富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

勇士凱旋……

fookpaktsuen2012-08-18

農暦七月初二。愛国とはそら恐ろしい。あれほど中共嫌ふ香港の民権活動家たちが五星紅旗掲げ誇らしげ。釣魚=尖閣に強硬上陸で日本の官憲に捕まり叱られて強制送還されたが新聞の見出しは「勇士凱旋」*1。ちなみに那覇から香港に戻るフライトは香港航空でCクラスの厚遇。那覇で拘禁中も彼らのことだから「内地で共産党に捕まったら、こんな厚遇ではないだろうな、けけけけ……」とか笑つてゐそう。……でマカオ二日目。昨晩はマカオソウルでの葡萄酒は未だ良かつたが六記でのビールが決めてとなり宿に戻り三更になつたころに爆睡。ソフィテルのあの腰が悪くなるほど柔らかい寝台で今朝起きたら七時半。さすがに朝食も厭ふほどまだ空腹覚へず正午まで客室に隠り三日分の日記綴りソファに臥せて文芸春秋九月号読む。さきの戦争の特集で

平和がいいに決まっている。だが日本人の選んだ平和は、人間を畜生たらしめる危険を孕んでいた。自分さえ良ければいい。先のこと、他人のことは考えない。農を棄て、食の様式を棄て、地震列島を原発列島にして、基地は近くにさえなければいい。危険は他人任せ。(略)今、かつて戦争を特別な天災のように受け止めていた時と同じ。震災と原発事故を仕方なかったこととひっくるめて片づけ、先へ進もうとしてはいないか。このまま進めば、滅びるより他はない。

野坂昭如苦手な芥川賞で受賞作の鹿島田真希『冥土めぐり』読んだがやつぱり何が良いのだかさつぱりわからない。高樹のぶ子の「受賞作『冥土めぐり』は宗教的な暗示が色濃い作品だ。同時に経済的な豊かさを剥ぎ取られてもなお虚飾と虚栄の夢を捨てられない浅ましい人たちを描くことで、経済力以外のアイデンティティを持ち得ていない日本の縮図としても読める」なんて書評に小説からこゝまで読み取れるのか、村上龍を除く選考委員八名が評価するのだが……選考委員に石原慎太郎がゐたら何を語つてくれたかしら。風呂に一浴して退房。路線バスで三盞燈の円環。Z嬢所望で雅馨緬甸餐庁に昼を飰す。あっさりと美味い。バスでセナド広場に戻り邊度書店。原書で、って日本語で読みたい伊東豊雄先生の“Generation Order”といふ中譯本あり。酷暑嫌ひ裏道の喫茶店に入り読書。路線バスで路環。エッグタルト一つ頬ばりハーバー沿ひの小さな公園のベンチで読書。やはり立秋を過ぎ風は心地良い。路線バスの26系統といふ氹仔をぐる/\周遊でポンテ16に戻るのに一時間といふ路線バス好きには垂涎のルートあり、このバスで市街に戻ると晩六時。十月初五日街の黄枝記粥麺専家でいつもなら雲呑麺だが一昨日から此処で雲呑麺食べると四食目になるので菜遠排骨飯。粥麺家といひつゝ侮れぬ実に美味なる飯物。昨晩に続きマカオソウル。今晩はZ嬢は飲まないといふのでDouroのQuinta do Castro 09年の半瓶。ソフィテルに戻り荷物引き取り路線バスでフェリーターミナル。午後九時のジェットフォイルで香港に戻る。
蘋果日報の蘋論で碩学李怡先生「不要讓保釣民族主義綁架我們的心智」(こちら)読む(生果日報テキストはbit.ly/NRNElb参照)。

前天在《蘋果日報》頭條「登陸釣魚台」的網頁留言,有一位女士這樣寫:「我係香港人,我只愛香港,我只關心香港土地。當香港土地快被掠奪(新界東北新發展計劃),當香港下一代快被洗腦……當我們連香港人這身份都不容存在之際……我想問這些保釣團體,喺呢個香港關鍵存亡之時,仲喺度幫中國打飛機?代表香港出醜?打着法西斯政權的旗幟?」
這不是個別看法,在所有關於保釣新聞的報道評論中,網頁留言最多類似看法。這說明保釣勇士雖勇氣可嘉,但這次行動在香港目前的境況下不僅不合時宜,而且對正在奮起維權的社會運動,起着傷害作用。(略)
保釣行動顯示我們愛國但不愛黨,也顯示我們真愛國反射中共不是真愛國。但實際上,我們的國早已被中共黨騎劫了。對殘民以逞的國家,揮國旗、唱國歌並非表示愛一個民權之國,而只表示愛那個極權。黨綁架了國,愛國綁架了民族主義民族主義綁架了保釣。愛因斯坦說:「好比痲疹,民族主義是嬰兒病。」香港保釣人士和許多市民正是在出痲疹。(略)
這次保釣行動及其教訓,喚醒香港人的不應是民族主義,而是不應該被民族主義綁架,要自覺守護香港已有的文明和我們的心智,以自主和維權來對抗愛國主義侵入。

今回の釣魚=尖閣が中国領とする保釣運動は香港の現況のなかでは時宜に合はず民権問題など社会運動意識が高まるなかではむしろマイナスになろう、と李怡先生。民族主義に走らず深い思慮で民権を高め愛国主義の侵入を防ぐべき、と。御意。

文藝春秋 2012年 09月号 [雑誌]

文藝春秋 2012年 09月号 [雑誌]

*1:「上陸団体は「プロ活動家」」東京新聞八月十八日の記事(こちら)が興味深い。「尖閣問題で強硬姿勢をみせる一方、中国首脳の香港訪問時などに過激なデモを行い、(「政府支援は受けていない」としつゝ、略)反共活動をしながらも尖閣問題では中国政府と利害が一致している。中国の国政助言機関、人民政治協商会議の香港代表の一人は本紙の取材に「昨年、百万香港ドル(約一千万円)を寄付した」と明かした。」と香港から今村太郎記者