富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2010-01-03

一月三日(日)休みも今日が最後でまだ本来なら去年の内に済ましておくべき雑事続ける。昼前にマンションのまわり少し走つてからジム。午後遅くZ嬢と湾仔経由でフェリーで尖沙咀無印良品でBack Pack購ふ。十年近く使つた背嚢が痛んで昨年、空港でDunhillのを大人買ひしたが見た目は美しいが薄すぎて雑なお出かけには耐へきれず。フェリーで中環。12系統の路線バスでCaine RdからSaymour Rdに曲がるあたりまで往き香港大学の方に漫ろ歩き。大学の前で香港大学博物館のY館長と邂逅。水街のウイグル料理、巴依餐廳に夕餉。かなりの評判で不便な場所ながら繁昌。アタシも唯靈先生、劉健威兄、歐陽應霽君ほどぢやないが「羊癡」だがさすがに二人で羊肉串、羊雑湯……と食べ進むとこの羊雑湯は臭いだけでも羊のエキスたつぷりで(羊肉嫌ひには逃げ出したくなるだらう)、で羊肉餃子食べて、もう一ヶ月は羊は欲しくないかも。あまり来る機会なきこのあたりを食後漫歩。冬は羊腩煲など美味からう光記がかなりの繁昌。森記の甜品も食べたいが今日は我慢。路線バスで金鐘で乗り換へ帰宅。柚子湯につかる。荒木経惟『写真への旅』読む。アサヒカメラに1975年に連載された「荒木経惟の実戦写真教室」まとめたもので伝説的な内容。今でこそアラーキーはメジャーだが35歳の謂わば破天荒。アタシは正直言つて今これを読んでも、この世界のノリはよくわからない。天才のセンスがわからない凡人か。
蘋果日報が一面トップで「特首玩死奶茶王」と何かと思へば昨日、現朗で奶茶が馳名の茶餐庁「大發」に電話で行政長官(特首)が昼餉に行くのでと予約の電話あり。私服の警官が先にこの食肆に現れたが現場に新聞記者(おそらく蘋果日報……笑)がゐるのに気づき現場に近づいてゐた文革曾に通報。で先月の温首相からの訓令や前日のデモで記者に苛められるを嫌つた文革曾は大發餐庁の予約取り消し緊急回避の由。
▼十二月のたぶん上旬だつたか劉健威兄が信報の連載で「KJ!」を書かれてゐた。机まわり片付けてゐたら切り抜きが見つかる。映画「音楽人生」(KJ)見た健威兄が案じるのは音楽才能豊かなKJ君(黄家正)は早熟な独立思考の持ち主だが健威兄が担心するのは、KJ君に欠けるのは自省心。音楽仲間らも徹底的に自信に満ちた言論でやり込める。彼にとつては尊敬に値する先達か自分より劣る者で、同級生でも彼に屈従することで始めて友人となれる。これが天性で音楽の天才として大成すればいひが世の中さう上手くもいかず、多くの人間が性格上の欠陥で天分を徒や浪費してしまふもの、願わくばKJ君にはさうなつてほしくない、と。御意。健威兄はKJ君に馬友友の“Music is something greater than yourself!”といふ言葉送つてゐるが、どうだらう。ドキュメンタリの中でKJ君は決まつて、自分がもう狂つてしまふくらゐの音楽の偉大さ、崇高さを語つてゐるでせう。だから彼はその音楽に身を捧げようとしてゐるのだから、こんな言葉を投げても「さう、その通りなんです!」と応じるだけだらう。KJ君くらゐの音楽の天才少年は世界中に少なくない。で彼が音楽家として大成するかどうか。音楽教師としても彼の性格のまゝぢや辛からう。性格が温和になつたら彼の天分が削がれる。だからどうなるか、など全くわからない、が少なくてもあの映画が彼の十代を写して世に映されるだけでもなんて貴重な記録なのか、と思ふ。
▼信報社説「北京對曾蔭權有什麼不滿?」(十二月三十日)。行政長官曽蔭権の先週の上京述職で北京の指導者は文革曾の施政に不満、とさんざん報じられたが中南海の指導者が言ふ「香港社会の和諧と隠定の障碍となつてゐる深層の矛盾」とはいつたい何なのか。中共のこの「政治言語」の修辞は理解が難しい。少なくとも言へることは1997年の香港返還後、北京中央は「河水不犯井水」の原則で特区政府の施政を最大限支持し支援してゐたが2003年の50万人デモで衝撃を受け北京中央の香港理解の浅さも痛感しつゝ董建華の率ゐる特区政府の施政に限界と諦めを感じ、情報蒐集や民意など徹底した分析まで行ひ、経済金融から政制発展まで積極的な介入を開始。表面上は一国二制度だが中央政府が決定権を持つ指導体制を確立。文革曾は北京中央にとつてみればやはり英国殖民地政府の小役人上がりで信頼、資質も疑ひあり指導が強化される、と。で、その「深層の矛盾」とはいつたい何なのか。誰もわからないが香港の貧富の格差や社会経済の転移、また目を対中国に転じれば中港融合や香港の国内での地位など不確定なところもある。たゞ一つ明らかなことはこの矛盾=問題が「深層にある」ことで、それが短期間で解決は困難で文革曾にとつてあと二年の任期でどこまで完成できるのかしら、と。……これを一読してアタシが思ふのは、温家寶の言ふところは(と勝手に忖度すると小沢一郎君のやうだが……)香港が中国では考へられぬ民主的で自由な社会体制にあつて何故に民生レベルでの社会問題が露顕され解決向上できぬのか、といふ疑問。中国が英国統治から香港を奪回した本来の目的は「外国人に預けてゐた成績優秀な子」を引き取るやうに、香港の利点を中国の経済成長に活かすためであつて引き取つてみたら「なぜこんなに手がかゝるのか」といふ嘆きに聞こえてならず。

写真への旅 (光文社文庫)

写真への旅 (光文社文庫)

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