富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月十四日(金)歯科治療。十一月末だつたか奥歯の正確には左の上顎第一大臼歯といふ歯の奥の角が少し欠けてゐることに気づき、痛みもなくそのまゝにしてゐたが気づくと無意識に舌で遊んでしまひ漸く治療。T歯科医師に「あんまり力んで噛んぢゃダメだよ」と言はれるがWikiによれば、この上顎第一大臼歯は「噛む力は非常に強く最大で60kgに達し」「最も虫歯になりやすい歯」の由。生まれて初めて数へてみると親知らず除くと廿八本あるさうな歯のうち虫歯治療なき歯は十一本で、但し上顎の歯はわずか前歯の二本のみと識る。本日、つひ或る大人買ひしたら信用卡情報読み取られ控への印字始まつた瞬間に携帯にSMSで信用卡会社より利用額と時間の連絡あり。不正利用防止なのだらうが早すぎ。帰宅しての久々の夕食でキャベツと挽肉煮、と馬鈴薯のクリーム煮。Grace Vineyard(怡園酒荘)のメルロー08年。久々にNHKテレビで外務省の海外安全情報見る。豪州ブリスベンでの洪水で「現地の正確な情報を得る」「安全を第一に危険な地域に近づかない」と。日本でも正確な情報を得るや安全を第一に危険な永田町とかに近づかないとか当たり前のことで今更誰彼に言はれる要もなし。海外安全情報こそ先日逝かれた横澤彪氏も真似出来ない面白さと思はれるが今日は宮中歌会始。録画を楽しむ。これほど日本の伝統的な行事がモーニング姿に妃はみな西洋のドレス姿で行はれるのか、がアタシは理解できず。しかも皇后陛下を除き誰もドレスが似合はないどころか「なんてデザインなのよっ!」とピーコ的に怒つてしまふ。民草の入選の歌は
「大丈夫」この言葉だけ言ふ君の不安を最初に気づいてあげたい だの
駐輪場かごに紅葉をつけてゐるきみの隣に止める自転車 だの、と
まぁ田原町の歌の余波でこんな短歌もあるだらうが、これを宮中の独特の節回しで「だ〜い〜じょうぶ〜」とか「チューリンジョー」と謳ふことの滑稽さ。
オダギリジョーあごに紅葉をつけてゐるきみの頭に止める蟋蟀(こおろぎ)
なんて如何かしら。
皆さん神妙な表情で……相変わらず姿勢の良さでは皇太子殿下がピカ一。頑張つてくださいませ。若い人の歌が田原町化してゐるのはまだ驚かぬが年寄りの歌も
電源を入れよと妻に声かけてわさびの苗葉に液肥を放つ
と写実的どころかビデオ撮影の如し。これで短歌なのかしら。目に映つた光景をそのまゝといえば常磐松の妃の
新年のおせち料理にそへてもる南天の葉はひきたちてみゆ
も、これまた何とも。さらに「中村の玖美」だの「大西の春花」だの、と名前を呼ぶのもいつも笑はされる。「のりピー」は「さかいのりぴー」でなくやはり「さかいののりこ」なのかしら。「棺のみ好みね」って何かと思へば「ひつぎのみこのみめ」は日嗣の御子の御女=東宮妃。
吹く風に舞ふいちやうの葉秋の日を表に裏に浴びてかがやく
東宮
紅葉する深山に入りてたたずめば木々の葉ゆらす風の音聞こゆ
も、お歌があまりにも凋落の予兆、とさすが久が原のT君。それに比べてアーヤ様とお妃の
山峡に直に立ちたる青松の嫋やかなる葉に清けさ覚ゆ
天蚕はまてばしひの葉につつまれてうすき緑の繭をつむげり
に「松」や「繭」だとT君は「来たるべき世代の比喩であることは古来明分」と。いずれにせよ今年のお題は「草」ならば、いつそのこと
香しきマリファナの葉の一服に警察立ち入り秋、軽井沢
と、宮さま某椿事をお歌にするのも風流かも。来年のお題は「岸」。なんだか二葉百合子ぢゃないが岸壁で、時節柄「尖閣」を連想するのはアタシだけかしら。
▼香港政府の中高生対象にした麻薬検査は若者の麻薬汚染防止のためと一昨年だつたか大埔で実験的に始まりミッション系の学校が人間の尊厳など理由に疑問呈すも香港の全学校への普及を前に名門校の一つ抜萃書院(Diocesan Boy's School)は政府支援のこの計画に与せず独自にHK$0.5mを基金から捻出し在籍生徒のうち検査に同意した者のみから髪の毛のサンプルにより麻薬使用検査を実施と発表。政府の麻薬検査は検尿により検査結果が学校と保護者に伝へられるが抜萃書院は生徒のプライバシー保護を理由に検査を全生徒に強制せず同意者(全生徒の7割)だけで外部のラボによる検査結果は学校は検査結果を数字で受け取るだけで個別の検査結果は一切、用ひらぬ、と。学校も苦渋の選択だらうが、それでも本当にどこまで検査結果の秘匿ができるのか、と疑問の声もあり。それにしても麻薬が廉価で子どもでも気軽に買へるのだから困つたもの。
富柏村サイト www.fookpaktsuen.com
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