富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

郎朗とドゥネーヴ指揮の香港フィル

十月十三日(水)晴。腰もだいぶ快方に向かひかなり久々にジムで30分ほどトレッドミルで走る。異常なし。尖沙咀。香港文化中心。香港フィルの演奏会。指揮はStéphane Denèveさん。ピアノが郎朗だから当然のように絶好調にほヾ満席。 それにしても郎朗が弾くのはベートーヴェンとリストのピアノ協奏曲1番なのだが、なぜ今晩の演奏会のタイトルが“The Pride of China”で「中国之子」なのかしら。いくらスポンサーが中国銀行だからって……かういふ意味のない民族主義が気持ち悪い。指揮客演のStéphane Denève(ステファヌ・ドゥネーヴ)は2005年からRoyal Scottish National Orchestraの音楽監督で来年9月にシュトゥットガルトの首席指揮者に就任予定。今晩の演奏はベルリオーズのローマの謝肉祭序曲で始まつたが、さすがフランス人の指揮者で「これが香港フィル?」と思ふくらい、ロマン派のこの曲を実に丁寧にじっくりと演奏してみせてくれた。今晩は郎朗のピアノがメインなのだが、ひょっとすると裏になるこのベルリオーズと中入り後のフォーレの「ペレアスとメリザンド」は予想以上の収穫か。郎朗ベートーヴェンの1番は今更何を言はん哉、のご想像の通り。第3楽章にラルゴから休みなく入る、それは「あり」だが郎朗は高揚したのか指揮を無視、か、さういふ演出か。いずれにせよビジュアルの世界。郎朗の、もう指揮がしたくてたまらない、といふか「弾き降り」といふほどぢゃないが演奏しながら次に被る木管の奏者に目で合図は送るは、左手が空けば指揮はするは……。「弾き降り」といへば「砂の器」の加藤剛の「宿命」だが。休憩で、私が香港ではクラシックの聞き手として尊敬するチェリストK氏とお会いする。やはり話題は郎朗よりドゥネーヴの指揮で今晩の香港フィルは……!と。フォーレ(メリザンドの歌、を抜きで)も香港フィルでこんなフォーレ、聴いたことございません、の出来。でリスト。郎朗といふピアニストは、確かに天才的なのは、その楽団の芸風、レベルに合はせて見事に自分のパフォーマンスを見せること、と納得。アンコールでショパンのエオリアンハープを聴かせてくれたが、これはアタシはあまり好きになれず。ところで郎朗がステージから頻りに客席中央に愛想を売るので郎朗のこったから抜け目なく中国銀行(香港)の偉ひさんに挨拶か、と思へば客席にはグラフマン先生いらっしゃり郎朗が「お誕生日おめでとうございます」と。今晩が82歳の誕生日の由。お達者。文化中心を出るとヴィクトリアハーバーの向かう、中環の上空に見事な三日月を愛でる。
▼三日前の話で旧聞に属すが華懋集団のキャンディーキャンディー、Nina Wong(龔如心)の遺産相続で話題となつた謎の風水師・陳振聰は現在、遺書偽造で訴へられ保釈中だが半年ぶりに裁判所にお姿を現される。すつかり痩せて(憔悴か)、またNinaを魅了した当時の青年風。
▼本日、行政長官・文革曾が施政方針演説。基本法23条の治安立法は任期(2012年の何月までだつたか)中は立法化せず、と明言。23条立法は行政長官にとつて尤も大切な課題だが、強行立法は董建華時代の50万人デモの悪夢あり社会の深層的矛盾の深化につながるだけで、どうせ北京の文革曾の評価は地方政府の小役人、で北京の覚え目出たき、より香港での支持率低下防ぐほうがマシ、と判断か。また香港の不動産高騰防ぐため中国からの投資移民の必要額をHK$6.5mから10mに上げ、これに不動産投資は含まず、にするといふが実際に移民目的の投資など香港の不動産売買の数%に過ぎず、逆にいへば堂々と投資で移民など出来るほどきれいな現金をお持ちの富裕層は少なく(笑)、単なる投資で移民目的になく、どこまでこの政策が不動産価格安定に作用しやうかしら。相変わらず政策まで小役人的。

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