富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

北京马拉松

fookpaktsuen2012-11-11

農暦九月廿八日。日曜だが終日、仕事。晩に浅蜊のバター炒め、里芋と茸のグラタン、生野菜を食しPouilly-Fumé Les Cris 2005 (A.Cailbourdin) 飲む。NHKスペシャル中国文明の謎②漢字誕生」見る。続けてNHKの海外放送では「ファミリーストーリ」で澤瀉屋。この番組、ほんと出自が華僑、終戦後に旦那が進駐軍といった類ひがお好き。で今晩は芝居役者で段四郎II妻の古登(吉原の中米樓の娘)、古登が段四郎と別れ再婚した芸人との間に生まれ浅草寺近くの開業医の妻となった娘(名前失念、従兄弟の段四郎IIIは女優・高市早苗に憧れ、偶然にもこの開業医の親戚にあたる早苗と段四郎の仲をとりもつことに)、中車VIIIの娘、貞子まで澤瀉屋の女系図を辿る。興味深いが、それにしても中車、当代(猿之助IIIの息子、香川照之)ではなく八代目中車(猿翁の弟、写真)の芝居を見てみたかったと思ふ。
NHKスペシャルは「漢字誕生」を、中国があれだけ大きな国を話言葉も違ふ民族を統一した大中華形成したことは「漢字」に拠るところが大きいと、まるで大発見のやうに語ってみせるが、さういふことはすでに常識であつて「謎」でもなんでもない。何十年も前に高校の時に世界史の授業でT先生が熱弁をふるってゐたし、確かにこの十数年の研究で象徴的だった漢字がどのように古代国家で政経に使はれるやうになったのか、殷や周といった古代王朝がどう統一国家化していったのか、それにどう漢字の影響があったのか、と具体的な研究でかなり成果は出てゐよう、が白川静なくては語れぬ漢学。それにしても探訪者役の中井貴一が迷ひ込んでみせた北京の胡同の迷宮はなによ、あれ、ゼンジー北京みないな怪しい「知の」案内人は「对!」「不错!」ばっかり……。こんな番組も白川静亡き後だから、かうして恥ずかしくもなく無邪気に制作できたのでせう。ところで、かうしたChineの国史から見ると中共も22世紀くらゐには王朝の一つとされるのかしら。中共中南海で「甲骨で占ひ」とかして後継者とか党大会の日とか決めてたりして(笑)……と顔本に書いたら郷里の畏友J君が「恍惚の人が後継者を占っていることは間違いない」と。然り。
▼北京マラソンの参加登録が八日から始まつたが参加者の国の欄に「日本」なく事実上の締め出し。九日の朝日がこれを報ず。安全上の措置の由。反日で日本人ランナーに罵声浴びせたり投石でも警戒したのかしら、なんて。あたしも実際にかつて参加したランナーの一人だが、沿道の、あの見事に10m措きに人民解放軍の兵卒が企つなかで民衆の狼藉などあろうはずもなし。これは面白いことになった、と思ったが中国国内でもこの措置に恥ずかしいといった避難相次ぎ十日には「日本」で登記可に(読売が報ず)。それにしても国の選択には日本はないが「他の国を選べば登録可」と公然と言い放つあたりが、さすが国破れて華僑あり、のお国柄、と感心するばかり。中国の、あの国家主義は驚くばかりか怖いほどだが、あれは正確には「大中華」であって国など中華民国でも中共でもシノワにとってはどーでもいゝわけで、だがそれが日本=家=国のニッポン人にはよくわからない。
▼都新聞夕刊?の古市憲壽による論壇誌評が面白い。中国と日本の対立を面白可笑しく書き立てる雑誌多いが『正論』も「貪婪な嘘つき国家には報復を!」なんて貪婪に叫んでみせといて「祖国とは人間にとって悲しみの根源であるかも知れない」なんて意味深に書いてゐるらしい。これはフレーズだけは素敵。「政治ニュースまでもがルーティン化するなかで「養殖」ニュースが増加、しかも政治家は小林幸子の噓泣きや和田アキ子のウソ怒りより噓っぽい」といった指摘を受け「論壇誌まで噓っぽくなる」と。御意。