農歴九月初二。香港で数年前、蘭桂坊の横丁に出来た「豚王」といふラーメン屋（こちら）が「行列が出来る」「スープがなくなつたら店終ひ」と評判で今では尖沙咀と銅鑼湾の三店舗体制の由。
新宿で「凪」といふ店が母体で多店舗戦略。いつも混雑してゐてアタシは並んでまでラーメン食べるやうな気力もないので遠慮してゐたが今日の午後、お昼もちゃんと鮭のおにぎり食べてゐたし体調的にはかなり憚られることだが偶然に銅鑼湾の見世のまえ通りかゝると路上で数組待つてゐたが店内覗くと空席あり「一個人可以嗎？」ですんなりと入れてラーメン「豚王」いたゞく。麺の太さ、茹で加減、トッピング、香辛料などかなり細かい注文可。豚骨で煮干しも強烈、といふのは初めてで嗅覚がかなり驚いたが食べ始めると意外と慣れるもの。でもかういふ濃厚スープはアタシは年に一、二度で十分。早晩に太古城。
Ｚ嬢と待ち合せ板長寿司。アタシはちょく／＼板長で会員だがＺ嬢は初。ネタもシャリもいゝのだが、あの板長醤油だけはどうにかならないかしら。リッキー社長お奨めだが甘口でアタシは苦手。それとお箸が最近の「割り箸は環境に良くない」で塗り箸なのはまだいゝのだが焼き魚でも食べるやうな先の細い箸で寿司の握りをこれで食すとシャリが割れてしまつて難儀。普通の割り箸が恋しい。映画『ヘルタースケルター』見る。岡崎京子原作といふだけで岡崎京子ファンのアタシは偉大なる漫画家の容態は？と気になつてしまふ。それにしてもあの作品を蜷川実花が監督、主演が沢尻エリカ、窪塚洋介、桃井かおり、寺島しのぶ……想像しただけで「嗚呼……」。役者的にはアタシの好みばかり。で、想像通り（笑）。それがアタシは最後まで主人公のモデル（沢尻）のマネージャー役の女優が誰だかわからず、が寺島しのぶ。本当に役になり切る役者だがなんで音羽屋と気づかなかつたのかしら。検察の地味な事務官役が映画『花とアリス』の鈴木杏だともＺ嬢に教へられるまで気づかず。ファッションメディア業界の非常に常軌を逸したやうな方々描いてゐるがフィクションとはいへ一番狂気を感じたのは検察の検事。これを演じる大森南朋が大駱駝艦の麿赤兒の息子だからどうのかうの、といふことぢゃなく、この検事の発想といふか物の考へ方が反権力通り越して、の何だか五一五事件に連座しそうで。美容整形クリニックの違法行為洗ふなかで政財界の大物も顧客で、とその巨悪に立ち向かふ姿勢はわかるが手段として検察官が超法規的なのは一寸（笑）。映画の終はり近くに戸川純の「蛹化の女」が流れてきて毀れてゆく人たちの顔がいくつも浮かび、戸川京子も亡くなつてゐるし、みんなが元気に明るかつた80年代を彷彿するばかり。
