富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Marc Riboudの写真展「直覚的瞬間」

fookpaktsuen2010-07-01

七月朔日(木)香港特区成立記念日。かなり好く晴れる。朝九時のジェットフォイルでZ嬢とマカオ。九時発の予約が08:35なる先発に間に合ひ最後の乗船でファーストクラスにアップグレードのおまけつき。天気良いので大嶼山過ぎたあたりでもう朝霧のなかにマカオ市街を眺む。マカオに着くまでの一時間アタシもZ嬢も黙つて新聞読み続けるのだが周囲の客がこゝまで二人で黙つて次から次へと新聞読んでゐるとかなり気になる様子。マカオで興行の河内音頭で新聞詠みの菊水丸師匠とでも思はれるかしら。マカオに到着して猛暑のなかタクシーで常宿の望厦賓館に下榻。荷物だけ置き普済禅院(観音堂)前のバス停まで往くとちょうど12系統の路線バスが来て市街ぐるりと周りNAPE(外港新填海区)の遠い端に今日正式開業のマンダリンオリエンタルマカオも眺めて澳門芸術博物館。Marc Riboud(1923〜、www.marcriboud.com)の写真展「直覚的瞬間」参観。Le French Mayで上海から澳門に来た回顧展。都市の写真でアタシはこの写真家が大好き。1957年に香港から広州に入つた一枚目の記者の車中の女性からゾク/\。ちょうど芸術博物館近くの中学の昼の下校時間とぶつかってしまひバスの混雑で一旦フェリーターミナルに戻つてから氹仔。いつものことだが在澳葡人食堂のCastiçoに昼餉。前回は輪切りの兎肉の美味い煮込み食したが今日は店に入つてまず麦酒呷つたら「これ食べて」とカラコレス(マイ/\?)供されたのはコロアネの食肆Miramarの社長が200kgだかこのマイ/\をポルトガルから輸入したさうで、そのお裾わけに預かる。豚の内蔵の煮物、メインは牛のレバー。昼からよく飲む常連の葡萄牙人のオヤジたちに囲まれ確かにこの食堂は偽リスボン。二時間の昼餉済ませ路線バスで新馬路に戻り果欄街の洪馨椰子でココナツアイス頬張る。それにしてもなんて暑さなのかしら。とても市街を歩けず路線バスで紅街市。観音古堂に賽す。望厦賓館に戻り部屋のシャワーで行水して遅い午睡。太陽がどうにか西に陰つた晩六時過ぎに出街。いつものことだが二龍喉公園まで散歩。ちょうど熊が出て来てゐるが老熊がこんな動物園の殺風景なコンクリートのなかに独りで可哀想。うろ/\徘徊する態がどこか精神を病んでゐるやう。散歩すると少し風があるのがせめてもの救ひ。Z嬢の見立てで荷蘭園のCozinha de Armando(嘆番杯) に夕餉を食す。荷蘭園正街のこの食肆、訪れてみれば禮記雪糕の隣り。土葡人のご主人が営む小さな食堂。素朴な味で豆とソーセーイの煮込み、牛肉ミンチとご飯。ちょっと客が込むと、もう「満席」で看板下ろしてしまふ。夜になつても暑いのだがせめてもの運動に、と宿まで歩いて戻る。松岡正剛白川静」(平凡社新書)読む。
朝日新聞馳星周氏のW杯談が厳しいが的確。選手らは自分たちの自信を奪ふ監督の下、ろくに機能しないシステム、芳しくない成績でW杯予選に望んだが初戦でカメルーンに当たつた僥倖に勝利したことで監督に奪はれ続けてきた自信取り戻し予選突破の偉業成したが決勝トーナメントではまた開幕前の「勝ちたい」ではなく「負けたくない」の、自信もなければ何のリスクも冒せない集団に戻つてしまひ監督がそれを鼓舞させることも出来ぬわけで戦へぬまゝ負けるべくして負けた、と。オシム監督がゐれば、と思ふだけで残念だつたが悔しさも感じられぬまゝ終はつたW杯、と馳氏。そのオシム氏もスポーツ欄で日本チームを「ミスを犯してはならないといふ恐怖感、精神的重圧で」「チャンスをものにするために必要な勇気を少し欠いた」もので「負けたくない」といふ気持ちが「勝ちたい」を上回つたのだらう、と馳星周の指摘と同じ。サッカーがW杯で奮闘することで日本の景気も回復か?なんてすら言はれてゐたが「負けたくない」だけでリスクも冒せず消極的自信で、ってまるで日本企業、日本社会そのまゝなのかしら。

白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)

白川静 漢字の世界観 (平凡社新書)

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