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農歴九月朔日。早晩にしばらく前から一飲といつてゐたＯ氏誘なひ観塘。それにしても寂しいのは観塘市街の古い町並みが再開発待ちで風前の灯。すでに雑居ビルの楼上の住人たちは九割方退去済み街頭の店も一つ、二つと廃業してシャッター街に。来年には再開発工事でも始まり数年後には無味乾燥な商業地区に変貌なのかしら。雲南風味。すでに夏の菌類はお了ひだが初秋の酒肴少なからず。アタシも平日にこの食肆に来るなんて珍しいことだが夜もかなり盛況。そこに「あれ、識る顔が」と思つたらカメラマンのＫ嬢がお友だちと。思はず「なんでこんな場末まで」と驚く。歓談尽きず。まさか此処で知人に遭はうとは。見世が混んでゐたこともあり相席。食後に将軍澳にある抹茶デザートに試食しようか、といふ案もあつたMTRでQuarry Bayまで戻り太古坊外の酒場で一杯だけ飲み三更にならぬうち帰宅。
▼カンボジアのシアヌーク前国王、北京で逝去。享年八十九。「まだ生きてゐたの？」といふ感じなのもアタシらにとつて子どもの頃にはすでに表舞台にゐた人で毛沢東や周恩来、金日成、ロンノル、ポルポト……みんなすでに他界してゐるから。そも／＼1970年にロンノル首相のクーデターのときも当時のソ連の首都モスクワに癌の治療。北京、平壌と旅居続け民主カンプチアでの国王でありながらの軟禁、死亡説、国王再任……なんて人生はQue sera seraなのかしら。お世継ぎがプラハでバレエを学び80年代のクメールルージュ崩壊から王制復古までの間はパリでバレエ教へてゐたといふシハモニ殿下ですもの。ところで北京でのお住まひは旧フランス大使館だつた由。今の外交館地域に移る前のフランス大使館か、と一瞬思つたが1970年代から、といふことは更にそれ以前の旧大使館といふことで、となると今の公安部や最高人民法院のある一角となる。