富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

香港一国両制の矛盾を矛盾としないこと

fookpaktsuen2012-10-24

農暦九月十日。陋宅のマンションで上階の夫婦の痴話喧嘩が夜中に時々キチガイじみた口論となり六、七歳の子どももゐて嘸や可哀想だが、夜中に起され迷惑なので本当に我慢ならぬ時は天井=相手には床下を棒でどん/\と叩き抗議。まだ怒り心頭で相手先まで乗り込んだことはないが困つたもの。最近も時々夜中に起さて迷惑だが、この二晩可笑しかつたのは夜中にまた怒鳴り声聞こえたが、寝室で始まるのはおそらく妻が寝てゐるところに夫が夜中帰宅して……だからなのだらうが口論が始まると二人してすぐに居間に場所変へて痴話喧嘩続けること。寝室だとすぐにアタシが怒り天井を叩くので少しは気を使つてゐるのかも。その「ほら、向こう行くよ」ってのが昔のコントのやう。晩におでん煮る。酒は酒田の「初孫」辛口純米。
NHKのNW9で「セカ就」だか馬鹿なネタをやつてゐたが日本での就職見限り「視野を世界に向けて就職活動をする大学生が増えています!」って先日のNHKスペシャルの討論にならない討論で「内向き指向の就活」とやつてゐたのとまるで逆(笑)。いずれにせよ海外で就職、でジャカルタに就職ツアーとパンダバスだかのツアーで就職活動前の視察に参加する大学生たちは「海外で自分が何処まで出来るか頑張ってみたい」と言ふが視察先は日系企業ばかり(笑)。それじゃ海外に出ても現地採用扱ひで苦労するばかりで、ならば日本で就職して駐在員になる方がマシ。それを馬鹿なキャスターは「国境を越えて越えて新しい流れ」だの「日本経済への刺激になれば」って、なるわけないだろう。戦後の青森からの集団就職の行き先が東京、大阪からジャカルタになつただけなのに。花巻東の大谷投手は大リーグ入り希望。そりゃそうだ。能力があればさつさと国際人、で日本の野球界に貢献しよう、なんて気もない(当然だ)。せいぜい彼の活躍を見て自分の励みにする日本人がゐるだけ。それでいゝのだが。ちなみに国際金融公社(IFC)の中小企業を対象にした中小企業のビジネス環境でビジネスのしやすさランキング、東アジアの国と地域では香港が2位(ってことは一位が北欧かシンガポール?)、韓国8位で台湾が16位に対して日本は24位。まぁ今どき日本にビジネスチャンス求める中小企業があるわけないが。
▼王永平といへば政府高官時代は鵺のやうな人だつたが引退してからはコメンテーター業で発言軽やか。信報の専欄で「香港永久性居民應享公民權利 - 回應曾鈺成」と題して書いてゐる内容が面白い。民建聯の曾鈺成が香港の非中国籍の永久居民(私もだが)が行政長官を選ぶ場合の矛盾について言及してゐる由。地方自治だから国籍に関係なく首長を選べるが国政選挙の投票権は無い、というのが香港のワタシら非中国籍永久居民の選挙権で、日本でも外国人に参政権を!の前提だが、香港の場合の問題は曾鈺成曰く基本法に国家安全保障等の項目等があることで、それを義務づけられている特区の、その首長選挙に非中国籍市民が選挙権あることの矛盾。確かにその通りで、例へば香港の市民が基本的人権表現の自由等が保障されてゐるものの

  • 第二三条 香港特別行政区は反逆、国家分裂、反乱扇動、中央人民政府転覆、国家機密窃取のいかなる行為をも禁止し、外国の政治的組織または団体の香港特別行政区における政治活動を禁止し、香港特別行政区の政治的組織または団体の、外国の政治的組織または団体との関係樹立を禁止する法律を自ら制定しなければならない。

といふ条項があり、香港特区政府がこれを履行する政府トップとして行政長官を選ぶのだから、その選出に非中国籍の市民が関はつていゝのか、となる。これに対して王永平は非中国籍の香港永久居民は選挙権は有するが中国公民としての責任は負はぬ点で矛盾があるのは事実。たゞそれを見る角度によつて、で一国二制度のうち「一国」から見るとこの矛盾は不合理、だが一国二制度ありき、で基本法に照らせば、この矛盾は(「矛盾があることを矛盾としない」といふような……富柏村註)基本法で内括できることで、この矛盾があるからといつて基本法の条文を「釈法」するべきでない。非中国籍の永久居民の権利と義務が不均衡は、例へば立法会議員の被選挙権(非中国籍の議員は議員定数の20%以内と制限)があり、立法府の議員になれるが中国公民の義務を負はぬ、といふ香港は世界で唯一かかなり稀な体系といふこと。なぜ基本法制定にあたり中央政府は内地の国民の公民権利とのこの矛盾を許容したのか。これこそ一国二制度の国家政策そのもので基本法は多くの矛盾或は特例があるが、それを(かなり無理もあるが)条文としてまとめ、中央政府はこの国家主権を有するが香港の特色ある高度な自治を認めたもの。これが一国二制度の基本であり、その中の一つ/\の条文を挙げて矛盾など論ふことはそも/\間違ひ。更に指摘すれば実は非中国籍だけでなく中国籍の香港市民も中央政府に対する国税の免除や香港の軍事費用の政府負担等、中国内地や他の国の国民に課せられてゐる義務が免れ権利が保障されてもゐる事実。曾鈺成も基本法改正までは求めてをらず矛盾点を指摘し中国籍市民の愛国責任の欠如など指摘してゐるだけだが王永平は基本法の整合性とそれぞれの条文の平衡を保ち非中国籍の永久居民の権利を擁護して中国公民的義務を免除し香港の法律制度と法治精神の原則を徹底することが大切で、これは香港特区政府や中央が憂慮すべきことに非ず、と。行政長官・測量梁は香港と内地の関係をやたら困難な政治問題化する輩がゐる、と指摘するが、國民と公民の一般的な権利と香港基本法に則り永久居民の權利を比較した場合、矛盾があるのが事実で、それが必然的に政治問題化するマイナス作用があることは明白。これが香港社会の和諧を妨げることになる、と王永平。確かに仰る通り。これを日韓密約的に言へば「矛盾があることを以て矛盾がないこととする」か。