富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

台湾映画「女朋友。男朋友」

fookpaktsuen2012-09-02

農暦七月十七日。快晴。気温は三十度超えるがすつかり秋空で風も心地良し。日曜だがミッションあり朝から広東省へ。広州と深圳結ぶ広深鉄路(GSRC)の高速鉄道に切符なしでそのまゝ乗車可といふ中国工商銀行発行のクレジットカードあり珍し物好きのアタシは早速申請して入手、改札でカード翳すだけで往き先などだうやつて瞬時に捌くのか不思議だつたが、深圳火車站の改札で使つてみると仕組みは(数年前から「金融IC卡」で実用化されてゐたやうだが)改札で瞬時に空席のある直近の列車の二等席(普通車)を座席指定までして印字して発券。それで乗車できるわけだが往き先は、といふとそのまゝ終点の広州まで行くことも可、東莞など途中下車も可、で出札の際にカード翳すことで規定の料金をば機械が読み取り後ほどカードに請求されるやう。つまりアタシが深圳から乗車して途中の東莞で下車すると、その席は東莞〜広州は売られず空席のまゝ。たゞ全席指定でもかなりの客が前倒しで乗つてくるので空席なら誰かが坐るからよしとする中国らしい、日本の過剰な完ぺき主義では理解できないこのシステム。で問題は改札での瞬時の、問答無用の列車・座席指定のため一等席は選べず、また気になつたのは途中站の東莞から乗車した場合に改札機がだうやつて上り下りを判断するのか?だつたが「途中站では使へない」ことでその問題なし(笑)。あくまで始発の深圳と広州東の二站のみらしい*1。それと乗り遅れても後発の列車に立席で乗れるので改札は出発数分前に閉まつてしまひ通路からホームに上客がゐなくなると出発時間前でも列車が出発してしまふのも中国らしくて素敵。ダイヤ通りに運行しないのは心配なやうで、少なくても深圳〜広州間は高速鉄道専用線を走り日本の新幹線のやうに「のぞみ」「ひかり」「こだま」で複雑に抜きつ抜かれつ、がないので数分前に発車しても問題ないのかしら。ミッション終へ早晩に帰宅。キムチ鍋。窓を開け冷房なしの鍋だつたが汗はかくが凌ぐも平気。大河ドラマ平清盛」じつは欠かさず見てゐるが平家の息子ら若い役者が皆同じ顔に見え名前すら判らず。それにしても伊東四朗が白川上皇役であんな大役者にならうとは。てんぷくトリオや電線マン知る世代には驚き、桃の木つんつくつん也。三更に近所の映画館で台湾の楊雅喆監督の「女朋友。男朋友」見る。1985年の高雄から物語始まる。高校で青春謳歌する男の子二人と女の子の微妙三角関係、時代は蒋経国晩期でまだ国民党一党独裁で彼らは夜市で古本売るが実は一番儲かるのは地下出版の民主化運動雑誌。アタシが台湾を初めて訪れたのも1985年の夏、香港からのフライトで高雄の空港で中国に二ヶ月ゐたアタシのリュックはかなり念入りに調べられ「劉少奇選集」出てきて空港預りにさせられた時代(アタシの共産主義書籍はきちんと台北蒋介石空港に移送され受け取れるサービスあり驚いたが)。……で、いきなり1990年の台北で彼らは大学生。蒋経国の死(1988年)で副総統だつた李登輝が総統代行となり台湾は民主化へ始動しはじめるが1949年から一度も改選されぬ万年国会に対して全面改選求める世論高まり学生たちの「三月学連」の頃、この三人もその運動に従事して、それから社会人となり、それなりに成功しての1997年、で2012年のエピローグとなるのだが、このパターンは昨年の大ヒット映画「那些年,我們一起追的女孩」と似てゐるが台湾では知らぬが香港では「那些年」の評判に対して今晩は日曜の三更といふ時間だから、かもしれぬが客席は数えるほどの閑古鳥。「那些年」は日記作家の九把刀の、誰でも経験してゐさうな青春でお気軽な馬鹿馬鹿しさも盛り込まれ主人公の新人俳優・柯震東の人気もあつたが、それに比べこの「女朋友。男朋友」は時代が青春映画の観衆よりはずいぶん上の今の四十代前半の半生記で香港ではこの1980年代からの政治史があまり理解されないだらう、役者は今でも「藍色大門」での少女役の印象が鮮烈な桂綸鎂が小泉今日子的に実に好演、白先勇原作の「孽子」テレビドラマ化(2003年)に出てゐた張孝全、「艋舺」の鳳小岳だが同性愛絡めた三角関係はかなり非日常的、正直言つて三人の関係が理解に難しく、青春映画にありがちな共感とか自分の投影はまず無理……さういつたことでポピュラーな監督である楊雅喆の脚本でもこの程度の客の入りなのかしら、と思ふ。

*1:広州東から一つ先の広州站行きの和諧号もあるが少数で少なくても広州東から広州まで乗る珍客はゐない、といふ前提かしら。