農暦九月十六日。ハリケーンが襲ふ紐育から来襲直前のフライトで中学のときの同級生Ｔ君来港。紐育でフリーのジャズベーシスト。兄貴も紐育在住でパーカッション。
中学生のときには同級生のあの年頃のバンドブームとは一線を画しＴ君は確実に「自分はベーシストになるのだ」と人生を決めてゐたがしょーもない教師たちに「絶対にロックは許さない」とか「子どもの麻疹のやうなもの」なんて罵声浴びせられ本人は高校卒業したらバークレー音楽院に留学する、と決めてゐたが彼の進学した高校でも大学進学しなかつたのは僅か２名だつたさうで、そこでも散々とっちめられた由。彼にとつては日本の公教育は彼の人生を潰す存在でしかなく、それにどう対抗するか、が中高生時代だつたのだから。お昼にＴ君と西貢。あたしにもかなり久々の海鮮で全記海鮮の地味な方の見世で大雨のなか白灼蝦、帆立貝の大蒜蒸しと石班魚。午後遅くＴ君の中環から上環への食材買ひ出し散歩につきあふ。九龍醤油で生抽と赤酢。蕘陽茶行で鉄観音はあたしが前回お勧めしたものだが台湾の包種茶を買ひたいさうで蕘陽向かひの林奇苑に。Ｔ君と若女将との茶談義にあたしは入る隙間もなし。茶を語る言葉もつてゐるのが羨ましい。それにしても未だに半斤八両、この「重さ」の見当があたしには難しい。西環からトラムで銅鑼湾に。そごうでレンズ交換の眼鏡受領。中近両用だが４年前の度数で新聞の小さな字など難儀のため。中環。FCCのバーにビール一飲。ハウスワインのカルメネーレ購ひ鏞記。Ｚ嬢も来て会食。焼鵝の出来具合が昔に比べると難色あり他の料理も盛りつけなど多少、雑になつてゐる嫌ひあり。終日、雨は歇まず。
▼尖沙咀から佐敦に向かひAustin Rd手前で彌敦道右側にあるマクドナルド。あたしは「餌食」の習慣ないが香港のマクドナルドでは昔から在ると思つてゐたら開業から25年。ついに家賃高騰で撤退の由。また野暮な貴金属屋でも出来るのかしら。
▼李怡先生（2012年10月27日、蘋果日報「蘋論」）「中國有未來嗎？未來有中國嗎？」（こちら）
