富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2012-12-13

農暦十一月朔日。母と朝からは何もすることもなく銅鑼湾からミニバスでスタンレー。折からの晴天で風も心地よし。香港の秋から初冬は毎日こんなはずなのだが。観光客相手の商店街が店を開けるのを眺めつゝ漫ろ歩き。ちょうど尖沙咀往きの973系統のバスがあったので乗車。アバディーンから港島西をぐるりと回り香港大学から下って西隧道で九龍西。何とも光景が次々のパノラマの如く面白い。ペニンスラホテルのアーケード。母の買ひ物のはずがBaccarat商店でRohanは定番だがあらためて綺麗な蔦の文様のリキュールグラスに見惚れ「香港でこれが最後の一つ」と囁かれては購入せざるを得ず。昼に天后の悦寿司。母とZ嬢と寿司頬張る。今日もいゝ天気、でヴィクトリア公園散歩して銅鑼湾。CItysuperに立ち寄ると、こんなに日本や世界各地、日本の食材も北海道から沖縄まで見事に揃ふの、と驚かれる。確かに鰹節から海苔、和菓子の材料まで見事に並ぶから。永谷園の商品宣伝で愛嬌のある「太郎君」が松島屋から永谷園に嫁入りされた京子さんの息子だと母に教へられる。あの会社の社長夫人が母の高校の先輩だとも聞く。水戸芸術館のコンサートでいつも秀和さんが坐ってゐた席にお顔そっくりの方がゐて驚いたら知己の方に秀和さんの息子さんご夫妻だ、と教へられた、と歩きながらの母の話がけっこう面白い。晩に太古城の西苑にZ嬢と三人で粤菜飰す。昨晩の競馬場の満貫廳もさうだったが此処でも紹興酒の値段高すぎ。国宴用なんて書いてはあるがたかだか八年物の古越龍山でHK$480だなんて……。同じ価格でサンテミリオンのPrieur des Jacobinsの2000年、これで大哥叉燒飰す。とても真面目な給仕多くて安心して食事できる。今晩も母とまた飲もうか、といふことになり銅鑼湾のバーBへ。一杯のつもりが二杯ずつ、でオーナーのI氏が老母の来店にいたく感激していろ/\供していたゞいたがジャックダニエルとフィリピン産のサンミゲル小瓶で調合したBoiler Makerがショットグラス逆立ちさせて、の見た目も面白く味もなか/\。
▼古典劇評論の畏友・村上湛君が十八代目逝去についてご自身のサイトで綴ってゐるこちら)。芸事に厳しい湛君がこゝまで誉め、死を惜しむのだから。浅草の中村座で湛君が法界坊をかぶりで見てゐると中村屋はちゃんと劇中で湛君を指して「この人、歌右衛門のおじさんの昔からの贔屓。この人の言うことは、歌右衛門のおじさんの言うことなんだから……云々」って弄ぢられた、なんてのも今となっては光景想像するだけで涙が出てくるが本当に中村屋ならでは、のいゝ話。快楽亭ブラック師匠も世直しブログで中村座で夜の部目指してだったか言問橋を渡ると声をかけられ、誰かと思ったら勘三郎だった、といふ話も一寸いゝ話。ブラック師匠は今月二十二日に中村勘三郎追悼で「文七ぶっとい」をば「入魂の一席」と称して語る由(上野広小路亭)。
▼香港の所得税について(左丁山、蘋果十日)。香港の所得税納入者数152.1万人。就業人口376万人の約6割、つまり就業者の4割は低収入、控除等で納税なし。2010/11年度で所得税納税者のうち105万人がHK$443億納税は政府収入の12%で平均税率は8.1%となる。年収がHK$10.8万(基本控除満額)〜HK$15万の所得税率は僅か0.3%で年収がHK$30万以上でも4.9%に過ぎず。年収がHK$150〜300万で税率は14.2%となり記憶しておくべきことは所得税納税者の13%占める20万人の納税額が政府の所得税収入の81%占めてゐること。貧乏人はつべこべいへぬのが香港なのかしら。