富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

北京京劇院梅蘭芳京劇団「趙氏孤児」

fookpaktsuen2012-02-10

農暦一月十九日。曇。早晩にFCCのラウンジで軽くパスタを夕餉としハイボール一杯飲み書き物などして今晩は香港芸術節で北京京劇院の芝居あり時間ぎり/\で尖沙咀の文化中心に滑り込み。北京京劇院であるから盛況なのはわかるが文化中心のロビーがやけに華やか。ガイジンも多いし、やはら目のキラ/\とした青年……といふかおネエさんたちにこんなに京劇って人気あつたのかしら?と訝しいところ。でもう開演時間(十九時半)なのにまだ会場にもなつてをらず「ん?」と思つてロビーのポスター見たらLyon Opera Ballet……げーっ!!!、どーりで姐さん比率が高いのか、とそんなことに感心してゐる場合ぢゃない。北京京劇院は中環の市大会堂。さつきまでゐた中環……慌てゝスターフェリーに。すでに開幕してゐても昔なら市大会堂から歩いて1分のスターフェリーが今では歩くと15分くらゐ。まつたく不便な埋め立て。で三幕目に間に合ふ。さう/\今晩の芝居は「趙氏孤児」(あらすじ)で有名な芝居だがアタシは通しで見てをらず(陳凱歌監督が昨年だか映画化もあり)。北京京劇院の梅蘭芳京劇団であるから(団長の梅葆玖は来港せず)盛況。今回は今日から三晩、京劇の四大髭生の一人、馬連良(1901〜1966)に因み馬連良の得意とした趙氏孤児」「十老安劉」などの上演。馬連良については http://zh.wikipedia.org/wiki/馬連良 を参照(←ちなみに中国語版のヰキは「中国の特色あるヰキペディア」で(笑)他言語とのリンクなし)。不世出の役者だが文革で非業の死を遂げる。今晩は馬連良の当たり役だつた「趙氏孤児」主人公・程嬰(写真)を馬派の老生・朱強ら演じるが、今晩の注目は何といつてもこの物語で政変で一族郎党命奪はれた趙家で、程嬰らの命がけの救出で唯一生き残つた嫡男の趙武=趙家孤児を演じる李宏圖。葉派の小生の代表的な役者で今回の来港はこの人が梅蘭芳京劇団の団長。十五歳の未だ声変はりしてをらぬ(数へ年なら十三歳)趙武を見事な高音で歌い上げ、さすが一流の小生(若役)。この趙家孤児が親の敵と政敵をば討つ物語。宮中からのこの孤児救出はまるで勧進帳、この嫡男探しに家来が我が子身代わりに差し出し相手の悪丞相に殺される場面はまるで熊谷陣屋、でその子が成長し……は義経千本桜のやうで面白い筋だが何といつても敵の悪丞相が何の因果か事実知らぬまゝ、この孤児をば養子にとり育て秘伝の武術伝授し、それで最後は自分が殺されるといふ筋は大変よく出来てゐる。あまり中国の劇を見てをらぬアタシがいふのも何だが、これほどの一流の劇団でも見てゐて気になる点は少なからず。歌唱はいゝとしても所作が、目配りから手指の動き、足の運びまでどうも雑。馬連良や梅蘭芳らの舞台見てをらず何とも比較できないが歌舞伎に比べても主役級から脇役まで所作が雑。村上湛君が勘三郎(先代)の足の指から足裏の動きまで語つてゐたが、そんなものは今日の京劇で全く期待できず。客も「ここぞ」の歌や動きで拍手するが、ワイヤレスマイク使用どころか音量調整もありと推へ、何だか今回のこの来港公演はちょっと粗さあり。鉦や太鼓の鳴り物、歌声の大音量がスピーカーからうるさく耳栓して観劇の三時間半。
▼作家の大江健三郎君ら原発立地自治体首長宛に停止中の原発再稼働させぬやう求める要請の由(朝日)。昨日、外国特派員協会で記者会見。原発容認の読売新聞ですら今朝の朝刊(社会面)にベタ記事で報じたが原発再起動に慎重ななずの朝日新聞は朝刊では、まさかの特オチ。社会部がこの会見、取材すらしてゐなかつたらしくネット版には記事になり夕刊でフォローだとか。朝日といへば好評の連載「プロメテウスの罠」の刊行は朝日新聞出版にあらず学研の由。朝日新聞の連載なのに、ねぇ。
重慶騒動。続報。渦中の薄熙來市長市共委書記は昆明視察は熱り冷めるまでの外遊かしら。雲南日報それを伝へるが地元の重慶日報に記事なし。米総領事館駆込みの副市長には今月初めに精神疾患あり憂鬱症で通院と医師の診断書が公開され(かりに事実でも公開されるべきものか)北京中央は副市長は自発的に米総領事館から出てきた、と説明(まさか……)。薄熙來が大連市長のときに大連が都市開発、大型ビル建設ラッシュ迎へ弁護士(solicitor)である薄熙來の妻はその不動産売買の手続きで億の収益があつたといはれ、これが彼女が薄熙來の妻であることで此処を通せば開発やビル建設が批准され易いといふ、事実上の賄賂ではないか、といはれる疑惑。また二人の息子、薄瓜瓜は、瓜瓜なんていふと橋本治桃尻娘」瓜売小僧みたいだがさにあらず、英国に留学で夜な夜な派手に遊び浮き名を……と書くと単なる馬鹿息子、だが瓜瓜は祖父が薄一波(故人)なら英国の貴族学校といはれるハーロー校(ヰンストン=チャーチルの母校、ハリーポッターの撮影にも使はれた、あそこ)に大陸から初の留学生で(勿論、父の政治力と母の財力によるが)、オックスフォードの政治経済哲学系卒業して現在は米国でハーバード大学ケネディ学院に在籍と頭も良い(はず、これもコネ?)。だが父に似たのか派手好きで北京では米国大使公邸でのパーティに燕尾服で赤いフェラーリに乗つて現れたとか(WSJ紙の記事)、同じハーバード大学ではMBAに留学中の、これも祖父が中共元老・陳雲で父が国家開発銀行総裁の娘と付き合つてゐるの、別れたの、と話題絶えず。それにしても中共元老の子、孫が好き勝手のほんととんでもない国である。でこの息子の素行も含め薄熙來が話題に。