富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月廿七日(木)晴。毎日、たヾ何かの事象に呆れることがアタシの惚け防止か生き甲斐のやうだが今日の朝日新聞天声人語には、当代はどうせひどい書き手、とは判つてゐても、また驚かされた。朝日でも深代、疋田の名文とまでは望まぬが、天声人語なのだから、せめて筆致には欠けるところあつても文章の展開くらゐは努力してほしい。本人がそれに劣つても編集レベルで「これは一寸……」と書き直しくらゐ命じられぬものか。

三島由紀夫は酒食もおしゃれで、文壇バーや居酒屋を避け、きらびやかな店に正装で出没した。〈「プルニエの舌平目のピラフ」などは、何度となく食べて、一寸間をおくと又た食べたくなる〉。プルニエとは、皇居お堀端にある東京会館のフランス料理店だ▼シャンソン喫茶の銀巴里(ぎんパリ)ができた頃、三島は出演中の美輪明宏さんを伴い、近くの洋食店、銀座キャンドルに通った。今でも名物のチキンバスケットを好んだという。以上、『作家の酒』(平凡社)から拝借した▼文豪のつまみから台所まで、鶏肉ほど融通の利く食肉はなかろう……(以下、略)

由紀夫さんと東京会館のプリニエを話の枕にするのは、これは良し、としよう。でそこから銀巴里*1、でメケ/\の明宏さん、と一瞬、下手な書き手にしては珍しく話が面白さう、と、話はそこから当然、銀座のカフェ・ブランズウィックからアドニス……といつた話題かしら?と思へば、銀座キャンドルでチキンバスケットの話題から結局、何が言ひたかつたのか、といえば鶏肉で鳥のインフルエンザ……唖然、とさせるほど低レベルの天声人語*2。鳥のインフルエンザの話するのにどうして三島由紀夫からプリニエ、銀巴里、三輪明宏、銀座キャンドル、チキンバスケット……まで引っ張らないといけないのかしら。書き手も書き手なら、こんなお粗末な文章にダメ出しもできない新聞社ぢたいに文章力といふものが欠けてゐるのでは? これから先、牛だか豚が流感にかかつたら、今度は池波正太郎から資生堂パーラー、でミートクロケットから話を起こすのかしら。朝日新聞朝日新聞ならNHKNHKで相変らず、ひどい。報道・表現の自由あるのに中国の中央電視台に比べても内容的には低レベルのNHKを見る。高視聴率続け長寿の「ためしてガッテン」も「役に立つ」が売りだが、痔の悩み解決とか美味しいカレーとか、確かに「それなり」のこと紹介するが果たして、それを知らぬと困るのか、といへばじつは痔でもカレーでもじつは「ためして」の情報なくともそこ/\痔もつき合つてきたしカレーも喰へぬほど不味いわけでもない。ただ知つてゐれば少し得とする、といふレベルのことが、さも大発見のやうにいはれて「なるほど」と。思考が乏しい。来週の予告は「生涯で癌になる確率は94%」と。当然だらう。さまざまな疾病がどん/\治癒するなか寿命ばかり延びれば当然、死因は癌くらゐ。「悩むこと」くらゐしかやることなきヒマな社会ゆゑの番組。続いてNW9は鹿児島で新燃岳の噴火。現場近くから中継の若手記者(アナウンサー?)テンパってしまひ「地面だけぢゃなく泊まっている車にも火山灰が積もっています」「火山灰で目や喉が痛い、髪がごわ/\」「ワタシも取材して良くわかったことですが街中を歩く人が多くありません。普段でも人通りは少ないのですが」と、もう当たり前のコト連発。これが報道番組!? 鳥インフルは相変らず専門家が「食べても大丈夫」といつてゐるのに「心配が美徳」「心配以外に生き甲斐が見出せぬ」の日本人の琴線に触れたやうで、の大騒ぎ。鳥インフル対策は「野鳥のフンを素手で触らない」「糞があったら踏まない」と……これが報道だと思ふとキチガイのレベル。野鳥のフンなど普通、素手で触らないし、フンなど踏もうと思つて踏む奴もをらず、気づかず踏んでゐるだけ。素手でいち/\野鳥のフンを触つたり野鳥のフンをわざ/\踏んで歩いてゐる奴がいたら、それこそニュースとして格好では? 鳥の流感で騒ぐのは自由だが三年前だか韓国の田舎で鳥インフルが見つかつただけで成田空港とかで検疫強化でソウルからのフライトで消毒液の踏み絵実施したのだから北海道が今回の鳥フルの温床なら千歳からの便で同様の措置とるべきだし「北斗星」など青森で運行中断、渡り鳥が海底トンネル潜る可能性もゼロではないので青函トンネルも閉鎖すべきでは? そこまでせぬのなら韓国での鳥フルでの措置が本来の病疫措置でなく朝鮮への偏見か、とすら思へてならず。結局、本来の何らかの事態への適切なる対応など皆無で、たヾ「蒙古来襲」や「震災での朝鮮人暴動」、花見の前日の「明日、晴れるかしら」の心配同様、悩まうが悩まなかろらうがどーでもいゝこと悩み、のノーテンキさ。今日は久々に早晩に帰宅してドライマティーニ二杯。夕餉に鏞記酒家の蘿蔔糕(大根餅)食す。「つなぎ」無添加で柔ゐこと。隠し味に白酒少し入つてゐるかしら。
澳門賭博老人家の財産醜聞。四日目。昨日は更に、老人家の弁護士は姿勢崩さず老人家の命により、と第二、第三の両房を財産横領で訴へる強気見せれば両房は老人家をば三房にマスコミ招き第三夫人と二房娘が老人家の傍に仕へるなか、よぼ/\の老人家が模造紙に大書きされた「平穏無事」のコメント読み(読まされ?)可哀想。第四夫人などこのパフォーマンスにつき何も知らされておらず今日は第四夫人が三房に乗り込んだが邸内に入るを拒まれ第一夫人(故人)の娘らも三房に出入り赦されず……ます/\の面白さ。このまゝでは澳門賭博の帝王も「死に損なひ」と嗤われるばかりの無惨さ。

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富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/
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*1:銀巴里に「ふりがな」も要らぬと思ふが敢へてふるなら「ぎんぱり」か「ギンパリ」の方が路地裏の看板ぽくて「ぎんパリ」はないだらう。

*2:最初の段落はたんにプリニエの宣伝か? 「樸が書いたんだよ」とでもプリニエで支配人に自慢でもしたいのかしら?