農暦七月初一。台風のシグナル８は朝七時前に解除されたやうで九時半のマカオ行きのジェットフォイルは予定通りかしら、テレビでは外港フェリーも順次運航再開と出てゐるだけでTurboJet社のホットラインに電話しても「対応時間は午前九時から」と、これでホットラインかよ、と思ふが予定通りＺ嬢とフェリーターミナルに往くと運航再開されてをり混雑覚悟したが、こんな天候で（といつても雨風はひどくない）港澳往来あきらめる旅客も多かろう、未明から早朝の便が停航でも捌けてゐる。たゞフェリーは外海避けてランタオ島の北側ルートをとり珠江河口に出ると、まぁ揺れるわ、揺れるわ。ジェットフォイルなので荒れる海を高速のまゝ航海するからスリリング。アタシは船の揺れは平気だがＺ嬢の隣席の客が船酔ひで嘔吐。船内に入つてきたときに威勢のいゝ、賑やかな客に逆に船酔ひが目立つやうに思へるのだが。通常よりマカオは風は強いだけ。ポンテ16のソフィテルに下榻……、さう、そのまえにホテル近くの榮甡𧐢油荘でＺ嬢がオイスターソース購ふ。大手の李錦記の隣だが、この榮甡𧐢油荘はかなり高齢の主人一人が経営でＺ嬢の話では戸を閉めてゐるときばかり、今日は本当に偶然で開業してゐて良かつた、と。正午のチェックイン＆アウトの混雑する時間にフロントはわずか４人でインはそのうち１人が対応。予約無しで部屋探しの客がアタシの前にゐて部屋のタイプから料金など見てゐるから時間がかゝり通りかかつたマネージャーに苦言するとアタシのバウチャーを見るが「わずかな追加料金でアップグレードできますが」などと宣ふので
「さういふことぢゃなくてチェックインの効率を上げてくれ」と苦言したが埒開かず。で漸くチェックインとなつたが、そのフロント係も最初に「わずかな追加料金でアップグレードできますが」と言ふので「アンタらはアップグレード、アップグレードって無料ならアップグレードもいゝが有料なら、そんなことよりチェックインなど能率をアップグレードするべき！」と叱る。部屋に旅荷解き路線バスで氹仔。百年一日の如くXiolas O Castiçoに昼を飰す。相変はらず無聊の葡萄牙人客ばかり。すつかり葡萄酒（Paulo Laureano's Clássico 2010）に酔ひ市街買物のＺ嬢と別れ市街の鳳城麺家に雲呑麺食してから宿に戻り午睡。晩暗くなつてから出街したがMacau Soulが開いてゐてビール一杯のつもりが、やはり葡萄酒が飲みたくなりオーナーD氏の勧めでAragonês da Peceguina 09年飲む。マカオのポルトガルワイン供す酒場で英国人のオーナーＤ氏に川瀬巴水の版画見せられ巴水を語る、といふのが何とも酔狂で趣きあり。さすがに腹が減り六記粥麺に雲呑麺と乾炒牛河を飰す。昨日から雲呑麺は三食目。
▼「封殺青天白日滿地紅旗、只現五星旗、內地報章登島照片造假」と……やつぱりね、といふ感だが一昨日の香港の愛国人士釣魚（尖閣）上陸で内地の新聞はその写真から台湾の青天白日滿地紅旗をば修正して紅旗に捏造（嗤）。ほんと中共の、なんて国家主義なのかしら。
▼一昨晩遅くに香港で行政長官測量梁が日本の在香港総領事「召見」で香港の保釣人士が逮捕、拘留されたことにつき遺憾表明し彼らの身柄安全を求め「重申釣魚台自古以來是中國領土」と言及の由。当然のやうにこの滑稽ぶりに陶傑さん噛み付き（蘋果日報）「二年前にマニラでのバスジャック人質事件で香港人殺され行政長官貧官曽がフィリピン大統領に抗議するといふ、一市長の分際で外交部なみの越権行為あり嗤はれたが今回も同じ。陶傑さんの指摘通り総領事は大使に非ず*1総領事は大使が外交職権あるのとは異なり領事業務、公証等が仕事であり、重慶騒動で王立軍が成都の米国総領事館に政治庇護求めても成都総領事はすぐに北京の大使に判断仰ぐのと同様、外交は総領事の業務外。陶傑さん曰く「釣魚台は古来、中国領土で香港市民は長年、この島に対して強い感情を抱いてゐる」と測量梁が日本総領事に告げたところで国際法上は釣魚台は尖閣諸島として日本に属し、外交は条約の協議と理解による専業の世界で「古来」なんて言葉は通じず、それなら香港政府の礼賓府（行政長官官邸、旧総督府）も「かつては此処は日本駐香港総督磯谷廉介が家主だつた」とその所属を主張するやうな滑稽。「釣魚台に強い感情」があるのと同様、日本のテレビドラマ、アダルトビデオ、寿司にも香港人が強い感情抱くからと言つて東京や北海道を香港領とはいへないだらう、と陶傑先生嗤ふ。
*1:現任の隈丸総領事は立場は総領事だが肩書きには「大使」で、これは日本の外務省での処遇のことで外交的には総領事
