富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Reflets dans l’eau

fookpaktsuen2012-11-23

農暦十月十日。朝、空が真っ暗になり大雨。この時期には稀。夕方小腹減り北角で通りがかりに阿一豬扒酸辣米線を飰す。此処はよく通るが初めて。いろ/\用事済ませるなか九龍湾から九龍站に行こうと思ったら最短ルートがMTRだと九龍湾から観塘線で太子で荃湾線に乗換へ茘景で東涌線……と時間にしたら31分なのだが香港的にはかなり億劫。少し涼しくなったので昏刻、九龍公園漫ろ歩く。都会のなかに未だ樹木鬱蒼と繁る暗闇あり。そろ/\汗だくにならないかしら、と尖沙咀海防道街市の徳發麺家で牛腩麺。今晩はドビッシー生誕160年で芸術館のロビーを使ひ“Reflection on the water”と題してMonique Duphil女史のピアノに畏友Jonathan Douglas(RTHK)の詩の朗読といふサロン風演奏会あり。美術館の閉館後のロビーで自由席、それでHK$250と強きの入場料設定ながらほゞ満席で三晩の初回。自由席なのでZ嬢に請はれ40分ほど前から並んだら一番前のかぶりつき席に。冒頭で柱の影からさっと現れたジョナサンがいきなりドビッシーのJardins sous la pluie(雨の庭)の童謡のやうな歌詞をフランス語で歌ひ始める。そのあとは英語でフランス詩の朗読はさみピアノは雨の庭 - 水に映る影 - 金色の魚 - 帆 - 音と香りは夕暮れの大気に漂ふ - アナカプリの丘 - 雪の上の足跡 - 西風の見たもの - 沈める寺 - 水の精 - 霧 - 交代する三度 - 花火……と主に前奏曲集から、と「映像」等からもあり。やはりピアノってこれくらゐの距離で聴くのが素敵。それにドビッシーですもの、やはりフランスのピアニストにかぎる。ジョナサンの見事なヴェルレーヌボードレール、エリオットなど詩の朗読聞いてゐて彼の見事な才能に「詩もいゝものね」と初めて思ふ。地元のAndrew Lingといふヴァイオリンとソナタで最後はClair de lune(月の光)。この芸術館のロビー、音響は音が横に抜けてしまふし冷房のファンの音がかなり気になるが映像的にはヴィクトリアハーバーの、まして今日の雨で香港サイドの夜景殊更美しく、それを嘆めながらのドビッシーは素敵。外に出て夜空眺めると雲の合間に月。湾仔行きの22:40の最終フェリーで香港島に渡る。
▼世界で一番「感情的」なのはフィリピンで、一番感情的でないのはシンガポール、と或る調査が発表。「感情的」と日本語を置いたがこの“Emotional”はもっと喜怒哀楽広く含み楽しくも悲しくもフィリピン人は素直に気持ちを表しシンガポールはその対極、と。わかるところ。リークワンユーの国づくりの結果がそれかしら。
澳門黒社会のドン「崩牙駒」が十三年余の刑期終へそろ/\出獄の由。市街地でも抗争あり、で治安の悪さが叫ばれたマカオだったが中国返還に合はせ何が何でも、といきなり親分逮捕で黒社会は壊滅的に(実際になくなったとは思はないが)影を潜め今では市街地で銃弾戦なんて考へもしない、が崩牙駒がシャバに出てきてどうなることかしら。人民解放軍も都市部だけの特別行政区であるマカオには当初、駐屯せぬはずが黒社会暴動多く公安的役割の見せしめで(それを理由に?)マカオにも駐屯。崩牙駒にしてみれば何かと気にかけてゐた中共葡萄牙からのマカオ返還に合わせ自らを逮捕拘禁したことにかなり不満あり何かお礼参りでもあるのかしら、と巷の噂。
▼中国政府の香港選挙介入に関するSCMPの記事で、あの親中派の「香港司法のターミネター」エルシー梁愛詩刀自が中共非難するコメント。「まさか……」と驚いたが正しくは公民党党首梁家傑議員のコメントで写真取り違へる大チョンボ。いくら何でも香港の司法界で最も中国寄りの婆さんの写真を使ふとは(笑)。この「香港を代表する英字紙」はオサマ=ビン=ラディン師が米軍に殺害された際はオサマを「オバマ殺される」と見出しにしたり胡錦濤の訪米の際には写真のキャプションに胡佳(中国の人権運動家)と書いたり、かなり笑へる誤記少なからず。大丈夫かしら、この新聞。しかも最近は隠れ中共紙と噂もされるってのに。