富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

八月廿五日(水)切り貼り好きのアタシには糊ぢゃなくてペーパーセメントが必需品。ペーパーセメントといへばミツワ(こちら)で専用容器でまで使つてゐると「なんですか、それ?」と珍しがられる。香港では残念ながら久しくミツワ製見つけられず米国のユニオンラバーなる会社のBest Test印が主。残り少なくなつたので湾仔のアート系の藝林文具に往くと32oz缶がHK$140もして値上がりに驚く。DTP普及で版下の切つた貼つたが減りペーパーセメントの需要も落ちているのだらう。セメント購入のついでに「糊伸ばし」の篦と版下を掬ふやうな道具も購入。後者はiPadとかの保護スクリーン貼剥に便利かも。先日、珍しくペーパーセメントに興味もつたのが鹿児島K氏。ついでに小瓶のを買つて来て贈呈すると喜ばれたが「さういへば、見ましたよ」といふので「どこで?」と思つたらNHKの朝の連ドラで「ゲゲゲの女房」の版下工場の由。納得。早晩に帰宅してUSBケーブルにハブなど噛ませ整えてゐたらEpsonのプリンタ(日本ではEP-901F)の無線LANが反応してをらず。昨日、光ケーブルに乗り換へ設定が崩れたやう。Epsonはカスタマーフレンドリーだと思ふがプリンタの無線LANの設定に関してはハード的にも面倒でマニュアルも、いきなり専門用語連発で素人には理解し難し。初回の設定をすつかり忘れてしまつて小一時間あれこれいぢつてようやく繋がる。好物の豚肉の大根おろしと韮の鍋を頬張つてゐたらテレビで一昨日のマニラでのバス乗つ取りで銃殺された八名の遺体、遺族が香港政府がチャーターのCX機で帰港。実況中継。機体の貨物庫から遺体が卸されタラップが機体に添へられ香港政府要人(代表は唐英年政務長官)や中辧聯幹部らが鳩まり遺族がチャーター機から出て参り……をぼんやりと眺めてゐて思はず「ちょっと待った」は、なぜ疲労困憊の遺族をばわざ/\タラップ下らせるのか。悲しみのどん底なのだから可動橋(ボーディングブリッヂ)を接らせ、そつとしてあれば良からうものを。まるでわざとマスコミのカメラやカメラのフラッシュに曝すやう。一家族が悲しみで動顛のあまりタラップを下り、そのまゝ待機する自動車に向かはうとしたら関係者に「こっち、こっち」と目立つ場所に連れ戻される。チャター機を背に高温多湿と空港の騒音、強風のなかで慰霊式を開催。バグパイプの追悼曲演奏のなか八名の遺体収められた棺が家族毎に牽引され出てくると唐英年と遺族が花輪を捧げ追悼。イラク征伐で命落とした米軍兵なら母国に遺体が戻り空軍基地で大統領ら参列して慰霊ならまだ軍隊的イヴェントとして理解できるが。これが小一時間続く。遺族もバスに乗せられて、もう終はつたのか、と思つたら今度は空港内で遺族を前に政務長官が追悼の詞を陳べ、結局一時間半。どこまでが被害者への追悼なのか、なにが遺族への慰撫なのか……<権力による自慰>と思へてならず。やうやく一連の追悼の催事終はり唐英年が記者会見で一人のガイジン記者が「なぜ今日のこの場で追悼式を実施する必要があったのか?」と質問。唐英年は死者への深い追悼の思ひ、だの政府としての今回の惨劇への誠意ある対応だの遺族への最大限の扶助など陳べては見せるが、この記者の質問に溜飲下がる思ひ。

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