富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

東莞に遊ぶ

fookpaktsuen2012-08-08

農暦六月廿一日。朝七時過ぎに旺角の中旅。東僑客運の07:25発東莞行きバス乗車。九龍塘から沙田を周り客拾ふが乗客僅かに四人。08:30発の便は満席となつてゐたが。皇崗から中共に入る。外国人の窓口開いてゐるのは一つだけで他の乗客は原住民なのでアタシだけ遅れ申し訳ない。08:30に皇崗発で高速道路走り09:40には東莞の東城。高架路から深圳市街(福田)見下ろすに立ち並ぶ高層オフィスビル圧倒されるが、これだけのオフィスビルに企業が入りビジネスがある場合、もつと人通りも車の出入りもあつて当然だがビルがあるだけで地下道があるでもないのに路上に人は疎ら、公共交通機関もバスだけの場所で不便。不思議。郊外には巨きな豪邸が林のなかに点在。企業で成功したのかしら、13億人の市場はあるが企業の数も多く殆どの企業が既存の製造業、サービス業の後追いで深圳を拠点にしても流通も悪く企業がさう易々と収益あるとも思へない。かといつて全てが党や軍、旧国営企業の利潤の横取りばかりのはずもなく……これも不思議。ロラン=バルト的に「未知」をたゞスケッチ続けるしかないかしら。東莞は無風。暑い。東城路の星巴で一つ打合せ。星巴珈琲、香港ではあまりありがたさも感じないが、かうして外地にゐると世界中ほぼ同じ価格で同じ珈琲と寛げるソファと清潔なトイレを提供してゐるといふことが、これもグローバリゼーションで誉められることではないが、一言でいへばオアシス的に「ありがたい」存在。Wi-Fiがつながりi(上り1.96、下り1.50)Phoneの充電もできて一時間でも二時間でも過ごせるのだから。スタンダードでのその提供。かういふのを最近の流行語では“hea”といふのかしら。香港でよくわからないが若者の間で「漫無目的地打發時間,通常是指消遣或聊天」を“hea”*1といふのださうな。強いていへばWi-Fi提供されても紅色星巴なので顔本、呟板、香港の蘋果から信報まで新聞、将又アタシの「はてな」の日記までつながらないのだが。ところで星巴って珈琲の価格は世界中ほゞ同じだが第三国へ行けば行くほど賃貸も労賃もコストかゝらないわけで収益あがるのかしら。此処の星巴だつて3フロアで席の確保も難儀する香港ではあり得ない。近くの美膳食坊といふ瀟洒な潮州料理で昼餉。魚ベースの白湯のこのスープなんて呼ぶのかしら。浅蜊のおぢやはどの客も頼むほど名物。食後、東城を車でぐるりと周り東河渡り石碣へ。広州、そして経済開放以来深圳の勃興で東莞は深圳のセコンド的な生産地帯と思はれがちだが開放以前の国営企業時代からこの東河下流のこの一帯は製造業が盛んで殊に石龍は陶瓦などの窯業が一流だつた由。現在は電子部品が主で中国各地、ことに湖北、湖南の両省からの若い職工多し。東莞で一泊なら東城選ぶべきだが、その非常に今の中国的な生産地帯の風景を見たいと石碣の富盈酒店に下榻。酷暑にて部屋に留まり無聊も幸いと気晴らしに読書。晩に市街漫歩。殺伐とした街だが晩になると日班と夜班の交代で多くの職工たちが工場の、工場は電子部品なので煙突があるでもなく巨大な物流倉庫にしか見えないのだが、工場の周囲を往来する数を見ると、この工場の中に数千人単位が働く規模の大きさがわかる。工場は旧正月除き24時間のフル回転で街は夜班が朝早く非番となれば、また「朝日のあたる晩」の光景のなるのかしら。毛沢東の故郷の湘菜の食肆多いのも湖南省出身が多いから。その一軒で軽く夕餉を済ます。工場に囲まれるように商業区あり職工相手のファッション、携帯電話、そればかり……の小売店が並び(それでも「美顔」のサービスがあつたのが興味深い)、それ以外はすべて百貨店といるかスーパーといふかイトーヨーカドー的な店舗に吸収されてゐる。こゝで彼ら、彼女たちが生活に最小限の消費が行われ、それ以外は貯蓄、故郷への仕送りにまわる。この工場とその宿舎、職工たち開いての商業区を除くと何事もないやうに市街はひつそりとしてゐる。
▼手元の人民元紙幣を何気なく見たら手書きで法輪功のPRあり。法輪功が国家転覆のテロ集団として非合法化される中国で、このテがあつたか、と思ふ宣伝手段。カネは自然と流通するのだから。メッセージと連絡先がそこに。

*1:hea是香港流行用語,使用者多為青少年。有指「hea」一字之正寫為「迆」(又作「迤」),此字粵音本為「以」,方言本義應為站或走不穩。填詞人黃偉文則把「hea」音創造新字為「辶(辵部偏旁)上作喜」。「hea」音可能源客家或潮州音。此音本此詞語大約於二十世紀九十年代末開始流行,於二十一世紀初,果汁飲品利賓納(Ribena)在廣告中使用此詞語,相信是「hea」首次在大眾傳媒正式出現。同一時期,香港商業電台節目「芝see姑bi Family」經常使用此字,令此字更廣泛流通。