富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-02-01

二月朔日(月)晴。晩に東都は雪の由。香港は摂氏22度で湿度87%と生ぬるくTシヤツに短パンで窓開けて丁度良いくらゐ。昨晩から読んだ柴田元幸譯のサリンジャー、Nine Storiesに続けて同氏が責任編輯のモンキービジネスのvol.3.5「ナイン・ストーリズ号」讀む。柴田氏が譯したナインストーリーズが出てゐるその号は一冊その譯だけで「あとがき」すらないのだが、それがモンキービジネスのvol.3「サリンジャー号」で、それに続けてvol.3.5「ナイン・ストーリズ号」出してをり、こちらは同氏と劇作家・岡田利規の対談や川上未映子などのサリンジャーについての文章などが掲載されてゐる。この二冊が番ひ。(いか、それ風に)対談で日本のバブルの時代からの「アメリカ文学の日本語」ってのがあるのだとしたら、そのアメリカ語の翻譯では第一人者ってやつなんだろう、柴田氏ほどの譯者がサリンジャーのこの9つの物語を譯していても「よくわからない」ことばかりなんだ、ってことを打ち明けている。そんなこと打ち明けるなよ、って思うけど、打ち明けちまうのが柴田元幸って人だろうし、なにせ自分が責任編集の雑誌だから。で、じつは僕はサリンジャーのこの九つの物語讀んでいても物語の核心とか面白さなんてものが全然ピンとこなくて「どの話でもほんとみんなよく煙草を吸うよな」なんてことばかりが気になって、だから「なんでサリンジャーのこの小説から、こんなことしか感じないのだろう」なんて自分の不感症を恨んだりするのに、それが柴田元幸だって「とにかくみんな煙草をよく喫うなぁ」なんて僕と同じことを思ってた、なんてことにちょっと安心したりする。そういえば今朝の朝日新聞サリンジャー追悼を書いていたのもこの人だった。それと一言だけ僕がサリンジャーを讀んでいて思うのは、物語に出てくる「僕たち」が野球とかスケートとかする、その野球なら野球の試合の流れが、言葉は少ないんだけど、まるでドーナツ屋のCMみたいに、草野球の打球の流れまでが陳腐な言葉だけど「鮮やかに目に浮かぶ」ってことなんだ。……ところで、ここ数日そんなだけど明日も間違いなく朝っから忙しいってことがわかっているから夜遅いうちに今日の日記を書いてしまった、明日「僕が日記を書けなくなる」なんてことが起きないとも限らないしね。
貴乃花親方の理事選挙当選。それを支持した親方を一門から破門の措置に理事長武蔵川が「一門は先輩から引き継いできたもので何でも改革すると伝統の魅力がなくなる」と発言。相撲部屋の派閥など「伝統の魅力」などでなくたゞの利権だらう。自民党だつて下野したからこそ民主党に対して「民意に支持された政権としての正当性は失はれてゐる」と批難できるわけで、もう腐つた組織は根本から改革すべき。国技などといつても所詮、都の貴族が諸国の野蛮人集めて裸で相撲とらせただけ、と思へば別に大したこともあるまい。
▼日中共同歴史研究で南京大虐殺について見解まとめようとすることだけでもアタシは大した進歩だと思ふが信報ですら見出しで「日方指南京大屠殺最多死20萬人」と中方の30萬人より少ない見解、とどうしてそこに視点がいつてしまふのかしら、と悲しい。10萬人の差がどうしたのか?と言つてしまふと語弊があらうが、では日方が中方の30萬人を認めれば良いのかしら。

モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3.5 ナイン・ストーリーズ号

モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3.5 ナイン・ストーリーズ号

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