富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

バトゥフェリンギへ

fookpaktsuen2011-08-13

八月十三日(土)晴。久々の熟睡から朝の五時前に起床。朝焼け。部屋の窓を明ければ海、でもこ/\も埋め立てとハイウェイ建設が予定されてをり(まだしばらく先にはなりさうだが)すると湾岸沿ひが売りのE&O Hotelが内陸化する、といふ、香港でいへば湾仔の六國酒店が、それ。ジョージタウンから北部に発展する市街、そのための道路整備なんでせうが、それより市電でも走らせてくださいよ。朝刊を読んでゐて興味深いのが十数頁の大々的な「おくやみ」欄。日本だとせいぜい物故者の名と通夜、葬儀の通知だが、まさに物故者への生前の生涯への礼讃そのもの。華人でも大陸や香港はそこまでせぬし、台湾でもそれなりだがこヽまで派手ではない。やはり故郷を離れ何世代たつても南洋の地では客死なのかしら。でその悲しさを盛大な葬礼で見送る、といふ。午前中、Z嬢は一人で市街散策で(どこでもよく一人で歩く、と感心なのはとにかく方角など「女性にしては」←偏見、かなり見事)アタシはペナン州博物館。歴史のお勉強。1930年代くらゐまでは香港とあまり大差ない英国領植民地都市の風情。大きな違いはその後の香港の発展*1ジョージタウンは当時の風情がそのまヽ現存してゐること。小さな歴史館だが見て読むもの多し。Digiなる携帯電話会社のお店でSIMカード購入でマイクロのサイズにカットしてもらふ。E&Oはホテル全館がWi-Fiだつたがこの先だうなるか、もあつてのこと。路線バスでホテルに戻り荷物整理。昼の部屋引き払ひホテルが手配してくれたリムジンでバトゥフィリンギへ。Lone Pine Hotel に下榻。同じ経営でE&O Hotelのリムジンだと「車両通行止め」通り越していきなりフロント正面まで乗り入れ。何だかサルタンか成金の如し。この宿ではプレミアガーデンルームなる、部屋に小庭あり、そこからそのまヽホテルの庭、ビーチに出られるのを予約。案内された部屋は確かに芝生の庭からビーチには向いてゐるが肝心の小庭なし。中途半端に部屋の入り口にパティオあるが通路に面してをり雨戸開けると茂呂、丸見え。iPadでホテルのサイト見てみると部屋の写真は小庭付きで説明には“a choice of either a patio or countryard”とあつて小庭つきでリクエストしてゐるのにだうなつてゐるの、と確かめると、小庭付きはプレミアガーデンでアタシらの予約はbrochureにある通りガーデンだ、との説明。あら、ほんとだ、よく見てゐなかつたがbrochureでは部屋のタイプに「プレミア」がない!と一瞬、怯みさうになつたが、でも、ほら(とiPadでこのホテルのサイト示し……あヽプリペイドのSIM買つてゐて良かつた、このホテルはWi-Fiがない)部屋の選択にはプレミアガーデンだけでガーデンなんてカテゴリーがないのだから選びやうがないでせう、これでプレミアガーデンを選んでゐるのに予約ではガーデンで1ランク下です、ではちょっと理に適ひませんよ、と申し出。ホテルのスタッフも意外と自分のホテルのサイトなんて見てゐないやうで「あ、ほんとですね」なんて言つてゐる。勿論、部屋の調整が難しいのはよくわかるが、リクエストしてゐたタイプの部屋がないならない、でチェックインの際に言つてくれヽば、だうしようと考へもできるのに。竹中直人には「笑ひながら怒る人」といふ芸があるがアタシは(Z嬢にいはせると)笑顔でクレームを理詰めでするから相手は反論し難い、イヤな客ださうだが、確かにさう加茂。で向ふサン曰くプレミアムガーデンの部屋が「ないわけではない」が三時にならないと片付かないといふので、これからゆッくり昼餉としますから結構でごさんすよ、で示談成立。おそらくアトから来る同じやうな条件と料金で予約の客とまた何かの仕手合戦となるのだらう。

ホテルにチェックインの際のポイント
その① そのホテルが始めてでも「初めてですか?」とスタッフに丁重に尋ねられたら「いいえ」と答へること。
その② 特定のランクの部屋を予約してゐる場合「前に泊まつた時、その部屋がどれだけ良かったか」を彷彿してみせること(笑)

初めてで「はい」と答へたところで必要以上に施設の説明をされたり(そんなの部屋の案内書ですぐわかる)行楽にこんなオプションツアーがあります、と説明されるだけで、場合によつては都合のいヽやうに(ホテルにも都合があるのは重々承知だが)部屋を宛てがわれたりする場合もあらう。晝は静まり返つた、日暮れゝば賑やかになるのだらうがリゾート商店街から浜辺を抜け、ビーチリゾートなんて数年前のベトナムホイアン以来かしら、やうやく一軒開いてゐた食堂で昼餉。ホテルに戻り希望の部屋宛はれ旅荷を解き日暮れまで寛ぐ。藻谷浩介「デフレの正体 − 経済は「人口の波」で動く」読む。哺時、昼とはうつてかはつて賑やかな本通り。ホテル近くのフードコートに食す。飲食店で特定のビール売る麦酒小姐は珍しくないがTiger Beerの麦酒小姐ならぬ、かなり年増の麦酒大姐箸には、そのセクシーなミニスカートのユニフォーム姿が眩しすぎ。箸の使へない西洋人、沢木センセイの深夜特急読む日本女性……なんだか久々に珍しいものを見た。売店で、あれ、今日もう読んだはずなのに一面トップ記事の違ふ光華にっぽうあり、あれッと思へば小樽M氏から聞いてはゐたが新聞の早刷りで明日の朝刊。まだ夜八時前なのに、で明日の朝刊読む。マレーでも芸能欄は香港と記事の内容が全く一緒、って華人芸能界は香港が中心。藻谷「デフレの正体」読了。
▼藻谷浩介「デフレの正体」について覚へ書き。高齢化増に対して「出生率の低下」に非ず就労人口の減少、で人口変動で全てを語らうとする。率で見ずに数字で見ること、それは大切だが果たして、これだけか。かういふ見方もあり〼の一つ、としか思へず。この如何ともし難い状況で日本にできるのは産品のブランド化でありサービスのクオリティ向上であり、さうしたノウハウを今後、高齢化が確実のアジアで応用させるなどの必要性は確かに重要。アタシなどすぐ簡単に日本は末期症状、外国人労働者の受け入れを、なんて口にするが甘い、甘いと実感。でも、それほど簡単に処方箋になる、とは思へず。著者はさうした指摘なんてあること当然承知で敢へて少し日本人の見方を変へようとしてゐるだが。著者が処方箋の一つにあげる観光立国、短期居住者の増加なんてのも(まさに今、これを読んでゐるペナンなんてそれを実行してゐるが)、おいしい水や安全が基本。と思ふと天災はだうしようもないとはいへ、原発の核禍など最も支障があるわけだし、また日本の所為ではないにせよ超円高もせつかくの日本に向く投資や消費が寄つてこないわけで、超円高でも日本の輸入消費は増えないしアップル産品も円高差益がないのだから、これも困つたもの。安全と円安を、ぜひ。

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

*1:これについては八月十一日の信報、林行止専欄の「李嘉誠方安生 李光耀有保留」が興味深い。