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二月十一日（木）曇。気温は摂氏二十八度。湿めり汗ばむ。早晩に天后。Ｚ嬢との待ち合はせまで時間ありヴィクトリア公園に憩ひ新聞讀み。皇轎印度餐廳（Palki)にＺ嬢と食す。アタシの好みの味。ヴィクトリア公園で年宵花市。まづ支聯會の出店で司徒華先生書かれた揮春求め桃の花賣る店眺めるがこの数日の陽気かしら郊外の花農家が丹誠込めて育てた桃や蜜柑、水仙などもすつかり咲ききつてしまつて、とても買つて家に持ち帰り春節に桃の花咲くを楽しむ風情もなし。店子もやけくそで叩き売り。アタシの値踏みで千元は下らぬ大振りの桃の一枝も店の主人は「三百元でどうだ」とまだどうにか蕾らしいところ「ほら、これから咲くよ」と言ふが、咲ききつて疲れた花は買はうといふ気にならず、たゞ暇つぶしに眺めてゐると「湾仔から北角なら無料で配達する」「えゝい、もう旦那の言ひ値でいひ、いくらでもいゝから持つてけ」と。それでも買ふ気になれぬ。ゴミ箱にはすでに一年かけ懸命に育てた花木が誰にも愛でられず緑の芽が出て捨てられてゐるのも無惨。年宵の楽しからうはずの花市が花農家のあまりの不当りで可哀想。

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