富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-04-02

四月二日(土)快晴。初夏通り越して夏のやう。もはや先月からのお仕事滞りご執務のあと晝過ぎ滑り込みで市大会堂。瀬々敬久監督の映画「ヘヴンズ ストーリー」(こちら)看る。278分の長尺。この物語の展開で四時間半余は辛いかと思つたが途中からぐい/\と引き込まれる。見事な配役。昨年完成のこの映画は東北太平洋岸の震災は当然、意識もされてゐないのだが殺人であれ自然災害であれ突然訪れる死の運命的なもの、逃げ場のなさ、そこでもがく苦しさ……。やるせなさ、がどこか「リリイ・シュシュのすべて」彷彿するところあり、こんな映画こそ岩井俊二が撮らなければいけないのに、と感じたが、あとで知つたがこの映画のミツオ役・忍成修吾は「リリイ」に出演してゐた。それにこの病魔に冒される役をば体現する女優は誰?と思へば山崎ハコ。終曲(生まれる前の物語)はまるであの大惨事をば意識したよう(作詞は監督自身)。ただ一つだけ苦言すれば最後に個々の物語の「まとめ」に無理あり。その収拾のために都会に近いわりには閉じた集落的な離島?が必要だったのかしら、と思ふ。風景といへばなだからに続く高地、そこから眺めた市街地、そして海岸線、大洋が静岡か茨城か前者なら新幹線や高速道路など走るはず、と思つてゐたら日立がロケ地。沿岸は今回の地震被害もあつた高萩の由。一旦陋宅までバスで戻り素麺茹で煮込み夕餉ののち晩三更に尖沙咀。文化中心。石橋義正監督の映画「ミルクローゼ」看る。近年稀にみる駄作。日本では二月に恵比寿映画祭だかで先行上映あつただけで今回の香港映画祭は一応プレミア上映。今晩、会場埋めた主にヤングの香港客はそれなりに笑つてくれてはゐたやうだが後半はけっこう食傷気味で監督ご本人が来場なのに映画終了後に半数以上が退場が事実。監督ご自身は上映前にかなり楽しさうにストーリーだとかディテールだとかドラマとして見るぢゃなくてアトラクションとして没頭してほしいだか何だか宣われてゐたが、それ以前の駄作。小説、テレビなど媒体の如何にかゝはらずナンセンスにはナンセンスたるセンスし「主張がない」は一つの主張だが、この作品ほどナンセンスのセンスもなければ「つまらない」映画も珍しい。晝と夜の映画のあまりのギャップに中和された感あり。