富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

シンガポール国際と吉田健一の文体について

fookpaktsuen2011-05-22

五月廿二日(日)朝に大雨。雨が小止みになつたを見計らい出街で昼前から官邸で執務。午後遅くHappy Valleyの日本人学校体育館でアンサンブルディマンシュ(香港の日本人による小楽団)の定演をZ嬢と聴く。雨も歇み早晩に学校から香港の麻布十番(笑)Happy Valleyの市街に漫ろ歩く。簡単に萬興茶餐庁に食さうと思つたら生憎、日曜日は七時でお終ひ。意外とHappy Valleyでそゝられる食肆なく路線バスで北角。炮台山の城市花園から和富中心にかけて最近かなり評判の食肆並ぶが日曜晩の繁忙期で外に待ち客の見世も少なからず。幸ひに新和富餐庁菜館に二人卓の空席あり事なきを得る。麦酒の肴に絶品の特色碎猪手、歯応へ見事な芥蘭、籠仔荷葉蒸乳龍蝦飯を食す。帰宅してシンガポール国際競馬の中継見る。中継なかつた第3競走(芝1600m)で馬主O氏のTangible Assets(高岡厩舎)は結果を見ると三着。Krisflyer国際スプリントはロケットマン強過ぎ。三月のドバイ(Dubai Duty Free Golden Shaheen)に続き(ってその後も五月に星加坡のG1で調整で二勝してゐるのですが)16勝目。二着と敗れたのがこれまで四度のみ。で星加坡国際盃(芝2000m)はカリフォルニアメモリーが星加坡でも香港でも一番人気。大外13枠だが後続から駆け上る馬なので大外は不利な条件にならぬ、と期待してゐたがChadwick君は何を勘違いしたか(或は馬が勘違いしたのか)1200mくらゐまで先頭でハナで走つてしまひ結果は8着。8番人気の地元馬Gitano Hernandoが優勝の番狂はせ。T 貴重な国際G1の勝利逃したCruz調教師もレース後にChadwick君の騎乗に苦言も然り(写真)。晩に再び大雨と落雷。昨日は漸くで吉田健一「東京の昔」読了したが今日はやはり途中で止めてゐた小泉武夫「不味い!」読了しようと思つたが肩が凝らない内容だといゝかといふと肩が凝らない内容は週刊誌だかの人気連載で一編読んで「また読みたい」で翌週また面白い話を読むから面白いわけで面白い話も次から次へと続くと「不味い」あるいは珍味の話は食傷気味は避けられず、で読了は断念。「東京の昔」だが主人公(健一さんそのもの)と下宿近くの自転車屋の若旦那・勘さんとの深酒については書いた通りだが、この健一さんと勘さん、それにもう一人、酒場で遭ひ飲み仲間となる帝大生で仏文の古木君といふのもゐる。古木君の渡仏を叶へるために健一さんが川本さんなるパトロン紹介するなどして物語の最後は渡仏する古木君を勘さんと神戸まで見送るところで終はるが物語は閑居の主人公とこの若い二人の飲み仲間のどこか切なさ漂ふ鼎談がいくつもあり。(これについて久が原T君より郵電あり)夷齋先生が吉田健一に「色気といふ要素の欠如」と喝破は見事だが、この物語の飲み仲間(といふほど明るく瀟洒に非ず)の勘さんといふお職人といふか今いち正体不明の酒客と初対面に近い時に深更、待合にシケ込んでまで飲み明かしますかね、と。そこはかとない菊花幽香とまではいはぬが、この待合での通夜痛飲はいくら酔客でも尋常に非ず。吉田健一の文体も、あの「ムズ痒さ」は「慾望を抑圧する知的生活に慣れてゐた」にせよ「何だか遂に実事綴るに及べぬ」ところゆゑのぬた/\さなのかしら。まぁそこまで深読みしても結局のところ「朝から泥酔した酒客の文体」といつてしまへばそれ迄なのだけど。
▼今日のシンガポール国際は香港の海外競馬中継で6競走計で最高投注記録のHK$1.19億。これまでの記録は三月のドバイでHK$1.08億。星加坡国際杯も単独レースで投注額がHK$3千萬超へ新記録の由。