富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

蘇州崑劇院「南西廂」

fookpaktsuen2012-06-15

農暦閏四月廿六日。早晩に銅鑼湾の未だ混んでゐない板長寿司に飰す。暗くなる前に一人で寿司を撮む心地よさ。尖沙咀。久々にペニンスラホテルのバー。赤葡萄酒一杯。此処のハウスワインサンテステフのCh. Calon-Segurのセコンド、La Chapelle de Calonで07年。これで一杯HK$170って高くないか。日本なら2,500円くらゐだらう。香港文化中心。中国戯曲節始まり蘇州崑劇院で「南西廂」*1観る。崑劇といへば、でロビーで白先勇先生の尊顔拝す。崑劇の、否、京劇も含め書生といへば当代一の俞玖林が張君瑞役、相思相愛の崔鶯鶯は朱瓔媛、でこの芝居の核となる紅娘は呂佳が出色。この芝居、都へ科挙の試験に上がる書生が古刹、普救寺に遊ぶところ母と難を逃れ寺に暫居する美貌の娘と出会ふが母にこの恋が赦されず、とそれだけなら何の変哲もなき恋愛物だが二人の間に入り母堂にも何かと機転効かす奴婢の紅娘の役柄、その機転、感情の起伏がこの芝居の面白いところ。殊に「佳期」(第七場)で二人が遂に思ひが通じ鸞交鳳友、二人が睦まじく舞台から消えると、その同衾を待つ間の紅娘の、幼くも艶っぽい歌と語りの、これが妙。大和屋相手に牡丹亭で柳夢梅演じた俞玖林もそれなりに老けたが、この張君瑞役では「聽琴」の歌が見所。ところで鶯鶯の母が頑なに二人の恋を嫌ひ最後は渋々二人の婚約認めるが条件として婿にさつさと都に往き科挙に受かり官吏となつて戻つて来い、それまでは娘を此処に残し……といふ叱咤は当然。正直言つて旅の途中のこの寺で美貌の娘見初めて花鳥風月愛で琴を奏で鶯鶯に恋い焦れるばかりの、この軟弱な書生、鶯鶯見初めてから全く勉強もせず、こんなのではとても娘はやれまひ。

*1:《南西廂》為明代李日華改編王實甫北雜劇《西廂記》之傳奇。書生張君瑞出外遊學,路過普救寺,便作一遊。崔相國夫人和女兒鶯鶯為亂馬所阻,暫居普救寺西廂。張生在遊殿時與鶯鶯相遇,兩人一見鍾情。賊將孫飛虎兵圍普救寺,欲強索鶯鶯做押寨夫人。老夫人無奈宣告「但有退得賊兵者,將小姐與他為妻」。張生修書請白馬將軍杜確前來解圍,然老夫人失信,只准兩人結為兄妹。張生為此害相思,紅娘受小姐之命多次探望。一天,小姐更約張生跳牆相會。老夫人知道後拷問紅娘,可是木已成舟,只能答應婚事,但逼張生上朝應試,得官後再來娶親。後張生狀元及第,與鶯鶯終成眷屬。