誤解。胃腸の調子芳しからず晩は野菜多きポトフ煮て飰す。
朝日新聞デジタル高橋源一郎「民主主義の行方」(こちら)面白い。自民党憲法改革案を奇想天外な現代「アート」だ、と嗤ひ、紹介するのがエクアドル憲法。「自然」自体の「権利」を保障している条項がありパチャママ(母なる大地)は「その存在と維持そして再生を尊重される権利を有する」と書いてあり恣意的な乱獲を拒む。「いいなあ、エクアドルの草木は。そのうち、おれたち日本人より人権(樹権?)が保障されてるかも」と源ちゃん。その自民党憲法案、彼らが嫌いな現行憲法の前文とりもっと酷い。

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

……って何よ、これ。

第十二条(国民の責務)この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。
十三条(人としての尊重等)全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。
第二十一条(表現の自由)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。

……全てが「公益及び公の秩序に反しないかぎり」だ。これって香港の基本法23条による治安維持条例立法より内容はタチ悪し。金澤H君曰く、自民党改憲案は立憲主義の理解に於いて大日本帝国憲法以下、長州の田舎侍でさゑ猛勉強して会得せし近代思想のエッセンスを日本国憲法下で生まれ育って東大法学部で学んだはずの歴々がなほ毫も理解してゐないといふことに深い絶望、と。自民党憲法起草委の事務局長務める礒崎某の立憲主義すら知らぬ無教養には呆れるばかり(こちら)。香港であれだけ反対運動が起きるのに、日本ではこの党に政権委ねるのだから大したもの。いかに民度低いか、の証左。だがあまり「民度が低い、低い」といふと自棄になるから「民度が低い」とはいはない方がいゝ鴨。そのうちあたしらの方が「非国民」扱ひで非難されるばかり。怖い/\。「日本国憲法が65年かかって、こんなのしかつくれない政治家と国民と育成してきたわけだから、これは日本国憲法の敗北というしかないですな」と金澤H君。 敗北しても現行憲法樋口陽一先生の仰る通り理念上、普遍法としての最高傑作。迂生草臥れたときはお棺にでも入れてもらふか。敗北なんだが、やはり元凶はこの憲法が自分たちの血と肉になってゐないこと、授けてもらった人権、民主主義だから。さういふ意味では自民党の「自主憲法」が民度に合ってゐるの加茂。
▼南方周末で「香港和内地关系紧张的一大原因 其实有很好的政策调整工具」が説くに

香港永久居民700万人,2011年内地2810万人次访港,是香港总人口的四倍多。2012年,完全可能达到4.8倍。用4.8倍乘以13亿人,相当于全世界63亿人次到访中国内地,而全球人口除中国内地的居民以外只有57亿。一年之内,全世界的人都到内地来一次以上,你能承受得了吗?香港本来就是全球人口密度最高的地方之一,现在真是拥挤得受不了啦!

……ってわかり易すぎ。確かに「中国に人口の4.8倍の63億人が旅行に来たら驚くでせう、第一、中国を覗くと世界の人口は57億人、と(笑)。ちなみに2011年に香港訪れた旅客数は4千万人でそのうち2,810万人が大陸漢、台湾が215万人で日本は未だ三位保ち128万人で米国が121万人。で日本は、といへば2001年には477万人だった訪日旅客数が核禍前の2010年には861万人にまでふえたが2011年には622万人まで落ち込み今年は回復の由。それにしても香港に日本訪れる旅客のなんと少ないことか。

北朝鮮といへば朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」が説く“커다란 우려를 자아내는 선거결과”つまり「大きな憂慮を生み出す選挙結果」で日本の衆議院選挙結果と自民党圧勝を今日、初めて報道の由(こちら)。「日本社会の右傾化、軍国化は深刻な段階に達している」「極右分子で知られた安倍は自衛隊国防軍にすると打ち出し」「集団的自衛権の行使が許され、平和憲法を戦争憲法に改める手続きが国会で採択されれば日本が無謀な侵略戦争の道を再び歩むのは火を見るより明らか」と……確かに。労働新聞ってこんなにお気軽にネットで読めるとは今日まで知らず(こちら)。