富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

百年ぶりのエンタメ小説

八月三日(水)晴。このところ読書が進んでゐる。理由の一つはまず読む新聞が減つたこと。紙媒体では日本の新聞では朝日と、地元紙で何より一番読み処(見処か……)多い蘋果日報とSCMPだけ。信報と明報は特定の記事や連載、評論だけで圧倒的に読まない紙面多く有料でiPadなど電子媒体のみに。そのほか選り取り見取りでこれまで通り電子媒体もあり。今では有料となつてゐる世界的な高級紙媒体もあたしのやうなんは十数年前のネット黎明期に登録してしまつたからか、有料制になつてからもまだログインすると無料で読める媒体少なからず不思議。信報など昔はずいぶんと読みたい記事満載だつたが書き手がずいぶんと変はり今ではiPadで十分。明報はネットでも紙面レイアウトそのまゝで見られるのは重宝。まずこれで一日中、新聞の束を持つて歩く修業から解放された。つぎにテレビを一切見なくなつたこと。これまでもせめて朝と晩のニュースくらゐは15インチ!のテレビモニタで眺めてゐたが時々刻々と追ふのも馬鹿馬鹿しい世の中。で必然的に酒を飲むか本を読むか、となる。夏はとくに昔から図書館の冷んやり感が好きで高校野球的盛り上がりから逃げるやうに図書館へ通つた習慣がまだ抜けぬのか、自然と図書館に足が向いたり夏の夜は本読みが好き。暑くて眠くならないのもあらう。で日に最低一冊のノルマがあるわけぢゃないが本を読んでゐる。で今日読んだのは真保裕一「ブルー・ゴールド」(朝日新聞出版)なのだが自分でも「あたしらしくない」カッパノベルズみたいな(って今でもあるのかしら?)企業陰謀小説で水資源を巡つて商社と型破りな商社マン、関係者各位が蠢き……謀略、告発、二重スパイ、真犯人は誰なのか、って誰でもいゝんだけど、とにかく「なぜこの本があたしの手許にあるのかがわからない」の。少なくとも新刊で読まれた形跡もなく帯までついてゐるのだから古本市とかぢゃなくネット通販で届けられたことに間違ひない。だが「選ばないジャンル」の本で、アタシの注文ミスかamazonとかが間違つて送つてきたのか、何だかよくわからないが偶にはふだん読まぬジャンルの本もいゝかしら、と読んでみて「まさに第一級の謎解きエンターテインメント!」なんてamazonの紹介にはあるのですが謎解きといふのはきちんと犯人と覚しき人物が登場して状況や証拠、アリバイなど条件提示がされて、の話だから、で楽しいのであつて商社内部のトラブル揉み消し、人事を巡る凌ぎ合ひ、水にかゝはる利権の取合ひ、公害問題、ライバル商社との競合、そして(お決まりですが)まるで関係ない人たちの過去に遡る因果関係……と盛りだくさんのやうで結局、最後三分の一くらゐでようやく出てくる第三者が実は犯人でした、で果たして「第一級の謎解き」かしら。まぁさうはいひつゝ一気に最後まで読んでしまつたのは、さすがエンターテイメントだから、なのですが。それにしても著者が参考文献で水関係の新書三冊、専門書だが入門書の「水と水質環境の基礎知識」(オーム社)、国際水紛争事件(アサヒビール)と学研の「脅威の科学」シリーズの水関係の一冊、と並べてしまふと「あら、さうですか」と一寸、興ざめ。

ブルー・ゴールド

ブルー・ゴールド