農歴九月初六日。朝早く目覚めて「あれ、バーSでお勘定済んでた?」と気になる。店で二杯目の途中から店を出たところだけ記憶がない。結果的にやはりお勘定してをらず。店もお愛想忘れたそうで飲み逃げではないだけ良かつたが。風邪気味。胃痛。別冊太陽「中上健次」読む。もう没後二十年。で蕎麦を茹でて昼に食して午後は半ば転寝しつゝ中上健次の「熱風」と「大洪水」を全集(第十三巻)で読む。いずれも晩期の未完。前者はオリュウノオバからの物語の続きで南米に渡つたといふオリエントの康の息子、タケオの物語だが東京の新宿は二丁目界隈の猥雑さも郷里の路地のエネルギーに比べれば可愛いもので中上健次自身の健康も限界を通り越し筆致も往事には比べやうもなし。物語が散漫は後者(大洪水)も一緒で話が無理矢理、シンガポールへと向かふのだがフィクションとはいへシンガポールの秘密倶楽部ぶりも李光燿ですら笑はせられるのではのでは?といふくらゐ可笑しく折角、物語が第三部で香港に移つたところで未了となつてしまふのが惜しいところ。それにしても廿年近く前にマニラで出くわしたポン引きが中上健次を案内した、と自慢してゐたが、あのときにちゃんと案内してもらふべきだつた。オリュウノオバといへば寺島しのぶがオリュウ役で健次の「千年の愉楽」は若松孝二監督の作品で昨年から撮影してこの秋に公開のはず。今日は中上健次読んでゐるうちに日暮れ。Z嬢とVeuve Clicquotをハーフボトルで飲みコロッケ揚げて飰す。ル=コルビュジェ『小さな家』森田一敏・譯を読む。ル=コルビュジェが年老いた両親のためにレマン湖畔に建てた理想的な小さな家。1945年のル=コルビジェによるこのレマン湖畔の家のデッサン、水色と赤がきれいだが、さういへばチョートク先生に六本木山荘の上から東京タワーをばアタシが鳥渡、下手な絵を描いたら先生に「これにちょっと朱をいれただけでル=コルビジェのデッサンみたいに」といはれたが(こちら)あまりに下手だが確かに。
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