八月五日(木)快晴。濃厚な青空。摂氏25度の快適な晩夏。ホテルの食堂で朝食。ベトナム式の粉の珈琲、フランスパン、ヨーグルトが美味。オペラハウスの前売りに寄る。一度は此処で観劇なり音楽会を楽しみたいが今回の滞在中は残念ながら催事がない。十日にはベトナム国立オペラ&バレエで「フィガロの結婚」あり、残念。最初から河内オペラ座の催事に合わせハノイに来れば良かつた(ticketvn.com)。ハノイの旧市街の東を南北に貫通するTran Quang Khaiのブルーバードはさすがに横断するのが怖いくらゐ。そこから紅河を対岸のLong Bienに渡るバスに乗る。行き先はZ嬢の希望でDuc Giangにある琉球ガラスの製造工場。沖縄は糸満から琉球ガラスの製作をこのハノイ郊外の工業団地の中にベトナム文化工芸村で15年ほど続けてゐる(情報)。とにかくLong Bienに渡つてしまひませう、と203系統のバスで紅河を渡りTruong Lamでバスを下り自動車とバイクの排ガス、路上の砂塵のひどい半舗装の道を1.5kmくらゐ歩きDuc Giangの琉球ガラス工場(公式)へ。製品の販売所あり。日本語話す親切なスタッフがゐてアタシがふら/\製造工場の方へ行つたので叱られるか、と思つたら「アタシも(事務職になる前は)ここで作つてゐたんですよ」といろ/\話してくれる。二百名余が手間のかかる手作りのグラス製造に従事するが、長い鉄管の先に溶けたガラスをつけ作業工程を動くが動線が決められてゐるわけでもないが慣れてゐるとはいへ不思議とぶつかったり「冷やり」とする場面もない。アタシは市街であれだけ隙間なくふら/\とバイクや自動車が走るなか事故がない状況を想像したが沖縄から来られてゐる技術指導の方も同じことを指摘。二年前の地図には出てなかつたが(そも/\バス路線入りの地図が稀)Duc Giangもバスが一本走つてをり43系統のその路線を辿ると市内まで走つてゐる。工場を出るとちょうどバスが走つて来たのでバス停ぢゃないが乗せてもらひ一路、市街へ。昼餉に路上食堂で米粉の云はヾつけ麺。ホテルに戻り午後はプールサイドで微睡みつゝ中島京子『小さなおうち』読む。読了。やはりさう来たか、といふ感想。もう少し饒舌になると物語が膨らみ過ぎてしまふところを主人公のタキさんが独り語りではにかんで口を噤むところが上手い。まぁ個人的には「いや、そんなハズはない」と思ふところもあるが、それは築地のH君に語らふ。銀座のコロムバン、資生堂パーラー、アラスカ、東京會舘、千疋屋、荷風散人の冨士アイス、永藤パン、おつなづし……。夕方、Z嬢と市街の南の方へThien Quang湖の方へ漫ろ歩き。さう/\、ホテルを出て昨日の骨董時計屋に寄り(昨夕から何度も通つたのだが亭主不在続き)Patek Philippeの(多分、ホンモノだと願ふが)懐中時計購ふ。ホン街市あたりでZ嬢が布地を見る。夕餉にはちょっと早かつたがLu Duc通りでPho Thinと云ふ食肆だつたか粉(Pho)が美味そうな老舗あり其処に食したのは正解。Hoa Maのビアホイで麦酒飲み晩七時にはホテルに戻る。まだ夜も早いので八時くらゐにホアンキエム湖を漫ろ歩き周遊。それでも八時半にはホテル戻り。プールサイドのバーに一飲。書架に(誰がこんなのここで読んだの?)李友情『マンガ金正日入門』(飛鳥新社)あり。借りて読む。晝にホテル近くの国営デパートで購入のVang Dalatの赤(ハーフ)飲む。相変わらず葡萄の搾り汁。美味くはないがワインは葡萄の搾り汁だ、そも/\。
▼昼の路上の麺屋でも簡単な調理を眺めてゐると麺にスープ注ぐ前に隠し味でドバッと化学調味料。もともと魚醤とかあつて「うまみ」の風土だからグルタミン酸ソーダの化学調味料のアレが彼らの琴線に触れ化学調味料はもはやベトナム人のDNAにインプットされてゐるのだらう。アタシは普段、化学調味料に全く慣れてゐないので始終、喉が渇くのと偏頭痛。二年前にベトナムに遊んだ時、Z嬢が歩いてゐたら横丁の影から「味の素!」と掛け声がかかつた。十数年前にインドネシアの田舎で暗い夜道を歩いてゐた時も物陰から「おしん、おしん」と。(笑)
▼昨日歩いてゐた旧市街で河内大教会の北側の路地はバックパッカー相手の旅行代理、食堂兼の安宿が並ぶ。薄汚いバックパッカーが「寂しくも地球」社の旅行ガイド本片手に、は東南アジアの都市の何処にでもある風景。若者アタシの印象が昔と一つだけ違ふのは日本青年は何処に? ケータイで遊んでゐないで旅をしろ、と言ひ鯛。
▼ベトナムの状況はベトナム共産党政府の隠密化。国民が国家=共産党「政府の主権」を侵犯しない限り国民に最大の自由を保障する、といふ奇妙な安定。国民は理解した上で共産党政府に覇権を信託?してゐるやうな装置。
- 作者: 李友情,李英和
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2003/07/31
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富柏村写真画像 www.flickr.com/photos/48431806@N00/