富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

恐るべし、郎朗

fookpaktsuen2012-11-24

農暦十月十一日。なんだか香港の春のやうな悪天候と多湿続き。午後、ジムまで少し走る。昏刻、Z嬢と油麻地。ラーメン「横綱」覗いたが相変はらず行列で隣りの美食東北餃子館なる食肆でまた「土曜夕の餃子」となる。かなり涼しいので尖沙咀まで歩こうか、といふことに。佐敦の呉松街通りかなり久々に明記甜品。渣渣と薑湯芝麻湯圓。尖沙咀まで歩き丁度いゝ時間に文化中心。郎朗のピアノリサイタル。リサイタルは静寂求められるが今晩はツィメルマンぢゃなくて郎朗である。中国銀行がスポンサー。演奏中の携帯電話、嚔咳が期待されるところ。期待裏切られず。たゞソナタで楽章毎に拍手がなかっただけでも御の字か。心地よく仮寝でパンフレット落とされても音が響き迷惑だが、これは床が板敷きでパンフレットが必要以上に厚い=重いのが悪い。で郎朗だが香港フィルのプログラムなのも不思議。楽団がソリスト招聘し一晩は共演、それに合わせリサイタルなら解るが今回は郎朗と香港フィルの共演なしで単独の独奏会……といふか独演会。前半はモーツァルトソナタが三曲、5→4→8と続く。指慣しに5番で始まるのは解るが4番は「つまらない」。郎朗が高額な入場料とって聴かせる曲ではない。悲劇的な8番は今の香港で中国銀行スポンサーのリサイタルにはお似合ひか。いずれにせよ郎朗モーツァルトのこのへんの時代のソナタ弾かせても退屈。彼らしくかなり彼らしい解釈取り混ぜては見せるが、やはりモーツァルトが偉大なのはどれだけ調味料加へられてもモーツァルトモーツァルト、その枠が崩れないこと。あらためてモーツァルト無印良品ぶりを感じ入る。中入り後はショパンのバラード4曲。郎朗がこの4曲弾くといへば今更いち/\説明は要らぬ。ご想像の通りのショパンのバラード郎朗風。ご立派。ここまで自分のショパンのバラードに出来てしまふ得意なる才能。誰も真似出来ず。かういふ芸風のピアニストが「一人なら」ゐてもいゝのだらう。いゝこと。客もそれを楽しみ嬉しくなれるのなら、こんないゝことはない。アンコールも「仔犬のワルツ」「華麗なる大円舞曲」そしてエチュード「大洋」まで、もう郎朗ワールド全開。「大洋」は、もう「怒濤」でござんした。天晴。たゞあたしはかういふ演芸披露はやはり苦手。郎朗は得意稀なる才能のある素晴らしいピアニスト、だがあたしは長嶋茂雄の野球に食傷気味だったやうに、この演奏が食傷気味。歌舞伎でも澤瀉屋(先代猿之助)のあれが歌舞伎に一つあっていゝやうに郎朗もあり、なのだらう。たゞ勝手していゝ曲といけない曲があるはずでショパンのバラード4番とかコーダなんて「それ、あり?」で、やはり2006年のツィメルマンのやうな、最初の一音で泣けてしまふやうな、さういふ曲だと信じてゐるので、さうすると今晩の演奏は演芸に見えてしまふのかしら。いま同じ時間にこの文化中心の隣りの芸術館でMonique Duphil女史がドビッシー弾いてゐるのだが郎朗が太陽ならモニク女史は月、あのフランスのピアニストがこのショパンを聴いたら何といふかしら、とZ嬢と呟く。それにしても偉大なるピアノ界の長嶋茂雄である、郎朗は。アンコールもショパンのお目出度い曲で、もうお祭り。これでいゝのだ。
▼行政長官測量梁がピークにある豪邸の不法建築について報告書をば公開(こちら)。詭弁甚だし。それにしても当初の中共欽定の行政長官候補唐紅酒が不貞もあったが住宅の不法建築で落馬、更に測量士が仕事のCY梁まで同罪とは(嗤)。