富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2011-01-15

一月十五日(土)快晴。昨日までと約束の仮縫ひ夕方の歯科治療前に終はらず今日まで待つてもらひ午前中に済ませ昼過ぎまで雑用。一昨日の未明に寝てゐて脚を痙り普段なら数分で収まるが朝起きても痙攣続くほど。まだ完治せぬが庇つてゐても仕方なく天気も良いので何年ぶりかしら、でBowen Roadを歩く。最近、たヾ歩くことを(行き先がなく歩くことを目的とした場合なのだらうが)「ウォーキング」といふのがアタシにはとても耳障り。少し風が冷たいくらゐで気持ち良からうと思つてゐたがBowen Roadは折から港島西雨水排放隧道(こちら)の工事が大詰めに入つてをり普段は自動車進入せぬ遊歩道のBowen Rdはトラック出入りし数カ所の工程付近は埃っぽいのなんの。またBowen Rdに点在する王如心の遺産相続醜聞の謎の風水師陳某のかつての屋敷や豪邸がいくつも改築工事中。動植物公園を抜け一時間余で中環。FCCで午後遅く独酌。FT紙の週末版やThe Economist誌を読むのが週末の心地よさ。FT紙にポリーニさんが今月末から五月まで倫敦の南堤中心にてポリーニプロジェクトと題した一連の演奏会あり(こちら)「倫敦に行きたい」と記事眺めてゐたら買物帰りで来たZ嬢がポリーニのCD購入見せられ偶然に驚く。オリエンタルグレコで珈琲豆、九龍醤園で辣韮、皇后大道中に移転拡張の陳意斎で菓子、上環東街の源興香料公司で黒胡椒と八角など購ひ画廊The Upper Stationで明日まで開催のMichael Wolfなる写真家(こちら)のHK Corner Housesなる写真(写真右)の個展見て更に散歩続け京香餃で餃子を頬張る。帰宅して読書。Youtubeで偶然に日本のお笑ひ番組で「世界一怒る政治家」ださうな梁國雄君に突撃といふどうでもいゝ企画の映像眺める。まぁ半分は仕込み通りなのだらうが日本のB級芸人より國雄君の方がずっと芸達者。この「世界一怒れる政治家」と飲みに行つたことあるZ嬢は長毛議員の芸達者ぶりは重々ご理解。
朝日新聞高橋睦郎詩人がAB蔵椿事につき「世外の徒、内面で生きよ」と元々は歌舞伎は観客にとつては日常で赦されぬ「悪」の解放区であり心に溜つた「悪」の業をそのまゝ市井で発散が能はぬから舞台で役者が演じる悪行を観ることで鬱憤を発散させ……とそれで役者は世外の徒と見なされ多少の私生活での偏向は大目に見られたが当世は役者にも社会道徳を強いるので役者は表面上は市民道徳に従ひつゝ内面的に世外の徒であれ、社会も多少、役者の不良に寛容であれ……とまぁ要約すればこの数行程度にまとまるのに、この詩人の文章はいつも修辞多き嫌ひがあるがアタシが指摘したいのはこの睦郎さんの文章ではなく添へられたAB蔵の謝罪記者会見での写真にキャプションは「記者会見で頭を下げる市川海老蔵さん」とあり、このキャプションがフツーなのは「頭を下げる」つまり「謝罪するAB蔵」といふ意味だから。それが昨日の朝日新聞では(「自衛隊暴力装置」と正当な発言が舌禍となつた)仙谷官房長官辞任前の記者会見の写真に「会見で質問した記者を見る仙谷官房長官」と。もう少しマシなキャプション書けないものかしら。「記者を睨む」なら面白いけど、仙谷さん、ほんとに記者の方を見てるだけ、で「頭を下げる」とか「睨む」とか「涙する」ぢゃないのだから。
▼宮中の「歌会始」について。人々が集まり歌を詠み披露するのが「歌会」で天皇が主宰すると「歌御会」(うたごかい)。それの年初で本来「歌御會始」。それが大正十五年「皇室儀制令」制定され附式に「歌会始」の式次第定められ(法令なので「御」をとつてしまつたのかしら)、これにより古くから歌御会始が以後は「歌会始」といはれることになるが、この年の暮れに大正帝崩御で昭和二年は「歌会始」なく昭和三年から「正式に」歌会始と呼ばれるやうになつた由(宮内庁こちら)。久が原のT君はこの宮中行事は「洋装が正しい」と思ふ、と。皇室にとつて和歌は過去の遺産ではなく(その時々の)「現代人のたしなみ」であり毎月の詠進が今もあるはずで少なくとも皇族には作歌の顧問がつき折々添削するなら現代人の日常行事として洋装でせう、と。たヾ伝統を墨守するだけになら京の冷泉家のように古式装束で、と。確かに天皇制をまるで古来からの日本の主体のやうに仰る方もゐるが明治以降の天皇制は大政奉還で明治政府と同時に生まれた近代的政治装置であつて当初から必要以上なほど洋風を受け入れ、そも/\陽暦元旦からこれだけ正月行事することぢたい「明治的」で、それなら明治以降の近代皇室のあり方として歌会始が洋装なのは当然か。妃らのドレス姿も(皇后様を除けば)猪口少子化に勝るとも劣らずあまりにお似合ひぢゃないのも明治政府と一緒にとつてつけたやうな西洋化の無理があるのかしら、とヘンに納得。

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富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/
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