農暦六月十九日。早晩に太古のUA映画館 Director's Clubで“The Dark Knight Rises”見る。香港でもジョーカーだと自任する気違ひさんが映画館襲ふのを警戒し定員12名と入場制限厳しい Director's Clubを選んだ……といふのは冗談で夏の休暇もなく働く身でたまにはHK$175だかで優雅にのんびり映画鑑賞もいゝかしらといふ自分へのご褒美哉。12名限定でファーストクラス並みのリクライニングソファに寛ぎ
（映画館が寒いのでアタシはマフラーとカーディガン持参の上にブランケットまで借りたが）、飲物とホットドッグ、ポップコーンがついて（しかも座席まで運んできてくれる）……だからリーズナブルだらうし丸の内ピカデリーで一般の入場料1800円だと思ふと、この高級映画館がいかに安いか。といふわけで蝙蝠侠映画。アタシは最近のこのシリーズの暗さ、深刻さが苦手で（だいいち笑ふシーンなんて一つもない）やはり英国貴族趣味で執事がゐるうえに「ロビン、ロビン！」とアタシは昔の実写ドラマ版の広川太一郎のあの甲高い声がトラウマになつてゐるの鴨しれないが、やはり豪邸にロビンと執事と暮らす、あのハレが好き。確かにこの映画にもゴッサムシティの若い警官（ジョン＝ブレイク）がロビンをば暗示させる役柄ではあるのだが。それにしてもこんな空想モノが（少なくてもアタシが子どものころのバットマンの世界は非現実的な悪の蔓延る世界だつた）今ではゴッサムシティの破壊や地下に閉じ込められ、避難所に身を寄せる市民の姿も911や311での悪夢をば彷彿させゴッサムシティをば支配下に置こうとする悪党たちが空想どころかテロリストだとか何だか維新だとか現実と被さつて何だか薄気味悪い。「20世紀少年」もさうだが「地球滅亡をもくろむ悪の組織」や東京を破壊しまくる怪獣やロボットがゐてもウルトラマンなり仮面ライダーなりバッドマンなり正義のヒーローがゐて、現実にはそんなヒーローはゐないのだが少なくとも「地球滅亡をもくろむ悪の組織」の存在や東京の破壊がフィクションだからこそ許容できたもの。それがフィクションに思えないから。となるとどうすればいゝのかしら。ゴッサムシティでは市民も警察も果敢に悪と戦つてゐたがバットマン無しには平和は再来しなかつたのだから。そして「核」のこと。ゴジラも核実験の徒花だつたが今回のこのバットマンは中性子爆弾。このストーリーでの中性子爆弾の処理の手法については気になるところ少なくないが（ストーリーに関はるので書かない）、最後のゴッサムシティ沖での爆発と「きのこ雲」……今日が広島の原爆投下の日だつた。ところで米国ではこの上映に自称ジョーカーが出没して惨事となつたが、よく／＼考えると今回の作品にはジョーカー出てこないわけで、あの容疑者はそれを知つてゐたのか知らなかつたのかしら。今日は昼の短い時間と映画終はつたアトもジムでランニング。夜十時なんて下手すると寝てゐる時間なのでジムに来ることもなかつたが、この時間がこんなに繁忙とは。やはり世の中かなり夜型。日曜日の午前中でさへがら／＼なのに。
▼陶傑先生が蘋果日報の連載随筆で中共の「愛国教育」と倫敦五輪に見る英国の文化について連日執拗に語つてゐるのが面白い。倫敦五輪の開幕礼（「オープニングセレモニー」は東洋的な開幕「式」でなく典礼なのだ、と陶傑氏）で英国の子ども、看護士、医師が踊る場面？あつたさうだが（アタシは見てゐないので知らない）これも前回の北京五輪開催の中国に対する当てつけで（笑）英国が社会福祉として医療無料化など達成するなかで、経済的には一度は困窮した国家にこれが出来て、なぜ経済大国の中国は人民に満足な医療サービスの提供もでないのか、「因為底層的民工和低收入者，月入一兩千，社會腐敗，到處貪污，人民只可以死，不可以病，生命毫無保障」と嘆いてみせる。国内で人民への福祉も満足には程遠いのに中国の外貨準備高は天井知らず、米国の国債など買ひまくるが、もしこれを放出すれば米ドル安。人民元の価値が低すぎることは米国と他国も想ふところ、もし人民元高となれば中国の輸出に大打撃。中国製造の製品は高くなり工場が潰れ中国の不安定と混乱は必死。米国債を売却せねば現金も枯渇する状況で、中国政府は内需拡大と人民に呼びかけるが医療費高く医師不足（それに公共福祉の不十分）で人民は医療、健康のためにも結局は貯蓄に励み何かあれば医者に袖の下をば渡せるやう、と。こんな状況でこの悪循環が中国で医療一つとつても英国の水準には程遠く……となる。「奧運倫敦開幕禮的英國導演，很了解中國問題，所以他膽敢用英國的醫療福利成就來開場，這可把愛國的中國憤青氣炸了肺。但是暴怒歸暴怒，他明玩你一把，英國人判斷，你又能怎樣？你有了錢，還是會把你的王八蛋兒子送來我們的貴族寄宿學校，這是「倫奧開幕式」敢公然「辱華」的理由。」
