富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

超法規的梁愛詩

fookpaktsuen2012-11-12

農暦九月廿九日。さて月曜日、殊に今日は大切な会議もあり忙しい、と思って官邸入りすると「大変です!」と何かと思へば水槽の中でグッピーの幼魚の飼育ケースが倒れており幼魚たちが水槽のなかで制御に狙はれ逃げ惑ってゐる。すわ一大事!と月曜朝イチからスポイトと網で見事に13匹を救出。一時間近く要したが手際の良さに我ながら驚き。原因は飼育ケースのゴム製の吸盤が弱く、普通なら水槽の内面にくっついてゐるが成魚が養育ケース内の餌か或は幼魚ぢたいを狙ふのか、で底や脇からケースをかなり頻繁に突くので、それで吸盤が外れたとしか思へず。水槽の上枠と飼育ケースの当たり口に「ひっつき虫」をつけ水槽の蓋からケースを吊るやうに糸を張る。晩におでん煮て飰す。
▼話は旧聞に属すが香港司法界の超法規的存在たる梁愛詩刀自が人民日報の海外版・環球日報(七日)の取材に対して「香港返還前は裁判官の過半数が外国籍で裁判所も行政官も「主権」の認識に欠け何でも普遍法で判断しようとするが香港基本法は全国人民大により中国の法律に則り制定されてゐるので普遍法に則ってばかりではいけない」「司法独立は裁判官が批判に曝されないことではない」「人大常委はあくまで基本法の法解釈をしてゐるだけで香港特区の法律について解釈を与へ干渉したり司法独立に影響はない」「五十年不変の原則はあくまで中央の香港に対する基本方針が不変といふことで香港のあらゆる状況が不変ではない」等と鄧小平も驚く香港司法批判の爆撃。梁愛詩と個人的に面識もあるので(通りすがりやレストランで遭遇して黙礼する程度だが)あまり文句も言ひたいくもないし個人的にはこの婆さんの強烈な中共寄りの法解釈除けば非常に真面目で立派な人だと思ふ。それにかうした発言も、恐らく中国統治下の香港といふ現実を考へれば中共の現状の善し悪しは別として香港が上手く立ち振る舞ふために司法も敢へて多少の中央配慮を、とこの人なりの最善がこれなのでせう。それは成龍(ジャッキー=チェン)がさんざん口にして香港人に嫌はれる一連の「中国人たるもの……」発言と一緒。たゞ私はいくらこの発言が中共支配下で最善であっても、やはり最終的に国家や司法は普遍法で語られるべきもの、と思ふ。
▼かうした司法一つとってもさうなのだが香港で高まる反中感。中文大学の調査で自分は「中国人」か「香港人」かと問ふと「中国人」認識が1996年(日中島争ひで香港の活動家が海に溺れ亡くなった年)のピークに比べかなり減少しており中国人を否定するかのやうに香港人意識の高まり。わずか12.6%の香港市民が「中国人」と自認。また、具体的に国旗、国家、解放軍への反感も徐々に高まる。さういふ時に合わせ(ざるを得ないのか)愛国愛党教育の強制。解放軍といへば今週末のOxfamの100kmトレイルランレース、3年連続で人民解放軍が精鋭が出てゐるとはいひつゝ手段選ばぬ勝ち狙ひで優勝してゐるが(それに合はせるかのやうに往年の覇者グルカ兵団のレースからの撤退)解放軍は今年は出場申し込みしたものゝ出場登録せず棄権の由。駐港の解放軍は軍人の体力強化の目標として一定の成果を上げ香港の市民活動への協力は他にもいくつも方策があり今後も良好な関係を」なんて宣ふが実のところは手段選ばぬ勝ちぶりに優勝しても「また解放軍か」と、飽きられるばかりか顰蹙かふこと懸念は明らか也。