富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

龍彦とカフカ

fookpaktsuen2011-08-15

八月十五日。終戦記念日。ペナンも日本軍の支配下にあつたが日本軍の降伏は九月六日。今朝は未明から雨。スコールにあらず本降り。肌寒い八月十五日。リゾートで雨、はアタシは好き。明るくなつた頃には歇む。今回の旅行、三日目までは毎日、移動。ジョージタウンでも猛暑のなか歩いてゐたし、翌日は此処への移動、で昨日も予定外で路線バスで島一周をしてしまつて考へてみたら一日ゆっくりご静養もなかつた。もう明日は香港に戻るわけで今日くらゐ、とご静養。プールサイドで日がな読書。ジョージタウンの古本屋で得た澁澤龍彦ちくま日本文学全集、文庫)読了。

  • 理性を突破する理性は狂気と見なされる。「理性の時代」に有罪判決を受けた理性の人、……それが文学者としてのサドである。

龍彦責任編集の「血と薔薇」(天声出版)の創刊が1969年。この「血と薔薇」四冊、数年前に入手したがちゃんと読んでゐない。龍彦が亡くなつたのが1987年。そんな最近のことだつたかしら。巻頭にある蹴聖、藤原成通を主人公にした「空飛ぶ大納言」が素敵。成通からコクトーにまでいつてしまふのだから。昼は一昨日と同じ海岸の食堂。食後、本通り沿ひのスパで小一時間の按摩(RM60)。ホテルに戻り午後は白水ブックスでカフカ短編集「断食芸人」池内紀訳を読む。「田舎医者」にある「ある学会報告」と、この表題の「断食芸人」とサーカスの空中ブランコ乗りの「最初の悩み」など、カフカの世界そのもの。晩は本通りのイタリア料理屋に軽く食す。地元料理に飽きる、中華料理も世界中どこにでもあるが香港人であるアタシらには、その「なんちゃって」ぶりがダメ、となるとリゾートのイタリア料理といふのは無難。フランス料理はないがアジアのリゾートでイタリア料理はかならずある万人好み。さすがに新聞の早刷を売りにこない(笑)。早刷はストアやコンビニでは扱つてをらずフリーの新聞売りのみ、なのかしら。龍彦とカフカ、なんてリゾートでもなければよつぽど読まない、読みきれない組み合わせ、で夜はもう本を読まず早寝。
▼マレーシアはこれまでマレー、華人、印裔、もろ/\の共存で戦後ずつとこの関係でやつてきたのだから微妙な塩梅はできる、といふ気がしつつ一番気になるのは「反共」がなくなつたこと。冷戦の終演(終焉に非ず、終演)で、それからパンドラの匣をひくり返したやうにどれだけの民族対立が世界中で起きているか。マレーも、たんにマレーの問題でなく「華人イスラムの敵だ」なんて言論が出てくると新疆での中国の対イスラム政策が失敗したりするとイスラム圏の対中反発も高まるわけで、さうしたことも間接的にであれマレーにも影響があるでせうね。いろいろ難しいのが21世紀。

澁澤龍彦 (ちくま日本文学 18)

澁澤龍彦 (ちくま日本文学 18)

断食芸人―カフカ・コレクション (白水uブックス)

断食芸人―カフカ・コレクション (白水uブックス)