富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

曼谷発大馬Butterworth行き列車

fookpaktsuen2011-08-10

八月十日。水曜日。朝五時に起きてしまひJunior Suiteなんてのは実は一間で間仕切りがある程度、Z嬢起こすにも悪いので、それなりに広い、化粧用に椅子もある浴室で洗面台を机に朝のお務め。朝の散歩兼ね出勤で賑はう、しかも何故に出勤の途中で衣料品のバザールで買い物に余念なき女性が多いのか、眺めつつ食肆Kai Ton Pratunamに往きカオマンガイ海南鶏飯)食す。宿に戻り読書、長湯。藤澤清造根津権現裏」読了。大正期の文学青年で貧困から進学も能はず二十代でこの「根津」上梓したものの何事も上手くいかず演芸画報などの編集業なども続かず三十幾つで、まさに野垂れ死のこの作家、ほヾ忘れさられてゐたが作家の西村賢太が心酔、尽力あり新潮文庫で復活。朝日の読書欄で知ったがアタシは精神的な悩みや苦労をそのまゝかうも、これでもか、これでもかと綴られ読んでください、といはれるのは苦手。一葉とて貧困にあつても作品は作品なのだが。晝に宿を引き払ひタクシーでチッロムのCentral World Plazaに往き曼谷Y氏とYum&Tumで昼餉。タクシーでホワランポン驛。14:45発のマレーシア、Butterworth往き。数ヶ月前に確かめたときは全車両二等だつたと覚へてゐたが一等の二人用寝台個室が一両あり。二等を買つてゐたが二等といつてもプルマン式の、日本なら昔のA寝台、今では特急日本海だけ、なのだ、じゅうぶんに贅沢。座席の幅の広さはSQのC-class以上で二人なら向かひ合わせで長旅も楽しいところ、だがあたしの失態は酒の調達を逸したことでホワランポン驛で売店でタイのブランデー、リージェンシー贖はうとしたら午後二時を数分すぎて酒類販売不可。タイでは 酒類の販売は11〜14時、17時から24時。飲食店で飲むのはいゝが販売不可で売店も売つてくれぬ。せつかくの鉄道の旅で車窓からの風景楽しんでも酒がなかつたら、たヾの子ども。かなりガツクリきたがバンコク市街出たあたりで食堂車覗くと午後のこの時間も祝勝に営業中で麦酒を飲ませてくれた。この列車、百罒先生なら鳥渡、許してくれさうもないが客車(韓国大宇の1997年製)はかなり老朽化しているものゝ何より車内清掃が頻繁で便所もタイだから使い方がきれいなのがいゝ。かなり眠いが高木仁三郎原発事故はなぜくりかえすのか」読む。夕食も簡単だがそれなりの料理と麦酒を座席まで運んでくれるのも有難い。午後八時くらゐに寝台が作られ静かな車内。列車の揺れと軋音が何とも心地良き夜汽車。白河夜船といひたいが折角なので寝台で仰向けに伏せiPadでチョートク先生の芸風真似て日乗綴つてみる。どうせならそれを夜汽車からの上網も。明日になつてマレーシアに入ると、このiPadのタイのプリペイドマイクロSIMカードは使へなくなるのだし。さういへば列車の冷房が強いのは織り込み済みで冷房対策で太幅のクラフトテープと新聞紙を準備してきて寝台が拵えられたら上段に寝るZ嬢の寝台で天井の冷気口のところを紙で塞いでゐたら周囲からかなり感心された。東南アジアと中国の旅では大切なワザが、これ。

根津権現裏 (新潮文庫)

根津権現裏 (新潮文庫)