富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

先代三木助「芝浜」女将は杉村だよ

fookpaktsuen2012-01-03

農暦十二月十日。曇。蘋果日報一面は香港警察の「女性の」男性警官。「性同一性障害」って言葉はアタシはどうも嫌ひ。「女っぽい」といふのも「女」といふのがけして一つのカラーではないと思ふと使ふのが厭はれる。別に女な男、男な女がゐてもいゝのだし、それが警察でも八百屋でも何でもいゝのだが香港警察がさりげなくかういふ警官を受け入れてゐるのは大したもの。でも警察なんて軍隊も一緒だがホモフォビアなやうでゐて、とてもホモな世界だらうし「男性な婦警」なんて婦警のマジョリティではないかしら、澤山ゐらつしゃる。正月休み明け(昨日は元旦が日曜で代休)でいきなり大忙し。帰宅して晩に雑煮飰す。NHKの「新春東西大笑い」だつたか、で久々にケーシー高峰師匠の医事漫談。真骨頂。ビデオで談志師匠の「芝浜」、2004年だか、の今となつてみれば晩期の「芝浜」を見る。上手い、だが「たかだか」落語の話をこゝまで昇華させても……といふ気もする。人間の業といふが、それほど「芝浜」とてあくまでお笑ひであつて現実味などない話、それをこゝまで昇華させることが何なのか。アタシは先代三木助師匠の、くらゐが好き。改めて聞くと御上さんが杉村春子。談志師匠ほど濃くするならアタシは寧ろ文楽で、って黒門町ぢゃござゐませんよ、人形浄瑠璃文楽で「芝浜」を見たほうが面白い気がする。
エコノミスト誌の北朝鮮記事が凄い。まづ北の将軍様が普通に病死されたことを厭ひ(こちら)次に若き大将様に「ベッドの上では死ねぬだろう」とご祝儀(こちら)で最後に悪人でも「お悔やみ」(こちら)で結ぶ。日本のマスコミもこゝまで上出来だと嬉しいのだが……と日本のマスコミに期待しないでもエコノミストとか読んでゐればいいのかしら。日本の悪人でこのエコノミストのお悔やみで取り上げられるとしたらナベツネ大勲位あたりか。
▼朝日の連載「プロメテウスの罠」で実は文科省保有してゐたSPEEDI放射線情報につき官邸も知らぬまゝ在日米軍からは外務省の北米局若手官僚に「支援のため原発情報を」と三月十四日に打診があり各省庁でたらい回しの挙句、文科省の担当部署に行きつき、そこからメールでこの外務省の「米国さん」にSPEEDIの情報が届き米国さんはそれから一時間毎にこのデータ受け取るのだがデータ量も多く面倒なので米軍宛に自動転送にしてゐた由。その間、官邸では菅丞相も枝野もこのデータの存在すら知らず……嗤ふに嗤へぬ、この国の危機管理の現状。あの外務省の「海外安全情報」と、それの受け売りのNHKの「ナイジェリアでは……」と正直、誰も欲してをらぬ三流情報の垂れ流ししてゐるなら「海外安全情報」の予算全てカットし、それで国内の危機管理の見直しでもすればだうかしら。
▼『銃・病原菌・鉄』のジャレド=ダイアモンドが朝日で「人口と環境問題が文明の崩壊」云々といふ主張。石化に伴ふ二酸化炭素問題こそ深刻で原子力は放棄できぬ、と。現実的なるべき、原発事故や自身で文明が続く可能性が損なわれることはありえないが二酸化炭素の問題は現代文明の行く末を左右……と。これほどの碩学が、と驚くが簡単な話、二酸化炭素原子力も問題が多いわけで両方をどう解決できるか、に知恵しぼるべきで二酸化炭素原子力で二者選択すべきかしら。
▼畏兄G氏からの賀正メールより。

日本固有なものとか日本のアイデンティティということになるとやはり壬申の乱、白村江の衝撃……その結果明確化した天皇制、更に明治国家を建設するとき伊藤博文等が構想した近代天皇制に行きつきます。戦後のGHQ民生局の占領政策天皇制のゆっくり形骸化させるという意味では大成功だったのですね。今上陛下のあとが心配です。実は日本はハイブリッドな雑多な民族世界だった。江戸時代というプレ近代で統合された擬似民族意識。寿司、そば、落語、歌舞伎、文楽 等の愛すべき固有の文化がそこから生まれたのですが、均質化された意識が急激な近代化(近代国家化と呼ぶべきでしょう)を可能にし、敗戦というカタストロフィーに落ちいりながら再生した。しかし、今、同一化、均質化が完全に弱点になっています。日本の文化、サブカルチェアーはいよいよグローバル化しています。この時代で生き延びるのはどんな人材でしょうか? 東大を頂点とするヒエラルキーはとっくに機能しなくなっています。文化を発信する国家、を目指すこと。懲りないアメリ市場原理主義とも、ダーウィニズムを実践する中国とも距離を置き、共生を目指す国柄を支えられる人材でしょうか?試行錯誤しながら自分なりにやって生きたいと思います。

と。いつもながらただ/\脱帽のこのG氏の慧眼。