富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

肇慶粤劇「包公還硯」於新光戯院

fookpaktsuen2012-02-17

農暦一月廿六日。眼の回るやうな忙しさ。物事を即時、判断、方向決定のやうな案件続く。強制終了で黄昏にシティガーデンホテル地下のバーでカルスバーグ二杯で脳冷却してから寿司加藤。軽く寿司つまみ新光戯院。肇慶市粤劇団の公演。今日から三日間。これでこの劇場の本当の千秋楽。毎月HK$100万を4年に渡り払ひ続けてくれる酔狂者さゑゐれば存続可の由。この香港で唯一の、もしかすると華南唯一の粤劇常設館が閉まると此処「も」基督教の教会になる由。北角や旺角で一等地のかなりの不動産が教会に。信者の寄進だけでなんでそんなに収入があるのかしら、無税だし、で不動産購入してゐるのだから地産獣も真っ青。で肇慶市粤劇団の今晩の演目は「包公還硯」。江戸が助六なら上方が曾根崎心中が如き肇慶のご当地もの。肇慶といへば端渓に次ぐ中国の硯の名産地で山水画の如き七星岩が馳名。この物語は北宋の名丞相・包拯(包青天、包公)が肇慶の名硯その名も七星硯を巡りその硯をば有す正直な民草と、それを我が物にしようと企む権力者の間で正義に徹し悪を罰す、その物語。肇慶の劇団が地元劇で、包公演じるのがこの劇団のスターで香港でも粤劇好きのオバチャンたちに超人気の李秋元、しかも新光戯院のさよなら公演とあつては盛り上がらぬはずもなく開演前から凄い陽気。この劇場で芝居が始まるだけで北角の市街がぱっと明るくなる、それは巴里のオペラ座でも維納でも一緒だらうが、どの町でも昔の映画館はそんな場所だつたが、これが無くなり街角の大厦が信者以外には無用な教会になると思ふと寂しいかぎり。この最後の公演の舞台を眺めながら粤劇もいゝものだ、と今更ながら勝手なことを思ふ。広東語なりの何とも音韻が、このテの勧善懲悪の舞台劇として素敵。こんな粤劇の常設館が近くにあつたのに数へるくらゐしか訪れず残念なこと。それにしても李秋元といふ役者の滑舌と歌曲の上手さ。脇役までじつにしつかりとした演技が見事。先週の京劇はいつたい何だつたのかしら。李秋元のファンに溢れ芝居跳ねた舞台では今晩は特別の計らひで秋元ら出演者と誰でも舞台で記念写真だといふ。最終公演は明後日。もし誰か毎月HK$100万を4年に渡り出す酔狂者さへゐれば、この劇場は存続可の由。
▼昨日の唐“紅酒”英年の豪邸地下宮建造醜聞で唐不利となつたら民建聯の土共、隠れ中共党員の曾鈺成が立候補に色気見せ、一旦は時期尚早と語つた前保安局長のレジーナ葉劉淑儀も出馬再考の由。両者とも2003年の基本法23条治安立法の舌禍で前者は民建聯党首辞職、後者は保安局長離職となつたが今では立法會議長、行政手腕は一流で民望高き議員として面目躍如。交渉上手の曾鈺成は予想以上に泛民主の受けも良く出馬なら測量梁にとつては唐紅酒より手強い相手。唐相手ならまだ勝ち目あつた測量梁もこの急展開に無問道。但し興味深きは曾鈺成の師匠たる呉康民が弟子の出馬に早々に苦言呈したこと。いずれにせよ測量梁の敵手が曾鈺成となれば隠れ党員同士の対決でさすが中共一党独裁で目出たし、か。