富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2012-11-27

農暦十月十四日。寒波到来で朝は摂氏十四度。冷雨。
▼英国で最も濃厚キャラの歌手エルトン=ジョン先生が北京でのコンサートに合わせ中国で最も濃厚キャラの芸術家に面談。エルトン先生だとコンサートのステージにアンディ=ウォーホールの描いた毛沢東肖像画とか飾ると素敵なのだが。
▼SCMP紙のビジネス面にLai Seeなる面白可笑しい連載が昔からあり(誰が読んでゐるか、あたしは知らないが)先週だったか十二月に香港の日本総領事館が開催する天皇陛下の誕生日レセプションにつき毎年、香港政府の行政長官なり長官クラスが主賓として来臨、日本と香港、中国の友好につきコメントするが今年は島争ひあり、誰が来て何を話すのか、と。これが反響少なからず、で今日の同欄に続報あり。その中で

Someone who has attended this function for a number of years writes that it was usual for a recorded version of Japanese national anthem, the Kimigayo, to be piped into the proceedings and some of the more patriotic guests would sing along with it.
However, last year the event was enlivened by the presence of the Hong Kong Japanese Club Choir which sang both the Japanese anthem, which at one minute 30 seconds is one of the shortest in the world, and China's anthem. We discover that China's anthem, March of the Volunteers, written in 1934, is a song protesting against the Japanese invasion of the mainland. So will China's anthem be played this year? If it is, the Japanese may take offence, if it isn't Beijing may take it as a snub.

と「君が代」とともに中国国歌がこれまでも流されたが昨年の祝賀会では香港日本人倶楽部合唱団により「君が代」とともに中共国歌=義勇軍行進曲が歌はれ、戦時中、日本の侵略に対する抗戦歌をば日本側が歌ふという稀なる演出に、果たしてこれが今年はどうなるのかしら、とLai See子。興味深いところ。
産経新聞が哲学者の佐々木中氏に依頼の読書欄エッセイで佐々木氏が石原慎太郎『新・堕落論 - 我欲と天罰』取り上げ辛辣に批判したところ掲載拒否(こちら)。

安吾の「堕落論」から「続堕落論」を経て「もう軍備はいらない」に至る徹底した世界史的思考には、石原ごときの文言がつけいる隙は無い。「堕落せよ」「嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!」と叫びつつ、しかし強烈な緻密さで息を呑ませる安吾堕落論、「人に無理強いされた憲法だと云うが、拙者は戦争はいたしません、というのはこの一条に限って全く世界一の憲法さ」と言い放つ安吾こそが、今読まれねばならない。

と真っ当な指摘。いずれにせよ産経に載ったところで読者は限られるが掲載拒否でネットでこれが広がったのは効果的か(笑)。
▼内地旅客の来港、2011年は年間2,810万人に対して2016年は倍増の5,470万人、香港での小売業も内地客の消費は2016年には年間HK$32億と倍増、小売業売上げの32%が内地客。どんなに不愉快でも忍びがたきを忍び耐へがたきを耐へ、か。
▼香港の年間(2010年)の電力消費は150,859テラJ(約4194億kw)のうち実に28.8%が冷房。照明は12.5%のみ。冷房も住宅は26.2%でオフィスと商業施設が66.4%なり。自宅だと電気料金の負担があるからガン/\冷やさぬがオフィスや映画館は冷蔵庫の如し。つまり、あの温度を少し上げれば、どれだけ電気消費が軽減されるか。
知日派碩学Joseph S. Nye先生が“Japan’s Nationalist Turn” と寄稿(こちら)日本国民自身が来る衆院選の怖さを理解していないのだから……。

Many younger Japanese have told me that they are “fed up” with stagnation and drift. When asked about the rightward trend in politics, some young Diet (parliament) members said they hoped that it might produce a realignment among political parties that would lead to a more stable and effective national government. If a moderate nationalism is harnessed to the yoke of political reform, the results could be good for Japan – and for the rest of the world.
But if Japan’s deepening nationalist mood leads to symbolic and populist positions that win votes at home but antagonize its neighbors, both Japan and the world will be worse off. What happens in Japanese politics over the coming months will ripple far beyond the country’s shores. - Joseph S. Nye

金澤のH君がかういふ「知日派」に呼応する「知米派」といふか1930年代の英米派や重臣層に相当する「保守派」は今どこで何してゐるのかしら、と。無産政党の議員の数も保守リベラルの議員の数も帝国議会末期のほうがずっと多かった、といふH君の指摘。本来はさういふ「真の保守」になってゆくべき人たちが大学出て安易に「松下政経塾行けば議員になれる」って思ってしまったのが不幸。フルブライト留学生たちだって、もう鬼籍。H君曰く「自民党が付き合ってるのはマイケル=グリーンみたいな極右」だが「しかもそのマイケル=グリーンですら安倍晋三には「慰安婦問題でトンデモ発言やめろ」と忠告してるほど。米国も「我々が民主主義と自由を教へてきた国がこんなものか……」と、たゞ呆れてゐるのでせう。戦後の占領モデルの失敗、と。戦後民主主義を60年以上やって来て、そこで育った政治家がこれだから。

尖閣諸島について外交問題と指摘したときには売国奴だの、商社で中国貿易重視で軽卒な発言などと批判されたが大使辞任で中国の大国ぶった傲慢さ、まるでもはや学ぶものなきやうな態度に苦言。こゝまで言へる反中派の諸君がどれだけゐることか。