富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

貓哭老鼠假慈悲

fookpaktsuen2010-02-08

二月八日(月)忙しいだけで特段綴ることもなし。帰宅してトマトと挽肉のパスタ食す。ローヌ地方はSéguretのMourchonの2007年。
▼ふだん新聞讀みつ涙腺緩むことも珍しいが今日の信報の「司徒華指倡發回鄉證是貓哭老鼠」は、さすが司徒華先生、とたゞ/\敬服するばかり。肺癌の華叔、医者に余命十ヶ月と言はれた由。六四につき支聯會組織し主席になつていらい大陸入境も拒まれたまゝ。それに対して抗癌治療で大陸なら中医も優れてゐる、と親中御用政党民建聯から保安女官・葉劉淑儀までが華叔から中国政府が取り上げた回郷証をば発行し華叔の内地入りに協力申し入れたが華叔は病状は「積極、樂觀、沉著應付」の心境で北京中央が回郷証出すなど「貓哭老鼠假慈悲」ときつぱり。中央政府が香港の老民主派を国内に入れるかどうか、は「不是有病的問題,是權利的問題!」で中医の治療もけして望まず冥土の土産に本土を旅することよりも、何より信じた主義主張曲げぬことが意地、とこの姿勢。ヴィクトリア公園で始まつた歳末の花市、支聯會資金カンパのための司徒華先生による恒例の揮春、さすがに今年は先生の抗癌治療のこともあり明日は三十分間のみの由。
▼欧州のClive Palmer傘下のResourcehouseなる子会社が(中国の)中国電力と豪州の石炭を廿年に渡り毎年三千萬屯の輸出に合意。その総額US$600億。中国もあれだけ不法労工まで雇ひ石炭掘つてもまだ足りず豪州から輸入か、と、それだけならそれだけ、の記事だがこの対中石炭輸出会社は実は投資者は中国側が売る側に参画で、その有力な投資会社が中電国際。言はずもがな中国の電力発電業界仕切る李鵬一族でも李鵬最愛の娘(李小琳)がこの中電国際のボス。日本でも有力政治家の子息が親の七光りで二世議員、芸人、福田赳夫の息子が石油会社に就職できても、所詮その程度。李小琳のビジネスの才覚こと認めつ、その時代の国家の国策基幹産業の母体会社の幹部として産業牛耳ることは出来ぬ。それが出来るのだからさすが一党独裁国家でさすが李鵬の一族とたゞ/\呆れるばかり。(ちなみに司徒華先生に敬意表し李鵬娘の写真は先生御影よりずつと小さな扱ひ)
週刊文春(二月十一日号)に「黒澤明生誕百周年にドロを塗る不肖息子」といふ記事あり香港で昨年末から開かれたが紀念イベントが世界各地巡演の未定も背景はやつぱり思つた通り。
▼昨晩讀むでゐた赤瀬川さんの「新解さん」は新明解の部分より、新刊にするのに含めた、雑誌「諸君!」に連載された「紙がみの消息」といふ、本の紙に関するさまざまなエッセイが頗る面白い。こんな上質の本に関するエッセイが、本当なら岩波書店の「図書」とか新潮社の「波」なんかに書かれるべきやうなものが、なぜ文藝春秋の逝つてしまつた右翼雑誌(本当に廃刊で逝つてしまつたが)で掲載されてゐたのか。「諸君!」だから三島由紀夫を挙げた部分を取り上げるわけぢやないが、本の「余白」をテーマにしたエッセイで余白の大切さに言及したあと、三島についてかう述べる。
三島由紀夫も余白なしの人生ではないだろうか。この人の場合はあとがきもきちんと書いて、奥付もきちんとつけて、装幀まで自分でやって人生を終えたという印象がある。著者自装箱入りの豪華本である。
と、三島由紀夫を語る時、著者自装箱入りの豪華本、と(実際に三島は生前、著書上梓の度にそれに凝つたが)この完結の仕方で表現してしまふと完ぺき。そして
まあ最後はとにかくページを閉じるわけだが、そのときになって余白ページが急にたくさん出ることもある。その場合は来る日も来る日も余白ページをめくるわけで、なかなか最後にたどり着けない。結局ページを閉じられずに寝ている人が、日本の病院にはたくさんいる。
と結ぶ。久しぶりに凄いエッセイを讀んだなぁ。

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