富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-01-25

一月廿五日(月)晴。日暮れてうすら寒くウヰスキー(山崎)のお湯割りひつかけてから帰宅。ドライマティーニ澳門で購つた蛸の酢漬け缶使つてサラダ、明太子のパスタで夕餉。西班牙はRiojaのMarqués de Cáceresの白を飲む。
▼何だか自分のなかで整理がつかず綴らずにゐたのが香港の政界での「五區總辭變相公投」の動き。香港政府の政治改革、普通選挙実施などの停滞と行政長官文革曾の董建華にも勝るとも劣らぬ横柄ぶりに反政府派(これを「民主派」といふことは可能だが民主派=正論とすることぢたひ偏向的かも)苛立ち立法会議員辞職により補闕選挙実施しませう、とそれが香港全域=五区で反政府派議員の総辞職=選挙で民意問ふ公投(全民投票)になる、といふ戦法。泛民主派の総意のやうに動き民主党の元老•マーチン李銘柱や民主派のゴッドマザー•アンソン陳方安生も五區總辭をば当初、支持したが煮え切らないのが民主党の現職議員。かつての香港の良心たる民主党は党勢も翳り見え李銘柱や楊森といつた大物の引退あり、せつかく現有の議席失ふ可能性ある辞職再選挙など回避したいところ。で結局、公民党と社民連が五選挙区で一名づゝ辞職し選挙に訴へることに。前者は弁護士党か、といふほどつまり収入も社会的地位も安定した良心党で仮に落選しても日本の政治家ほど「たゞの人」にならず後者は梁「長毛」國雄君ら毒舌が売り。この辞職が実行され補欠選挙になつた場合、民建聯や自由党など御用政党が対抗馬擁立で徹底した民主派崩しが成功した場合、比例代表制だから得られた議席を二つくらゐ失ふ可能性あり、民意問ふた結果が「懸崖勒馬」(林D9©)といふ声もあり。しかも勢ひづいた両党が「全民起義」とまで輿論煽るものだから政治改革の民意をば問ふどころか「蜂起」か、と親中派は揶揄。この五區總辭が基本法に觝触しないか「香港司法牛耳る」梁愛詩も「辞職するなら再立候補するな」と批難。当初はこの五區總辭に対して対抗馬立て議席奪回する好機としてゐた政府派は中央政府の指導もあつた

のかしら一転して「対立候補擁立せず」の戦術。下手に民意を問ふ土俵に乗るより不出馬なら勝負にならず民意も問へず、の戦略は敵ながら天晴れ。アタシは政治改革の進展なし、は間違つてゐる、と思ふがこの「五區總辭相公投」は北京中央をば苛立たせるだけで余計に對手を硬直化させ政治改革を鈍化させるやうに思へてならず。「起義」も公民党(党魁•余若薇議員)は蜂起のやうな治安混乱する行動の呼びかけでなく「民主化に向けた意志表示」とするが(信報の週末の社説も指摘する通り)権力側はこれを基本法23条の「煽動」と見なすことも容易で、現時点ではまさか北京中央が基本法18条「全国人民代表大会常務委員会が戦争情態宣言を決定したかあるいは香港特別行政区内で香港特別行政区政府が制御できない、国家の統一または安全に危害を及ぼす動乱が発生して香港特別行政区が緊急事態に入ることを決定した場合、中央人民政府は関係ある全国的な法律を香港特別行政区で実施する命令を発布することができる。」を用ゐることもあるまい、が「公投」争議拡大の場合、予断を許さぬ、と指摘。御意。行政長官選挙が全く民意など反映されぬ御用選挙なのは致し方ないとして立法会は御用議員が大部分の職能団体別枠が半数を占めるとはいへ直接選挙枠が半数なのだから良識ある議員が地味に立法会で政治改革をば主張し香港の安定した成長をば経済、民生、教育といつた部分で構築さへしていけば市民の理解を得、親中御用だけしか能のない議員をば駆逐することで多数派形成すれば北京中央の覚えも目出たく、さうした政治改革で十分なのでは、と思ふのだが……アタシも年をとつたねぇ。いづれにせよ「五區總辭相公投」はあまりにスタンドプレーが先に立ち具体的な戦略に欠けると思へてならず。(……以上、昨日までの記述)今日の信報は社説(關鍵在否決○九方案不在「起義」)で重ねて、立法会議員が辞職して補闕選挙となることは基本法にも違反せぬし、この行為が革命や政権顛覆を企図せず政治権力を憲政する一定の作用は認めよう。だが北京中央の神経を逆なでし泛民主派と北京の「対決」は避けるべき。自由党が早々にこの選挙辞退したことは賢明。北京が「五區請辭」に動じる可能性も小さい。五名の議員が辞職しても亦た五人が補闕選挙で復職したとしたら、いつたいどんなインパクトがあらうか……と指摘。また社民連と公民党が辞職策抛棄し泛民主派で政府が呈出の政治改革の○九方案に反対し否決されると、それはそれで麻煩もあり。林行止は専欄(語不驚人死不休 過猶不及失荊州)で「五區公投」まではまだ良かつたが「全民起義」としたところが面倒、と。明らかなことは大多数の香港市民は現在の政治制度に欠陥があり満足できないにしても少なからず公平、開放の選挙制が実施されてをり、それを流血(それほどの代償)を以て変革は求めまい、と。また、今回のこの五名の議員が辞職し補闕選で再当選したとしたら二つのリスクがあることも著目。一つはこれが実は民意を問ふ全民投票なのだとしたら投票率が五割下回つた場合、市民がこの両党による政治改革を否定したことになること。また選挙費用はHK$1.5億といはれ議員一名あたりHK$三千万の浪費では政治改革上どれだけ重要と主張しても市民の同意は得られまい、と林行止。御意。

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